ユニクロはマクドナルドと同じ道を歩むのだろうか

大西 宏

ユニクロの国内事業に異変が起こっています。多くのメディアがユニクロ不振を伝えています。マクドナルドとともに、デフレ時代の数少ない勝者とされたユニクロになにが起こっているのでしょうか。昨年の6月以降、既存店の客数が7ヶ月連続で前年同月比マイナスが続き、特に11月は12.9%減、12月は14.6%減と二桁減がつづいています。異常ともいえる暖冬が響いたのでしょうか。


月次情報のコメントでは、11月は「中旬の気温が例年に比べ極めて高かったことから、冬物実需商品の販売が苦戦」、12月は「気温が極めて高く推移したことから、防寒衣料を中心に販売が苦戦」となっています。

ただ、こういった説明はマクドナルドのコメントで見飽きているので、ほんとうに不振は、暖冬のせいなのか、それなら、7ヶ月連続の客数減はどう考えればいいのか、業界すべてがそうなのかという疑問が湧いてきます。グラフは2015年のユニクロ既存店の月次売上推移ですが、客数減がつづくなか、客単価アップで売上をなんとか維持してきたことがわかります。なにか暖冬とは違う原因もありそうです。
ユニクロ月次

他の企業はどうなのでしょうか。ユニクロと比べるといえば、やはりまずは、ファッションセンターしまむらが思い浮かびます。
そこで月次情報を見ると、昨年の1月から12月で、既存店の売上がマイナスとなっているのは、1月、4月、11月だけ、客数減は1月、4月、6月、11月だけでほぼ対前年でプラスをキープしています。ユニクロは12月の年末商戦で客数も売上も大きく落としたのですが、しまむらは、売上高も、客数も伸び、暖冬をはねのける結果を出しています。

念のため、もう一社、ライトオンの月次情報を見ました。なんと絶好調です。12月の同社のコメントはユニクロとは大違いです。

当月度は、例年に比べ暖かい日が多かったことで、防寒アウターの販売が伸び悩んだものの、メンズ、ウィメンズの保温・発熱機能素材のボトムスやミドルゲージのニットが堅調に推移しました。客数が伸し、前年に比べ休日が1日多かったこともあり、全社売上高前年同月比は120.5%、既存店売上高前年同月比は117.4%となりました。

月次売上高前年比情報(PDF資料)

普通に考えるとやはり二年にわたる、二度の値上げが響き、商品の品質と価格のバランスが崩れ、「価値」をめぐる競争力を失ってきたのではないかと感じさせます。値段のわりになんだかなあと感じる状態でしょう。
それについては、すでにビジネス・ジャーナルが昨年の8月に指摘しています。この記事にはユニクロがブラック企業のラベルを貼られ、その払拭をはかろうとしていることも取り上げられています。
ユニクロの変調 値上げ響き売上減止まらず 「離職率50%企業」払拭に本腰 | ビジネスジャーナル

そういえば最近はユニクロの店に寄ることが減りました。行った時に、なんとなく魅力的な商品がないわりに、高くなったと感じたからです。実用品とはいえ、楽しさみたいなものがあったユニクロに、それが感じられなくなりました。

もしかすると昨今は衣料品もほとんどネットで購入するようになったので、そう感じるようになったのかと思ったのですが、違ったようです。

ネットなら、あちらこちらのブランドのサイトを巡ったり、昨今ではアマゾンに出品しているところが多いので、飽きません。見ているうちに、価格とその商品の魅力とのバランス感覚も身についてきます。

ユニクロもおそらく値上げの影響はあることぐらいは想定していたでしょう。しかし、本来なら価格を上げるのなら、商品の品質や機能またデザイン性がそれにともなってあがっていかなければ、「価値」での競争力は低下するので、手を打つはずです。それが効を奏さなかったのか、あるいは、価格アップによる影響が確認されれば、利益率は落としても、価格を下げて売上をキープする手もあったはずです。

おそらくそのどちらもできないままに来てしまったという感じでしょうか。商品力と価格のバランスをとれず、ユニクロに顧客を奪われが凋落してきたのが総合スーパーでしたが、円安でコストが上昇し、その二の舞いになろうとしているのかもしれません。「実用衣料」なので、付加価値をつけるのが難しく、その限界がやってきたようにも感じます。

また多くのアパレル企業が、販売管理コストが低く、利益を生み出しやすいネット通販に注力するなかで、あきらかにユニクロは取り組みが遅れています。それも災いしてきているのでしょう。

さてユニクロはどんな戦略で、この悪循環から抜けだすのでしょうか。「価値競争」のレースから脱落したマクドナルドと同じ茨の道を歩むのか、はたまた起死回生の戦略転換をはかってくるのか、目が離せなくなってきました。