瀧川 正実 2015/12/8 7:00

出店料や手数料などを無料にする「eコマース革命」のスタートから2年が過ぎた。「Yahoo!ショッピング」はどのように変わったのか。3年目に突入した2015年11月。執行役員ショッピングカンパニー長の小澤隆生氏が語った「eコマース革命」の成果、宮坂学社長の方針などから、「eコマース革命」のこれまでとこれからを考察してみる。

プレミアム会員のショッピング利用増加が成長に大きく貢献

ヤフーだけがマイナス成長だったときから、2015年4~9月期(第2四半期)には前年同四半期比30.2%増になった。なぜ売れてきたのか? それは欲しい商品がある。そして安いお得。という分析をしている。

ヤフー小澤氏らが語る「eコマース革命」2年間の評価とこれから①
出典は2015年4~9月期(第2四半期)の個人投資家向け説明会の資料

11月26日にヤフーが開いた2015年のトピックや今後の事業方針に関する説明会。小澤氏は「Yahoo!ショッピング」の現状についてこう説明した。

ヤフー小澤氏らが語る「eコマース革命」2年間の評価とこれから②
執行役員
ショッピングカンパニー長
小澤隆生氏

小澤氏によると、「Yahoo!ショッピング」の出店店舗数は約35万店まで拡大。商品数は2015年11月現在、1億9000万商品まで増えた。小澤氏曰く「eコマース革命時の2倍以上」。続けて、「2億商品を超えると(商品点数では)日本一のサイトになる。2年かかったが今期中に達成できそう」と説明した。

ヤフー小澤氏らが語る「eコマース革命」2年間の評価とこれから③

「Yahoo!ショッピング」がV字回復した要諦は何なのか。小澤氏は「『Yahoo!ショッピング』はゆくゆくはすべての人にとって大事な売り場にしたい」と前置きした上で、プレミアム会員向けの施策をあげた。

ヤフーはプレミアム会員(Yahoo! JAPANが提供する月額380円<税抜>の有料サービス)向けに、「Yahoo!ショッピング」で買い物をすると常時ポイントが5倍になる施策などを実施。「(他のサイトで)同じ商品を買うのであれば、『Yahoo!ショッピング』で買おうという動きが加速した」と小澤氏は分析する。

プレミアム会員は現在1000万人以上が登録。加えて、会員数3900万人超のSoftBank、5500万人超のTポイント会員の利用者に対し、ポイント施策の強化などで「Yahoo!ショッピング」を利用するメリットを提供できるようにしたという。

ヤフー小澤氏らが語る「eコマース革命」2年間の評価とこれから④

この施策は「Yahoo!ショッピング」の流通総額に直結。プレミアム会員による流通額は上昇を続け、「Yahoo!ショッピング」月次取扱高におけるプレミアム会員の購入金額の割合は全体構成比の50%を突破したという。

ヤフー小澤氏らが語る「eコマース革命」2年間の評価とこれから⑤

プレミアム会員の利用増加などで「Yahoo!ショッピング」を利用する新規顧客が増えている一方、リピート率(2年前の購入者の内、直近1年間に再購入した割合)の上昇も顕著という。具体的な数値は明らかにしていないものの、リピート率は過去最高値を更新中。年間顧客単価とユニーク購入者数の増加が、取扱高の拡大に寄与しているという。

ヤフー小澤氏らが語る「eコマース革命」2年間の評価とこれから⑥
ヤフー小澤氏らが語る「eコマース革命」2年間の評価とこれから⑦
出典は2015年4~9月期(第2四半期)の個人投資家向け説明会の資料

堅調に流通額を伸ばしているヤフーは2015年度下半期(2015年10月~2016年3月)、ショッピング事業の流通額は前年同期比30%以上の成長目標を掲げる。

そのための施策として、プロ野球球団の福岡ソフトバンクホークスが優勝した際に最大でポイント42倍を付与するキャンペーンを実施。11月26日からは、全商品を対象として、購入時に付与するTポイントを通常の5倍とする「全員まいにち!ポイント5倍キャンペーン」を始めている。

ソフトバンクやファミリーマートなどと11月11日に開催した大規模セール・キャンペーン「いい買物の日」は、「(1日間の)流通総額は過去最高を記録。こんなに売れるのかという数字が出た」(小澤氏)。小澤氏によると、「Yahoo!ショッピング」のサーバが一時的にダウンする事態も生じたという。

ヤフー小澤氏らが語る「eコマース革命」2年間の評価とこれから⑧

下期は100億円以上をショッピング事業に投資する

小澤氏が「Yahoo!ショッピング」の現状などを説明した後、全体を総括した宮坂社長は「お買い物でもヤフーという端緒は作れた」と「eコマース革命」の成果を口にする。

ヤフー小澤氏らが語る「eコマース革命」2年間の評価とこれから⑨
宮坂社長はショッピング事業への投資を続ける方針を掲げる

宮坂社長によるとショッピング事業はまだ投資段階。2015年度下半期に入っても「Yahoo!ショッピング」への積極投資が続く。下半期がスタートしてからわずか2か月間で次のような販促施策がすでに行われている。

  • 福岡ソフトバンクホークス優勝セール
  • 11日11日の大規模セール(11/5~11/10はポイント11倍商品が2000万点、11/11は1億8000商品がポイント11倍)
  • 2016年3月末までの通常時のポイント付与を5倍
  • テレビCMの積極展開

10月30日に開催した決算説明会。宮坂学社長は下半期に100億円以上をショッピング事業に投資する方針をぶち上げた。ヤフー全体で下半期に予定していた販促活動費は100億円。これに200億円を追加してヤフー全体では300億円を投資する計画だが、追加200億円のうち100億円強をショッピング事業に投じるのだ。この資金の多くがテレビCMやポイント還元といった施策に投入される

上半期のヤフーは主に「ショッピング事業ではプレミアム会員向けに重点を置いて施策を行った」(宮坂社長)。11月からのテレビCMで新たに新規顧客を呼び込み、新規利用者を拡大。既存顧客の底上げと並行して、新規顧客からの購入を一気に拡大する計画だ。

ヤフーは買い手を増やして流通総額を拡大、最終的には出店者の広告による収益化の実現をめざしている。宮坂社長は「『Yahoo!ショッピング』に出店するストアからの広告は、取扱高の伸びと連動して増えるような商品に磨きこんできた」と説明。売上高の規模は小さいものの、取扱高に対する売上高を示すテイクレートは約2%で推移。第2四半期には取扱高が伸びてもテイクレートを維持できる実績が出てきたという。

宮坂氏は「ショッピングのテイクレートは3~5%にしていくことは可能だと思う。取扱高が上がればテイクレートは上がっていくと考えている」。

2014年度通期決算説明会の際、宮坂社長はこう言った。

2015年度はショッピング事業等が大事な局面になるので、成長のための先行投資を行う。

現在のところは取扱高を伸ばしていく方針のヤフー。ただ、中長期的に出店店舗が利益を上げるなかで、ショッピング事業を収益化していく道筋が立ちつつあるようだ。

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