マイナンバー法改正案、採決当面見送りへ 年金機構の漏えい事件影響

先日衆院を通過したマイナンバー法改正案の採決が当面先送りになることが分かった。

» 2015年06月09日 18時23分 公開
[岩城俊介ITmedia]

 先日発生した日本年金機構の情報漏えい事件を受け、参院内閣委員会が5月21日に衆議院内閣委員会で可決されたマイナンバー法改正案の採決を当面先送りすると決めたことが分かった。全国紙サイトが伝えた。

 マイナンバー法改正案は、当初の社会保障(年金、医療、介護、福祉、労働保険)、税制(国税、地方税)、災害対策分野から、2018年より預金口座、乳幼児が受けた予防接種の記録などにも適用できるよう利用範囲を広げる改正案で、2016年6月中に参院を通過し、成立する見通しだった。

 日本年金機構の漏えい事件を受け、マイナンバー制度担当の甘利明社会保障・税一体改革担当相は2016年1月のマイナンバー制度そのものはスケジュール通りに実施すると明言したが、年金分野へのマイナンバー利用については「今回の事件をしっかりと検証し、その上で対処したい」と時期を遅らす考えを示唆。マイナンバーの利用範囲の拡大は、当初は企業にコストや手間、リスクを強いる同制度において今後の新ビジネスの創出が期待されているが、この改正案も「年金機構の問題を精査し、原因究明に努めなければ国民の不安は払拭されない」と待ったがかかることになった。


マイナンバー制度とは

 マイナンバー制度は、2013年5月24日に成立した「マイナンバー法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)」によって、複数の機関に存在する個人の情報が「同一の人の情報である」ことの確認を行うための基盤である。2016年1月に開始する。

 国民一人ひとりに固有の12ケタの番号の「マイナンバー」を割り当て、それに基づき国民の生活や収入など各自の事情に応じた行政サービスの迅速化を図る目的で導入される。主に(当初は)、社会保障制度(年金、医療、介護、福祉、労働保険)、税制(国税、地方税)、災害対策に関する分野に使われる。2015年10月5日よりマイナンバーが付番された通知カードが国民一人ひとりに届き、個々の申請手続きによって個人番号カードが交付される。

 利用機関は行政機関や自治体などだが、社会保障や税に関する帳票や届出への記載に必要な従業員のマイナンバー収集や以後の管理は個々の民間企業、ないしその委託先が担う。例えば、税分野では、税務当局へ申告する各企業が番号の収集と管理を行い、給与所得の源泉徴収票などさまざまな帳票へ記載する対応が必要となる。基本的には、すべての民間企業や団体が当てはまるものとなる。

 マイナンバーを含めた個人情報は「特定個人情報」と定義され、取り扱いが厳格に規定される。これまでの個人情報保護法では対象外(5000件以下)の事業者であっても、それを1件でも取り扱うならばマイナンバー法における「個人番号関係事務実施者」となり、規制の対象になる。罰則も個人情報保護法より種類が多く、法定刑も重くなっている。一例として、正当な理由なく業務で取り扱う特定個人情報を提供した場合「4年以下の懲役または200万円以下の罰金」が科せられることがある。

 マイナンバーの取り扱いにおいて民間企業は「必要な範囲を超えて扱わない」「情報漏えいしないよう安全に管理する」「取り扱う従業者を教育、監督する」「委託先を監督する」などの義務や責務を負う。具体的にはマイナンバー制度の開始までに、マイナンバーの収集において厳格な本人確認を行うシステム、情報漏えい防止のための安全管理処置を講じること、そのための社内ITシステム改修やポリシーの制定、改訂を行っていく必要がある。データ保護の方法については、例えば「データの暗号化」や「パスワード保護」、そして「暗号鍵やパスワードの適切な管理」を行うようガイドラインで示されている。

 マイナンバー関連業務をアウトソースするにも、その委託先(その委託先の委託先も含めて)が適切かつ安全に管理、運用しているかを自社が監督する義務がある。漏えい事故が発生すれば、自社も罰則の対象になる。アウトソーシングサービスの選定も、マイナンバー法施行に対応した安全、確実な対応と対策手段を設けている事業者かを見極める必要がある。




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