みなさまの秋鮭が帰ってまいりました。
魚卵大好きな我々にとってこの季節はイクラのシーズンであります。事実として旬です。
通常、イクラ醤油漬は100gあたり900円から1,000円の末端価格、いや小売価格で取引されているのですが、この時期に出回る鮭の卵つまり生筋子(なますじこ)は100gあたり約500円という価格。
おおむね半額です。
つまり、イクラが通常の2倍食べられるシーズンなのです。コスパコスパとおっしゃいますが、半額だったら2倍食べちゃうのが魚卵好きの業なのです。痛風なんか知ったことか。
生すじこからイクラ醤油漬を自作するには
生すじこの季節になるとスーパーの店頭でもインターネットでも情報が出ますし、魚卵好きの魚卵ist(ぎょらにすと)にはいまさら釈迦に説法かもしれませんが、知らない人もいらっしゃることと思われますのでいちおう解説しましょう。
生すじこからイクラ醤油漬を生成する方法はシンプルです。
①生すじこをバラす
②3%くらいの食塩を溶かしたぬるま湯で洗う(ほぼ海水と同じ塩分濃度)
③漬けだれに小一時間つけて完成(できればひと晩は漬けたい)
かようにシンプルではあるのですが、ネットで話題になったライフハック記事でこのプロセス①のところ、「生すじこをバラす」のが意外と面倒なんですよね。
これがもう、魚卵int(ぎょらにすと)積年の課題なわけです。
生すじこはイクラが薄皮の中に詰まった状態になっています。タラコの外側にあるあんな感じの薄皮です。イクラ醤油漬を作るためイクラをひとつひとつの粒にバラす方法として、基本的には「塩を入れたぬるま湯の中でほぐす」ことになっています。
しかしこれがわりとアレでして。
ご覧のとおり生すじこは結構かたまっているものなので、丁寧にやっていても意外とたくさんのイクラを潰してしまいます。すごくもったいないし、作業後に手がものすごく生臭くなります。まず一日は匂いが取れません。
想像してみてください。
メガネを押し上げるたびに手の平から死んだ魚の匂いがする世界を。
しかも時間がかかるのでイクラの味が落ちる気がするという不安な面もあります。
なんとか簡単にすばやく生すじこをバラす方法はないものか。
バドミントンラケットの網目を漉し器みたいに使って生すじこをイ
イクラってデリケートなものだから、
魚卵ist(ぎょらにすと)積年の課題であった「
だがちょっと待ってほしい。
本当にバドミントンラケットがベストなのでしょうか。
さらに、
あー、あー、あー、もうわかりません。
これはもうアレだ。
ラケット、餅焼き網、
結論から言います。コレが最高です。
作業が早い、歩留まりがいい、仕上げがきれい。
ラケットだって100均で買えるやつでオッケーです。
生すじこをイクラにバラす方法として、現状ベストなアイテムは、
まずバットの上にラケットを置きます。
膜が開いている方を下にして生すじこをどべっと乗せます。
軽めの力でぐいぐい押し込んで、
そのまま横にスライドさせて、イクラをおろし取ります。
撮影の都合により片手でやっていますが、
最後には、これが
こうなって、
こうじゃ。
気持ちいいくらいきれいにイクラが取れちゃうんです。
いくらバドミントンラケットが便利とはいえ、スポーツ用品で食べ物を扱うのには抵抗があるとか、イクラのためにわざわざバドミントンラケットを入手するほどではないという考えもありましょう。
そこで、どこのご家庭にもありそうな焼き網を使って生すじこバラシをやってみました。
ボウルの上に餅焼き網をどーん。
生すじこを乗せて、
押し付けて網の向こうにイクラを送り、
網にひっかけてこそげる。
バドミントンラケットと同じようなものなのに、たくさんのイクラがつぶれてしまいます。網に弾力がなく、ワイヤー自体も太いからでしょうか。もったいなくて泣きそうですがこれは実験なので心を鬼にしてぷりぷりとこそげます。
そして、どうしても膜にイクラが多く残ってしまいます。これ以上こそげてもつぶれるだけだなっていう手応えがあるので、最後までイクラを落とすことができませんでした。
ぬるま湯の中で手でほぐすのよりは早いし楽なんですけど、歩留まりが悪すぎる気がします。
スーパーの張り紙で知ったアイテムです。
どこのご家庭にもある泡立て器を使って生すじこをバラします。
網目状のアイテムと違って、この場合は泡立て器で上からこすり取る感じです。
こんなふうにゾリゾリといきます。わりと取れるんですよ。撮影の都合上片手でやっていますが、みなさんは両手でいくといいです。
ただこれも最後のほうでイクラを取りきれないストレスがあります。まあ、気にせずにジャコジャコこそげてしまえばよさそうなのですが、つぶれてしまうイクラが多くなります。つらい。
そんなわけで。
検証の結果、生すじこバラし最適アイテムはバドミントンラケットであると判定いたします。うおー!
