Photo by Markburger83
秋空の下で美味しいビールはいかがですか?
ビールが美味しい夏が終わって、ビールが美味しい秋がやってきました。
鍋をつつきながらも桜を見ながらもビールは美味しいわけで、つまるところ一年中ビールは美味しいわけです。
で、やっぱり秋のビールといえばオクトーバーフェストですよね。
気持ちのいい秋空の下で飲むビールはまた格別な味わいです。最近では各地でオクトーバーフェストと名のつくイベントが行われるようになってきました。
あくまでこれはオクトーバーフェスト「ごっこ」にすぎないのですが、何でもいいから理由を作ってみんなでビールを飲もうというミエミエの魂胆は、とってもいいことだと思います。
今回は季節柄のネタで、そんなオクトーバーフェストのイベントの歴史を振り返ってみようと思います。
1. 本場ミュンヘンのオクトーバーフェスト
Photo by Gutsul
オクトーバーフェストと名のつくイベントは星の数ほどありますが、本家本元はドイツ・バイエルン州の州都ミュンヘンのオクトーバーフェスト(Oktoberfest)であります。
毎年9月下旬から10月上旬に開かれ、世界中から600万人もの人が訪れる世界でも最大級のお祭り。ミュンヘン中心部のテレージエンヴィーゼ(Theresienwiese)はこの時期、文字通りビールまみれになるのです。
会場では、大小問わずビールメーカーが出店して、ここぞとばかりに売りさばく。もちろんビールだけではなくミュンヘン名産のヴァイスヴルスト(白ソーセージ)や焼きソーセージの店も出るし、お化け屋敷とか的当てみたいな出店も出るし、さながら大規模な縁日のようです。
楽しそうだなあ。
2. オクトーバーフェストの始まり
現在の形のオクトーバーフェストが始まったのは、1810年10月12日。
時のバイエルン皇太子ルートヴィヒと、テレーゼ・フォン・ザクセンヒルトブルクハウゼンとの結婚式が、ミュンヘンの城壁の前の緑地で大規模に催されました。
パーティーには市民4万人が招待され、日頃の憂さ晴らしとばかりに、秋空の下でたらふく飲みまくって食いまくる。酔いが回るとあちこちで歌や踊りが始まってどんちゃん騒ぎ。
結婚式のハイライトは、競馬大会。
緑地の中に特設の競馬場が作られ、皇太子と皇太子妃はポニーに乗って優雅に競馬を観戦。出席者たちも迫力満点の競馬で目を楽しませたのでした。
パーティーは半月ほど続きましたが、とにかく楽しかったらしい。
この時のパーティーは半ば伝説化し、どれだけ素晴らしく盛り上がったか、ミュンヘンっ子に語り継がれるほどでした。
2. 屋外パーティの恒例化
楽しすぎ!毎年やろうぜ!
2年後のバイエルン宮廷。
一昨年のパーティーの楽しさがどうにも忘れられず、
「今年もやりたい!!」
と言う者が続出。
とうとう1812年に「競馬大会と収穫祭」という名目で第2回のパーティーが開催されました。市民の喜びようは大変なものだったでしょうね。
実際に、オクトーバーフェストはバイエルン宮廷の社会還元的な側面がありました。
年々祭りの規模は拡大していき、陶器や銀器などが当たる福引きとか、アスレチックなどの遊具施設が出来ていき、ミュンヘンっ子の最大の楽しみの1つにまでなっていきました。貧民にとっては年に1回たらふく食えて、モノまでもらえる最高のシーズンだったでしょう。
毎年恒例の行事になったので、ミュンヘンでは緑地(Wiesn=ヴィーズン)という単語は、オクトーバーフェストのことを指すようになってしまいました。
競馬の廃止、ビールを楽しむ祭りに
1835年、皇太子だったルートヴィヒとテレーゼが王位に就いたことを記念するパレードが開かれ、以降パレードもオクトーバーフェストの名物企画になりました。
20世紀に入ってからは、前半は中止の年が多く、第1次世界大戦、世界恐慌、第2次世界大戦の時に中止となりました。
戦後になってからは、第1回大会からの伝統だった競馬が廃止されて単に「収穫祭」としてビールを盛大に楽しむ祭りとなりました。
また、1950年からはミュンヘン市長によるお祭りの開始を告げる号令が恒例化。
お祭り開始当日の正午に、オクトーバーフェスト専用ビール樽を市長が開け、"O'zapft is!"(酒が開いたよ!)と叫ぶ儀式はこの時からスタートしました。
PR
4. 観光イベント化
Photo by Hullbr3ach
ぼくの友人のミュンヘン男(34歳)は、オクトーバーフェストと聞くと、
「…ああ、あれは観光客向けだからね…。高いし、地元の人は行かないよ」
と言っていました。全員が全員行かないわけじゃないでしょうが、あまりに有名になりすぎて地元の人が置いてけぼりになってる感はあるのかもしれません。
1960年代ごろから、国際的にもオクトーバーフェストは有名になりはじめ、次第に観光客が増えていき、現在では参加者の大部分が外国人観光客になっているようです。
で、その友人に「じゃあ地元の人はどうするの?」と聞いたら
「馴染みのバーで仲間を集めて飲むんだよ」
とのこと。もともとミュンヘンっ子のどんちゃん騒ぎからスタートしているんだけど、
現代のミュンヘンっ子は喧騒から逃げて、ゆっくり仲間だけで飲むのを好むようです。
5. 日本のオクトーバーフェスト
日本で最近増えてきたオクトーバーフェストは、
オクトーバーフェストという名前がついているだけで、もちろん本場ミュンヘンとはなんの関係もありません。「ミュンヘン風縁日」という方が近いもしれません。
秋になると気持ちいいし、外で酒でもかっ食らって大騒ぎしたい気持ちはやっぱりあって。
昔はそれこそ収穫祭とか、地元のお祭があったから満たせていたでしょうけど、都会化、核家族化、地域との繋がりが薄れていって伝統的な祭りが消えていく中で、このようなオクトーバーフェストは「外で酒飲んで大騒ぎしたい」欲望の代替手段となっているんではなかろうかと思います。
大手ビールメーカーのプロモーションや、イベント会社の収入源になっているんでしょうけど、ぼくは「もっとやれ!」と思っています。
以下、代表的なオクトーバーエストのイベントサイトを貼り付けておきます。
まとめ
本場ミュンヘンのオクトーバーフェストでも、飲み過ぎて意識を失ったり、暴れて器物破損で警察に連れていかれたり、いろいろ問題はあるようです。
みなさまも飲み過ぎには注意していただきつつ、美味しいビールをどうぞ楽しんでください。
ちなみに、過去記事でビールの歴史を書いていますので、興味あるかたは御覧ください。
参考文献
Today I found out, HOW DID OKTOBERFEST START?
Oktoberfest - Wikipedia, the free encyclopedia
バックナンバー:料理と歴史
ケチャップの歴史 - 英国流オリエンタルソースからアメリカの味へ