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「モノ」ではなく「体験」を売るという視点

VMDコンサルタントの藤井雅範です。

 

人はなぜモノを買うのでしょう?

風邪をひいたから薬を買う、ご飯がなくなったのでお米を買う、車が動かなくなる前にガソリンを入れる。

こういった、生活必需品は無くてはならないものなので買います。

これを仮に『欠乏欲求』と名付けましょう。

 

ずっと前から記念日に行こうと思っていた眺望が抜群の三ツ星レストラン、イタリア製の高級オープンカー、子供の頃からの夢だった広い庭付きの湖畔の一軒家。

こういった具体的なこだわりのあるもの、これはあらかじめしっかりとしたイメージがあって計画的な買い物をする事がほとんど。

これを仮に『付加価値欲求』と名付けましょう。

 

これ以外に、もともと買う予定が無かったのに、ついつい買ってしまうモノがあります。

これらは特別必要ではないもの、これでなくてはならないと決まっているものではありません。

ただいつにまにか、あっこれは私には必要なモノなんだ、実はこれがとっても欲しかったんだ、と自分の欲求に気付かされてつい買ってしまうモノ、あるいはそういう買い物をしてしまう事って良くあります。

これを仮に『喚起された欲求』と名付けましょう。

 

先日のブログ『プロの作家によるPOP』で書いた、キュレーションストアは、上の『喚起された欲求』による消費が行なわれる、典型的な例であります。

キュレーションストアでの消費

『la kagu』外観

『la kagu』外観

この「la kagu」と言う名のキュレーションストア、そこでどんな消費をしたのか?

ボクの実際の行動を例に書いてみますね。

『大きな階段状のウッドデッキをを上り、二階の入り口からお店に入りました。

直ぐ目の前にはあたかも教会の礼拝堂のように整然と椅子が並んでいる。

その先は、書籍が並んだ棚でぐるりと囲まれていた。

お客さんは、この椅子に座って書籍を読んだりする事も出来るし、休憩する事も出来る。

ちょっとしたセミナーやイヴェントを開催するのに、充分なスペース。

書籍の品揃えは、単なる作家別、出版社別ではない。

ブック・キュレーターによって行なわれていて、そのまとめ方、テーマ設定で十分楽しませてくれる。

動物や植物をテーマに作られたコーナーの一角に「カモメのジョナサン・完成版」を発見。

フェイスアウトで陳列されていて、よく目立つ。

通常版の出版から40年を経ての出版です。

通常版は持っているけどようやく完成版、たのしみだな!

思わず欲しくなって購入。

¥1,300の消費。

礼拝堂の様な書籍コーナー

礼拝堂の様な書籍コーナー

カモメのジョナサンが置かれていた書棚

カモメのジョナサンが置かれていた書棚

 

次にメンズファッションのコーナーへ。

ベーシックながらハイクオリティなセレクト。

エンジニアード・ガーメンツをセレクトしていたり・・・

そのコーナの奥はボックス状の棚になっていて、その中のディスプレイは良かった。

片岡義男の文庫本をぎっしり集める事で、暗にサーフカルチャーをを伝え、絶妙にそのメンズファッション・コーナーのセレクトテイストを表現していたり。

うん、感心!共感できます。

片岡義男の文庫本

片岡義男の文庫本

 

その隣は家具のコーナー。

北欧テイストのシンプルなミッドセンチュリーっぽいセレクト。

使い込む事で味のでる質感の家具たち。

 

次に一階へ降ります。

レディスファッションのコーナー。

大きく開かれた窓から外光が差す気持ちのよい空間です。

国内外からセレクトされたファッションが陳列されている。

メンズファッション・コーナーのベーシックなテイストは共有しながら、女らしさやラグジュアリーな感じを加えたセレクト。

 

その隣はカフェ。

ホットドッグやサンドウイッチ、ランチプレートが中心のメニュー。

横長のとても大きなテーブル二台が並べられています。

お客さんはランチを食べたり、友達とおしゃべりしたり、iPhoneやiBookを広げたり、思い思いに過ごしています。

気持ちよく過ごせそうだったし、コーヒーの香りに惹かれてボクもここでランチを取る事にしました。

ホットドッグのランチ。

ダイス状のオニオンのトッピングが、プリッとしたソーセージと良く合う。

コーヒーも美味しかった。

¥900の消費。

 

ホットドッグのランチ

ホットドッグのランチ

カフェの奥には、キッチン雑貨のコーナーがあります。

この空間ではそれらがとっても良く見える。

ウチのキッチンにもあったら良いな・・・

 

一階にも入り口があり、その入って直ぐ前のコーナー。

このお店で扱っている商品がセレクトされて展示され、様々な作家がそれらを実際に使った使用感を思い思いの文章で綴ったペーパーが設置されている。

一枚一枚読んでみたくなる、贅沢なPOPの役割。

そのペーパーは数枚積まれていて、お気に入りは持って帰る事も出来る。

・・・・・

『la kaguと書き手』

『la kaguと書き手』

ボクはこのお店で100分滞在しました。

消費金額は¥2,200。

気持ちよく時間を過ごせ、少し豊かな気分になった』

喚起された欲求に従いモノと、気持ちのよい時間を買っていた

ボクがこのお店で買ったモノ。

それは、本とランチ。

しかしそれはあらかじめ計画されたものではなく、そのお店にいるうちにいつのまにか欲しくなって消費したモノです。

そして、気持ちのよい空間で過ごす豊かな時間、という体験を買っていたのです。

そしてそれらは『欠乏欲求』でもなく『付加価値欲求』でもなく、『喚起された欲求』に基づいて行なわれました。

ボクがこの店で消費した時間と金額、100分で¥2,200。

一般的な映画を見ると、90〜120分で¥1,800。

映画を見るのと同じ様な感覚の消費、と言えるかもしれませんね。

モノを買うのではなく、そのキュレーションされた空間で過ごす時間を買う・・・

まとめ

これからのビジネスは「モノ」だけでは売れません。

キュレーションされた「モノ」を他のカテゴリーや空間とコーディネートして、気持ちのよい消費が出来るようにエスコートして上げる事。

「モノ」ではなく「体験を売る」という視点を持つ事が大切。

・・・・・そういう事です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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