幕張メッセで開催されたニコニコ超会議のドワンゴ超自由研究ステージにて、「超AI緊急対策会議」と題した座談会が開催された。パネリストは稲見昌彦氏(東京大学大学院教授)、山川宏氏(ドワンゴ ドワンゴ人工知能研究所所長)、今井大介氏(アスラテック ロボットエバンジェリスト)の3名。今年に入って急速に盛り上がりを見せている人工知能(AI)について各分野の最前線で活躍する識者が意見を戦わせた。なお、司会はUEI代表取締役社長・清水亮氏が務めた。

昨年から今年にかけてメディアなどでも取り上げられることが多くなり、注目を集めている人工知能(AI)。言葉自体は昔からよく聞くものだが、ここへきて盛り上がりを見せ始めた要因の一つに「ディープラーニング」というキーワードがある。

ディープラーニングは「子どもの学習」

ドワンゴ人工知能研究所所長の山川氏によると、ディープラーニングによりもたらされた革新とは「子どもの学習」であるという。どういうことなのか。

従来のコンピュータの進化とは、「人が人に言葉で説明できること」を人がコンピュータに教えていく過程だった。理論的にものを覚えていくこと――つまり「大人の学習」だったわけだ。

山川宏氏(ドワンゴ ドワンゴ人工知能研究所所長)

それに対して子どもの学びは理論的なものばかりではない。幼児は理屈で物事を覚えていくわけではなく、実際にやっているうちにできるようになっていくわけだ。体験を通して自ら学んでいく「子どもの学習」は、実は従来のAIが苦手としている分野だった。

これを克服したのがディープラーニングというわけだ。以前はコンピュータの処理速度の問題などで不可能だったが、現在ではコンピュータは自ら学び進化していくようになった。ここに従来からの「大人の学習」が組み合わさることで、AIは飛躍的に進歩を遂げたという。

自動運転と走る楽しみは両立するか

こうした人工知能の発展により、今もっとも期待されている分野の一つがクルマの自動運転である。事故リスクの軽減など様々な可能性が期待される一方で、「自動車を運転する楽しみ」はどうなるのかといった声も上がっている。

東京大学大学院教授の稲見氏は自動運転について「自動車というよりもタクシーの未来」と説明。「自動車やバイク、自転車は自分で自由に動かせることも楽しみであり、これを『自在車』と呼ぶ」と二つの要素が両立することを強調した。

稲見昌彦氏(東京大学大学院教授)

自動運転に「楽しみ」がないのかというと、そうではない。稲見氏によると、自動運転車は人が運転するよりもはるかに高速で走ることが可能で、この爽快感は十分に楽しめる要素だという。

このことから、自動車メーカーが自動運転で目指しているのは"自立したナチュラルインテリジェントシステム"としての自動運転とクルマを操る楽しみの両立であり、これは昔でいう「馬を操る楽しみ」に近いものではないかと考察している。

ただし、自動運転では追い越してきたトレーラーの排ガスを障害物と認識して急ブレーキを踏むというような誤判断の問題も残っており、すべての環境において安全に走れるのかはこれから突き詰めていく必要がありそうだ。