バラしたイクラを漬けて仕込むのです
水色のバットから時計回りにラケット、餅焼き網、泡立て器でバラしたイクラとなっております。
さて手順としましては、バラしたイクラを生ぬるい食塩水で洗います。
イクラをまとめて、
40℃くらいのぬるま湯を3%くらいの食塩水にしたものを注ぎます。
僕の場合は、1リットルの容器に熱湯と水を半々くらいに入れて、塩を小さじ2/3くらい。こんなもん、だいたいでいいです。
真水ではないのは浸透圧の関係でイクラが破けるのを防ぐためです。ぬるま湯なのは、イクラから卵巣膜が剥がれやすくなるからです。
まあ洗うといいますか、イクラ醤油漬の味を損なう余分なものを取り除くのです。生臭いとか薄皮が入ってるとか、もったいないじゃないですか。
こういう卵巣の筋とか、破れてしまったイクラの殻をちょいちょいと取り除くわけです。
お掃除が済んでコンディションのいいイクラだけになりましたらザルにあけて水を切ります。目の粗いザルを使うとキッチンシンクが宝石を散りばめたようになっちまいますので注意ですよ。
保存容器に移し替えて、
生のイクラを漬け込んで、イクラ醤油漬にします。
漬けだれはいろいろあります。
イクラを漬けるための出汁入り醤油は売られていますし、みりんと醤油を合わせて昆布を浸して漬けだれを作る方法もあります。
保存を長持ちさせたい場合は生醤油という手もあります。この難点は、色が黒くなることです。白だしで漬けるとイクラの色がきれいです。
今回はイクラ醤油漬け専用のたれを使います。
イクラの発色がいいのですよ。
こういったものは生すじこ売り場に必ず一緒に置かれてるので迷うこともありません。
じゃばーと注いで蓋をし、冷蔵庫に小一時間置くだけで……。来るぞっ!
イクラ醤油漬けの完成です。ちょろい。
たれを吸ったイクラがぷりぷりと膨らんで輝いております。
まさに宝石の、箱やー。
あとはこうして毎日ごはんにイクラかけ放題してもいいですね。
それに鮭ハラスを焼いて鮭親子丼をつくるのもいいですね。
夢はふくらむばかりです。
イクラがウルトラソウルよりも輝いてます。
これ、黒い醤油だれを使うと少しトーンが落ちます。それはそれでおいしいのでみなさんが自作する場合、たれはご自由にチョイスしてください。
こんなにたくさん食べきれないよう、とうれしい悲鳴を上げたくなる気持ちもわかります。
安心してください。
イクラ醤油漬は冷凍保存することもできます。一度にたくさん冷凍すると解凍したときにぜんぶ食べないといけなくなりますが、一回ぶんずつに小分けすれば解凍してそのまま使いきりできるので便利。
そうは言っても自作イクラの醍醐味は圧倒的な物量がもたらす贅沢。
どんぶり飯にどっさりとイクラを乗せてスプーンでガツガツかっこむ幸福ったら筆舌に尽くしがたいものがあります。
市販のイクラ醤油漬の半分の値段でこれができちゃう。
バドミントンラケットを使うと純粋な作業時間は20分くらいですよ。もっと早く知りたかったですよ。漁師家庭の智恵、現場で研がれた使えるライフハックじゃないですか。
そして閉店間際のスーパーが狙い目
市販のイクラ醤油漬の約半分のプライスで自作できるのがこの季節のうれしいところなのですが、生すじこは極めて足が速い食材です。なので閉店間際のスーパーで、たまにこんなシールが貼られていることがあります。
そう、さらに半額。
100gあたり200~250円くらい。
つまり、イクラ醤油漬完成品の約1/4のお値段で、どっさりイクラが食べられるわけです。通常の4倍食える。いくらでも食べられる。あっ。
コストパフォーマンスでいえば圧倒的です。魚卵ist(ぎょらにすと)がピリピリするシーズンなのも当然と言えましょう。