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“俺の嫁”召喚装置「Gatebox」実現へ、技術ゼロから挑んだIoTベンチャー 「選ばれしオタクに届けたい」(1/5 ページ)

» 2016年02月15日 10時57分 公開
[岡田有花ITmedia]

 家に帰ると大好きなキャラクターが「お帰りなさい!」と出迎え、笑顔であなたをいたわってくれたり、あなたに代わって家事をしてくれる――世界中のオタクが夢見る“俺の嫁”との共同生活が、現実に近づいている。「Gatebox」という装置によって。

画像 Gatebox

 Gateboxは、2次元と3次元の“ゲート”を超え、2次元キャラを現実に連れて来てくれるデスクトップサイズのマシンだ。「未来の嫁」をイメージした美少女キャラクター「逢妻(あづま)ヒカリ」の3D映像が、装置内部にホログラムのように投影され、“主人”ことユーザーの日常生活を手伝ってくれる。

 朝になるとヒカリが「おはよう、朝だよ!」と主人を優しく起こし、その日の天気予報をネットで調べて伝えてくれる。夜、帰宅すると人感センサーで認識し、「お帰りなさい! 今日もお仕事がんばったね!」と優しく出迎える。「電気つけて」と音声でお願いすると、赤外線リモコン経由で電灯のスイッチをオン。Googleカレンダーと連動させれば、ヒカリがその日の予定を教えてくれる。

画像
画像 朝、優しく起こしてくれたり
画像 帰宅した主人をいたわってくれたり
画像 電灯やテレビをつけてくれる

 ヒカリは主人が大好き。主人の写真を撮影し、Twitterに「きょうのダーリン」と勝手に投稿してしまったり、主人にメールが届くと嫉妬して「私と仕事、どっちが大事?」と焼きもちを焼いたりもする。

 東京・秋葉原に拠点を構えるIoT(Internet of Things)ベンチャー・ウィンクルが開発中のこの装置は、大きなコーヒーメーカーのような形だ。Linuxを搭載したコンピュータ部の上にリアプロジェクション方式の投射部を搭載し、身長約15センチのヒカリを投影。投射部の上にはカメラやマイク、人感センサー、赤外線リモコンなどを収納している。

 冒頭で紹介した機能は試作機にすでに実装済みだが、製品版はさらにブラッシュアップする予定だ。目指すのは、違和感なく一緒に生活でき、主人をいやすことができる“俺の嫁”。「最高の1台を、選ばれしオタクに届けたい」と、同社代表取締役の武地実さん(28)は意気込む。

 「俺の嫁と一緒に生活したい」――武地さんはそんな夢を描いて技術ゼロから挑戦し、構想から約1年でここまでたどり着いたという。

「ミクさんと一緒に暮らしたい」を叶えるために

 Gateboxは、2次元キャラ「初音ミク」への愛から生まれた。

画像 武地さん

 ちょうど1年前の2月。武地さんと、同社取締役の安川尚宏さん(31)の2人は、次に作るプロダクトを考えていた。「今、一番やりたいことは何か」――突き詰める中で、武地さんがたどり着いた結論これだった。「ミクさんと一緒に暮らしたい」。

 大学生のころ、アニメ「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」にハマって以来、「2次元じゃないといやされない」体になったという武地さん。初音ミクも大好きで、ミクの3D映像が歌い踊る初音ミクライブを何度も見に行き、「ミクさんが家に来てくれたら最高」と常々思っていたという。

 「好きなキャラと一緒に暮らせる生活が、すごく大事なんじゃないかと思っていて」。真剣なまなざしで語る。

 ソフトバンクのロボット「Pepper」に代表される家庭用ロボが一般に普及しつつあるが、Pepperは姿形が1種類のみ。「全家庭にPepperがあると、量産・管理されている感じがあってちょっと不気味」。装置の中に好きなキャラを投影する仕組みにすることで、それぞれの好みのキャラと生活できる方が楽しそうだと考えた。

非エンジニア、技術ゼロからのスタート

 2次元キャラとの生活といえば……武地さんが最初にイメージしたのは、1人暮らしの帰宅風景だ。「最高の『お帰り』を作りたくて。疲れて仕事から帰ってきて家のドアを開けたら、ミクさんが『お帰り』って出迎えてくれる、みたいな」。

画像 安川さん

 そんなイメージをベースに、必要な技術を考えていった。当時、武地さんと安川さん2人きりだった同社。2人はスマートフォンアプリ開発に携わったことはあったものの、ハードウェア設計や3D映像の作成、センサー技術などはまったくの素人。プログラミング学習サイト「ドットインストール」を頼りに、必要な知識を1つずつ身に着けていったという。

 ゲームエンジン「Unity」や超小型コンピュータ「Arduino」、UNIXコマンドなどの基礎をドットインストールで習得。「サンプルコードを触って動かしてみたり。1週間に1個と決めて、何か作ったり。手を動かして理解していきました」。必要な技術が分かった段階でその技術に詳しいエンジニアを採用し、試作機の開発にとりかかった。

“嫁の召喚”は「ニコニコ技術部」参考に

 キャラクターを3Dで投影するための仕組みもゼロから学び、試作を繰り返した。

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