金沢駅に幻想的なプロジェクションマッピング。手がけたのは金沢工業大学の学生だった

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    金沢駅に幻想的なプロジェクションマッピング。手がけたのは金沢工業大学の学生だった

    来てますね、金沢。

    2015年春に北陸新幹線が延長し、これまでは陸路で約4時間かかっていた東京ー金沢間が、2時間半ほどで行けるようになる金沢駅。伝統文化を重んじた造りは海外からも「美しい駅」として注目されています。

    この駅のシンボル「鼓門(つづみもん)」がプロジェクションマッピングによって、さらに美しく妖艶な姿になるってご存知でした? しかも、手がけたのは金沢工業大学(KIT)情報フロンティア学部メディア情報学科に通う学生なんだとか。

    この門は、大きさもさることながら、能楽が盛んな金沢にちなんで「鼓」の調べ紐を柱のデザインに取りいれたかなり複雑な設計をしています。そのため映像を投影するのは難しいんだそう。

    現役の学生が、石川県の玄関口である金沢駅前でプロジェクションマッピングをできるとは…一体どういうことなんでしょう? その理由を聞いてきました。

    日本初の情報工学科を構えたKIT

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    モダンなつくりの校舎。かっこいい。

    最近では、さまざまな大学で設立されている情報系学部。KITは、日本の中で最初に情報工学科を構え、いち早く大型コンピューターを導入するなど、最先端テクノロジーの学び舎として今日を迎えています。

    また、KITは「CDIO」に日本で初めて加盟した大学でもあります。これはMITとスウェーデンの3大学によって2000年より始められた、グローバル規模で工学教育の水準を高めようとする取組みです。KITは工業系大学の教育水準を牽引すべく、高度な教育を施すためのサポート体制づくりにかなり力をいれているんです。

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    中はこんな感じ。きれいですね。

    今回紹介した金沢駅のプロジェクションマッピングは「学校」を超えた規模。そんな大きな舞台で学生がアウトプットするのを可能にしているのはKITの「アントレプレナーズラボ」というプロジェクトです。これは、埋もれてしまいがちな技術を持つ企業と学生を繋げることで、より実践的・先進的な学習の場を設けたもの。金沢市との協力によって、この大きなプロジェクションマッピングが可能になったのです。

    テクノロジーを習得できる環境「アントレプレナーズラボ」

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    KIT・産学連携機構事務局・産学連携推進部・連携推進室長の福田崇之さんはこう語ります。

    「アントレプレナーズラボは、産官学民連携によってイノヴェーションを実践する拠点です。アントレプレナーというと起業のイメージがありますが、KITでは学生や社会人の起業家マインドを醸成することを推進しています。受動的な学習にとらわれないカリキュラムをとおしてイノヴェーティヴな人材を育てることを目指しています」

    北陸三県には、さまざまな分野において高度な技術を持った企業がたくさんあります。その技術を学生の教育・研究に活かすことで産学連携し、地域の産業の発展に寄与しようと、現在17のプロジェクトが進行中なんだそうです。

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    プロジェクトルームがある建物の1Fには、オシャレなラウンジがあります。

    学生と企業との関係性について福田さんはこう述べています。

    ハッカソンやアイディアソンも積極的にとりいれています。たとえば、不動産情報サイトのHOME’Sを運営されているネクスト社の持つ不動産データとPFU社が作っているKIOSK端末を連動させたソリューションをハッカソンで学生が発案したんです。普段つながることのない2つの企業が学生のアイディアを媒介にして出会うんですよね。そうやって、学生は企業から技術を学び、企業にも新しい発見をしてもらえるWin-Winな関係を構築しています」

    冒頭で紹介したプロジェクションマッピングはその一例。では他にどんなことをやっているんでしょう? 実際にプロジェクトに関わっている学生さんたちにもお話を聞いてみました。

    本格的なプロジェクトをチームで

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    特に興味深かったのが、3つの事業部からなるプロジェクトチーム「サーキット」。このチームで活動している工学部情報工学科3年の坂井三四郎さんはこのように述べています。

    「ぼくたちは、『デジタル広告事業部』『PC家庭教師事業部』『店舗集客事業』という3つの事業部を軸に、IT技術を使った地域活性化をテーマに活動しています。もともとは通常のプロジェクトだったのですが、お金のやりとりがないと学生の域を越えられないので、実際に学内ベンチャーとして、株式会社化しています。そうすることで、メンバーはもちろん、地域の方々も本気になってくれて、より実践的な地域活性化が行えるようになりました」

