"何か悪いことが起こる"13日の金曜日
映画「13日の金曜日」は、奇怪な仮面を被った殺人鬼ジェイソンがキャンプ場に来た男女を次々と殺害していく、血ブシャーなスプラッター映画です。
この映画の影響力は強烈で、このせいで「13日の金曜日は恐怖の日」だと多くの日本人は理解したし、
夜になるとジェイソンが襲ってくると恐怖に怯えた子供たちも多かったことでしょう。
我々労働者にとっては仕事が襲ってくる週明け月曜日のほうがよっぽど恐怖なんですが、なんで13日の金曜日が恐怖の日になったのでしょうか。
1. 金曜日はなぜ不吉か
欧米では金曜は「T・G・I・F(Thanks God Its Friday)」といって、
若者たちが街に繰り出してクラブで大騒ぎする日になっていますが、キリスト教徒にとっては伝統的に金曜日は不吉な日なのだそうです。
アダムとイヴが「禁断の果実」を食べて追放されたのは金曜日。
ノアが箱船で助かった大洪水が起こったのも金曜日。
バベルの塔が破壊されたのも金曜日。
ソロモン王の寺院が破壊されたのも金曜日。
イエス・キリストが十字架に架けられたのも金曜日。
これは単なる伝承というか、後付けに過ぎないと思うのですが…。
北欧神話から金曜が不吉だとされているという別の説もあります。
Fridayという言葉は北欧神話の神フリッグ(Frigg)から来ており、フリッグは愛、美、知恵、戦争、死、魔法の神です。
その後キリスト教の教えが入ってきて古代の神様たちが悪魔にさせられてしまうと、フリッグは「毎週金曜日に悪魔を招いて悪事を企んでいる」と信じられるようになりました。
このような考えは特に広く信じられていたものではなかったようですが、17世紀から徐々に時間をかけて広がっていき、「Friday= 不吉で悪いことが起こる」の認識が一般的になるに至りました。
2. 「13」はなぜ不吉か
では13はなぜ不吉なのか。
最も有名な説が、これもキリスト教徒の逸話から来ているもの。
最後の晩餐でイエスと12使徒がテーブルに座り、最後の13番目に座ったのが「イスカリオテのユダ」だったということから、同じテーブルに13人が座ることは不吉だと考えれてきました。
これも北欧神話の別説があります。
12人の神がオーディンの宮殿ヴァルハラに招かれて盛大なもてなしを受けていた。と、ここにパーティーに招かれたなかった神ロキが現れた。ロキは狡猾でいたずら好きな神で、他の神様たちから嫌われていた。
パーティに招かれなかったことに嫉妬したロキは、冬と闇の神で盲目のヘズをそそのかしてヴァルハラにヤドリギの槍を投げ込ませ、光と平和の神バルドルを殺害してしまい、パーティーをお通夜にしてしまった。
こういう神話から、北欧でも13人でテーブルにつくことが不吉だとされていました。
なぜ多くの地域で13が不吉とされたかは、暦と関係しているのではないか、という説もあります。
昔の太陰暦では1年は13ヶ月で数えられており、相対する太陽歴は現在と同じく12ヶ月で数えられてきました。太陽歴を用いる文化圏からすると、太陰暦を用いる文化圏に対して戦いをしてきたため、13という数字を悪魔の数字とみなしたのではないか、というのです。
とはいえ、すべての太陽暦の地域で13が不吉だったわけではなく、古代エジプトでは13は栄光の数字とされました。
古代エジプトでは人生は魂の旅であり、地上には12のステージがあると考えられていました。そして最後の13が「冥界入り」です。エジプト人にとって死は恐怖ではなく、「地上の体を捨て、栄光ある死後の世界へ旅立つ」ことでありました。
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3. 「13日の金曜日」は本当に不吉な日か?
Photo by W.J.Pilsak
17〜18世紀にかけて「金曜日」が不吉な日という認識が強まり始め、「13」という数字もどうやら同じように不吉らしい、と知られるようになっていき、19世紀に2つが結びつけられて「究極に不吉な日」とみなされるようになっていったようです。
歴史をさかのぼってみると、フランス王フィリップ4世がテンプル騎士団のメンバーを一斉逮捕したのが1307年10月13日の金曜日であったし、
イングランド王ヘラルド2世がヘースティングズの戦いでノルマンディー公ギヨーム2世に敗れたのが、1066年10月13日の金曜日でありました。
人々があまりにも「13」「金曜日」を恐れるものだから、ウィリアム・フォルワーという人物は蔓延する迷信を打破するために、「13クラブ(The Thirteen Club)」というクラブを結成しました。
会は13人のメンバーで構成され、活動内容は「13日の金曜日」に集まってテーブルで食事をする、というもの。メンバーは会場である13番ルームに入る前に、ハシゴの下を通ってきて、「どうだ、別に13と金曜日が悪いということは何もないだろう!?」と証明してみせたのでした。
心理学者によると、何か大きな事件が起きると人は「起きた日」と「大事件」を関連づけて考える傾向にあるらしく、起きた日付や時間を昔に起きた事件や事故と結びつけて考え、そこに共通性を見出してしまう。
実際に9.11と3.11があったことから、11日は不吉な日と考える人もいるようです。
インドでは26日が不吉だと考えられているし、アメリカでは191がつく飛行機は避けるべきと考えている人もいます。(詳しくはこちらの記事を御覧ください)
なので、13日の金曜日に実際に大事件が起きてきたし、今後も起きるだろう、というのは、意図的に狙って事件が起きない限りは、確率論的には考えられない話であるわけです。
まとめ
2016年ですと、5月13日は金曜日にあたります。
大部分の人は何も起きない普通の日だろうなと考えているでしょうが、
もしこの日に大事件が起きてしまったら、みんなこぞって事件が起きた理由を「13日の金曜日」に結びつけて考えることでしょう。
真面目に考えたら、お正月明けの1月4日とか、GW明けの5月6日とか、夏休み明けの9月1日とかのほうが、多くの人にとっては不吉で邪悪な日じゃねえかと思いますが、それだと面白くないですよね。
・13日の金曜日のBlu-rayなんてのがあったんですが、これBlu-rayで見たいものなのかなあ
参考サイト
"THE ORIGIN OF FRIDAY THE 13TH AS AN UNLUCKY DAY" TODAY I FOUND OUT