世界で最も深い湖であるロシアのバイカル湖は、世界有数の手つかずの地として知られてきた。しかし、ここ数年、奇妙な緑のスライムが増えており、科学者らは汚染源探しに躍起になっている。
バイカル湖を10年以上研究している米ワシントン州立大学の湖沼生態学者であるステファニー・ハンプトン氏は、「(バイカル湖は)世界の美しい場所トップ5の1つに違いないが、最近の劇的な藻の繁殖には注意が必要です」と述べている。(参考記事:「世界各地にある透明で美しい湖」)
2011年以降、秋が来るたびに、湖底にびっしり敷き詰められた線維状の藻が、ロシアはじめ世界中の科学者によって観測されている。最新の研究により、この藻はアオミドロ属およびスティゲオクロニウム属に属することがわかっている。
この毛足の長い緑のじゅうたんは、複数の町の湖岸近くのエリアに現れるため、人間による汚染が原因である可能性があるとハンプトン氏は指摘する。(参考記事:「有毒な藻の大繁殖、各地で増加のおそれ」)
原因は究明中だが、下水あるいは肥料として使われた動物の排泄物から、栄養素が湖に流れ込んでいることが疑われている。とりわけ、酸素が多く栄養素が少ない湖にそれらの栄養素が加わると、藻の急成長をもたらす可能性がある。
汚染源が特定できたら、影響が広がる前に速やかな対応をすべきとハンプトン氏。「幸いなことに、私たちは汚水の処理方法を知っています」と付け加えた。
バイカル湖は、数百種の魚や無脊椎動物を含む、固有種の宝庫である。この藻による生態への影響はわかっていないが、じゅうたんの上では酸素の急激な減少が測定されており、水生生物が被害を受けるかもしれない。(参考記事:「バイカルアザラシの風変わりな休息法」)
また、気候変動による水温の上昇も懸念されている。ハンプトン氏の研究によると、水温上昇がすでに食物連鎖の基礎をなすプランクトンに変化をもたらしている可能性があり、「深くきれいなオアシス」という評判もあまり長続きしないのではないかという声もあがっている。
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