    それぞれの事業部リーダー、さらに全体を管理するプロジェクトリーダーも、みんな学生。なんだか授業というよりも実務のようにも見えます。貴重な経験だなぁ…。

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    次は、「アンドロイドプロジェクト」のメンバーを代表して、情報フロンティア学部メディア情報学科3年の白木宏朋さんと野村祐貴さん、工学部情報工学科2年の竹本健人さんにもお話を伺いました。

    「チームでのソフトウェア開発手法を学ぶのが、このプロジェクトのテーマです。アンドロイドアプリの開発からスタートして、iOSアプリも手がけるようになりました」

    チームでの開発は大きなことができる反面、大変さもありそう。その問いに白木さんは、こう答えてくれました。

    「チームで開発するのは、みんなのモチベーションを統一するのがなによりも難しいです。1人だけモチベーションが高くても、ほかの人がついていけなかったら意味がないし、逆にモチベーションが高い人は他の人の気持ちをどうやって高めていけばいいのか。また、どういった流れでアプリ開発のレールをひいていけるか。最近は、その点を重要視しています。そういうことを学べるのも、チーム活動の面白みです」

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    こちらは、建築系学科の学生が金沢市と連携してつくった、建築の視点からニッチなものを見てまわる「カナザワケンチクサンポ」という地図のAndroidアプリ。地図制作プロジェクトに上記のアプリ開発チームが加わることで、新たなアウトプットを生み出した好例です。プロジェクトをまたいだチーム開発なんて企業のよう。

    「大学が窓口になってくれるので、金沢市とのコンタクトも取りやすいんです」と白木さんも述べていましたが、学生だけでは実現できないことを可能にするのが、「アントレプレナーズラボ」なんですね。

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    金沢工業大学といえ「NHK大学ロボコン」で優勝し、世界大会でもグランプリに輝く、知る人ぞ知るロボコン強豪校です。その技術を支えるのが、ロボット工学を専門にしたロボティクス学科の学生たち。そこで学んだ技術を活かしたプロジェクトもありました。

    ロボティクス学科4年の田代健生さんにお話を伺うと、「日本以外の国では、プログラミングやロボットをつくる技術を小中学生のころから学んでいるのですが、 日本では教育を受ける場がないのが現状です。ぼくらは、ロボット制作に関わる技術を学びたいという小中学生たちに学習の場を提供する『夢考房ジュニア』というプロジェクト活動を行っています」と教えてくれました。

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    「夢考房ジュニア」の参加対象は、小学校3年生から高校3年生まで。すでに35名のメンバーが決定しており、毎週日曜日に「ロボティスト」という製作キットを教材に勉強会を開いていくそうです。

    「ロボティクス学科なので、ロボットのことは多少わかるのですが、それ以外の知識に関しては僕たちもまだまだ勉強中です。子どもたちと一緒に新しい技術を学んで、同じ目線で成長できる」とのこと。「ひとづくり活動」という点も意識して、未経験者と経験者でカリキュラムを変えるなどの工夫もしているそうです。

    羨ましすぎる設備

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    もちろん実践的なカリキュラムを行うには設備も重要です。キャンパスの中にはシルクスクリーンの印刷設備から各種工作機械、最新の3Dプリンタも完備しており、浮かんだアイデアはすぐに試作品にできます。それぞれに先生がつくので、使い方がわからなくても大丈夫です。贅沢だ…。

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    身体で音楽の響きを味わえるボディソニックも校内に。レコードは20万枚も所蔵しているそうですよ

    また、24時間オープンの自習室があるため、煮詰まったプロジェクトチームからさみしがりやまで、広いスペースがいつでも受け入れてくれますよ。ギズもそうですけど、チームみんなで集まるってほんと大切なことですからね。 こういった施設が充実しているためか、学生の7割が県外出身なんだそう。

    ***

    能動的な授業プログラムや設備まで、これほどまでに充実した大学の学生さんなら、あのプロジェクションマッピングのレベルにも納得です。

    チームを率いる出原立子准教授も「大学が地域連携を積み上げてきたことで、こんなチャンスをいただけている」と言っていましたが、地域・行政との強いつながりがあるからこそ、金沢駅前という大きな舞台で学生があたらしいことにチャレンジさせてもらえるんですね。

    学生っていいなあ。もう一回、ちゃんと勉強しようかな。

    source: 金沢工業大学

    (金井悟)