藤田晋「スマホ時代の勝者の条件」
2015/07/27, NewsPicks編集部
サイバーエージェント 藤田晋社長インタビュー
藤田晋「スマホ時代の勝者の条件」
2015/7/27
本特集の第24回に登場したネット大手、サイバーエージェントの藤田晋社長。その回では、藤田氏の肝入りでスタートした音楽配信サービス「AWA」の展望を語ってもらったが、今回のテーマはスマホ時代における「勝者の条件」。ネットビジネスが日本で勃興した2000年前後から業界をリードする藤田社長が、企業として、個人として、勝ち残るために必要なことは何かを語る。
動画にゴーサインを出した理由
──「AWA」で音楽ビジネスに参入しましたが、今は動画の注目度も高まっています。秋には動画のサブスクリプションサービスの本命である「ネットフリックス」が上陸しますが、動画のポテンシャルをどう見ていますか。
藤田:前提として、スマートフォンがあった時代とない時代では、話がまったく違います。
過去を振り返ると、動画配信はどの会社も本当に何度も失敗してきたんですよ。映像の再生という面では、ガラケーでは話にならなかったし、PCではどうしてもキーボードを触りたくなる部分があった。
でも、スマートフォンやタブレットが登場して世界が大きく変わった。スマホでの動画再生は、「フェイスブック」のインフィードが普及して、再生数が爆発的に伸びています。
ユーザーの視点からみて、「今なら動画を見るだろうな」と思ったときに、動画にゴーサインを出そうとしていますが、今がちょうどそのタイミングだと感じています。今まで、「PCで動画を見るのは面倒臭い」と思っていた人たちが、スマホを通じて、テレビのように動画を見たり、映画を見たりするようになってきている。
たとえば、「ニコ生」(ニコニコ生放送)はものすごく難しいビジネスモデルだったと思います。それが、あの世界観や、画面に文字を被せるといった工夫によって、みんなで生放送と見るというかたちが成り立つようになった。
でも今であれば、ニコ生のように、みんなにガヤガヤさせて、目の前にキーボードがあるストレスがなくても、動画がビジネスとして成り立つのではないかと思います。普通に電車に乗って「Hulu(フールー)」を見ながら時間を潰している人がいるように、スマホで動画を見ることが普通になってきた。
──具体的に、どんな動画プロジェクトを進めているのですか。
今、動いているのは4つ。テレビ朝日と共同で立ち上げた「AbemaTV」、原宿にある公開スタジオの「AmebaFRESH!Studio」、ツイキャスのようなライブ配信アプリ「宅スタ」、そして動画の視聴をリアルタイムで楽しめる「QIQI(キキ)」です。
──動画総ばりですね。
意図したわけではなく、「このへんの事業が今、社長に通りやすい」「今は動画が通りやすい」となると、社員が次々とアイデアを出してくるので、結果として総ばりになってしまった(笑)。
海外進出は安易に狙わない
──動画以外に「これからスマホ系で来る」と感じているサービスはありますか。
newspicks.com
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コメント
注目のコメント
大事なのはハートの強さ。これは響きました。
スマホが来る、は分かっていながらも、既存のガラケーやPCの投資をストップしてでも事業のリソースをスマホに割く。短期的には売り上げがダウンするリスクが出てくる。なかなか決断出来ることではないですよね。
2年前にヤフーさんもスマホファーストではなくスマホオンリーというメッセージを掲げてスマホに投資をシフトしましたが、リーダーがどれだけ長期的な目線を持って、リスクを持ちながらもリソースの舵を切れるか、本当に大事だと思いますし、藤田さんみたいな若手の優秀な経営者ならではだと感じました。
スマホ時代の、というか現代のデザインのあり方だけは私は少し違う見方をしています。エンジニアのスキルとデザインスキル双方を持ち合わせた人材確保が急務。
例えばAndroidアプリのMaterialDesignにしても、ライブラリありきなので、ライブラリの理解が必要。だから、一部でいいですから、社内にテクノロジーベースでのデザインのあり方を理解している人材が必要で、そして私はその人材を育成することも勝者の条件の一つと考えています。
意外と業界を眺めていると「次はこれが来る」は分かるもので、潮目をずっと見ること、そして決断出来ること、が勝者の条件なのかもしれませんね。
藤田さんのまとめはやはり読み応えがありますし、すごく尊敬できる経営者です。
だからサイバーエージェントは魅力的な会社なのだとも、常々感じています。先日掲載いただいた私のインタビューで問題意識として語っていた部分と似ていて共感しました。
https://newspicks.com/news/1074648
私の話の場合は、日本の大学の研究にはデザイナー族がいなくて、エンジニア族はそこが不得手で難しい。いくつかの新しい大学院はそこの融合を図ろうと動き出している。というもの。多分、そういうところを修了した人は、どちらかの根っこの専門性を持ちながら、相手側のことも理解できるので、今後より必要となってくる人材の一つになるのかと思います。
以前カーネギーメロン大の方に聞いた話では、CMUでのUI研究は、エンジニア、デザイナー、心理学者が連携して行うとのこと。(最後の心理学者は、大学の研究では使い勝手を定量的に評価する必要があるからです) 基本的な問題意識はやはり同じですよね。スマホ時代のデザインの重要性はその通りと思う。あまり単純化するのも良くないが、ビジネス系人材とエンジニアは云わば左脳系人材。ガラケー時代は左脳のコントロールができれば勝てたところから、右脳系のコントロールが重要になったということ
モノ作りにおける右脳はデザイナーだし、企画における右脳はプロデューサーだと思う
結果論で言えばここがうまくいってる会社が伸びていて、転換がうまかいってない会社が苦労してるように見えます
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