特集 2015年5月11日

デザート感覚で食べる

デザート感覚で食べる(手前を)
デザート感覚で食べる(手前を)
「デザート」と呼ばれる食べ物の分類がある。甘いものだったり果物だったり、それがどういうものかは知っている。
ただ、それがデザートかどうかを決めるのは自分自身でしょ、とも思う。

例えば、ハンバーグのあとにカレー食べたとして、それを食べてる人がデザートだと思って食べたらカレーはデザートですよね。

こんなに自信のない「ですよね。」終わりの文もそうはない。不安を確信に変えるため実践してみよう。
1973年東京生まれ。今は埼玉県暮らし。写真は勝手にキャベツ太郎になったときのもので、こういう髪型というわけではなく、脳がむき出しになってるわけでもありません。→「俺がキャベツ太郎だ!」

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デザートのスイッチを切り替えろ

日常生活の中で「あれ……もしかして、これが自分にとってのデザート…?」と思わされる瞬間がある。例えばこういう場面だ。
何を食べたいのか自分に問いかける
何を食べたいのか自分に問いかける
出てきた答えはハンバーグ&チキン
出てきた答えはハンバーグ&チキン
例えばよく行くステーキ・ハンバーグ系のファミレス。たくさんのメニューをじっと見ていると何を食べたいのかわからなくなってくるので、逆に目を閉じてみる。

見えた。心の目が出した答えはハンバーグ&チキングリルだ。
グリルチキンはカットしないでかぶりつくのが一番うまいと思う
グリルチキンはカットしないでかぶりつくのが一番うまいと思う
あふれる肉汁を全て受け止めるべく、ハンバーグはご飯に乗せてから割る
あふれる肉汁を全て受け止めるべく、ハンバーグはご飯に乗せてから割る
いつものように食べて満足。ここまではあくまで普通にメインの食事を食べているフェイズだ。
肉用のソースはかけずにスープ感覚で直接ちょびちょび飲むのがうまい
肉用のソースはかけずにスープ感覚で直接ちょびちょび飲むのがうまい
おいしかったけどまだ物足りない
おいしかったけどまだ物足りない
おいしく食べ終わったのだが、まだもう少し何かを食べたい。ここからが一般的に言われるデザートのフェイズなのだと思う。
キラキラと輝くデザート群
キラキラと輝くデザート群
大抵はメニューブックの最後に載ってるデザートたち。果物やクリームがふんだんに使われていて、いかにも食後のお楽しみという顔をしている。

ただ、違うんだよな。自分が食べたいものとは。
デザートVSおかず
デザートVSおかず
そういうわけで、妻がクレームダンジュとかいうデザートを頼むのと同時に手羽の唐揚げを発注。ハンバーグ・グリルチキンからの登場だ。

目の前に広がる光景は上の写真のようになる。こうして見ると、唐揚げもかりんとうのように見えてくるではないか。
飲み物とデザートのセットもある
飲み物とデザートのセットもある
から揚げはデザートセット非対応
から揚げはデザートセット非対応
このレストランには、デザートをドリンクバーと組み合わせてお得になる「デザートセット」というものもある。オレンジ色の星がついてるのが対応デザートだ。

しかし、手羽の唐揚げには星はついていない。このことからしても、唐揚げがデザートと見なされていないのがわかる。
自分なりのデザートタイム
自分なりのデザートタイム
このタイミングである、「もしかして唐揚げが自分にとってのデザートなのでは…?」と思わされる瞬間は。

デザートを「メイン料理のあとに小さな器で出てくる食べ物」だとすれば、このタイミングでの唐揚げは立派なデザートではないだろうか。
デザート満喫中
デザート満喫中
しかし、いざ食べてみて口の中に広がるのは圧倒的なから揚げ感。

「やっぱりこれは唐揚げだな…」と思いながらも、小ぎれいな菓子を口にする妻とゆったり会話楽しみながら食べていると「やっぱり唐揚げもデザートかもな」と思えてくる。
妻から「あなたときどき大泉洋っぽい瞬間あるね」と言われた
妻から「あなたときどき大泉洋っぽい瞬間あるね」と言われた
デザート感覚で食べる唐揚げとはこういうことだ。

それがデザートかどうかは、自分の心が決める。デザートか否かの境をたゆたいながら、僕はおごそかに唐揚げを食べきった。
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フルーチェとしてのカレー

先のページではデザートの境界線をうつろう私の心を描いたが、このページもまたその話である。
980円でランチバイキングをやってる草加のインド料理店「ルドリ」
980円でランチバイキングをやってる草加のインド料理店「ルドリ」
この価格のバイキングとは思えない、ちゃんと味の違うスパイシーなカレーが5種類
この価格のバイキングとは思えない、ちゃんと味の違うスパイシーなカレーが5種類
やってきたのはインド料理店。今度の舞台はランチバイキングだ。

すでに多くの人が気付いているかもしれないが、バイキングという食事形式は、デザートの境界をより曖昧にさせる作用があると思う。
パコラやタンドール料理もあって、どれもうまい
パコラやタンドール料理もあって、どれもうまい
まずはチキンティッカやさまざまなカレーを食べて、メインの食欲を満たそう。
黄色いライスはターメリックでなくサフランなのもすごい
黄色いライスはターメリックでなくサフランなのもすごい
なぜかいつもあるパスタも、食べると味付けはインド風
なぜかいつもあるパスタも、食べると味付けはインド風
どの料理にもしっかりとスパイスが効いていておいしい。並んでいる料理を一通り食べると、気持ちもおなかもかなり満たされる。

満足したところで、いわゆるデザートにとりかかろう。
フルーツヨーグルトとフレッシュフルーツ、コーヒーとチャイもある
フルーツヨーグルトとフレッシュフルーツ、コーヒーとチャイもある
ヨーグルトと果物ということで種類は多くないが、カレーの満足度から甘酸っぱい爽やかさに自然と移行させてくれる。
果物用の皿がどう見てもインドではなくむしろ実家感
果物用の皿がどう見てもインドではなくむしろ実家感
コーヒーのあと、チャイをおかわりしていよいよ食事のフィニッシュ感に至ってくる。本当の勝負はここからにある。
デザート食べ終わってからの…
デザート食べ終わってからの…
カレー
カレー
このタイミングである。カレー、デザート、そしてカレー。

この流れで再び食べるカレーの位置づけがわからない。一連の食事の中で、今どういうフェイズなのか自覚しづらいのだ。

考えてみれば、カレーは極端にインド風のフルーチェとも言えるだろう。そういう意味で、デザートとしてのカレーでもあり得るのだ。
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デザートグレーゾーンにいる食べ物たち

ある食べ物がデザート否か、それは気持ちの問題だ。この記事ではそういう問題提議をしているわけだが、ややわかりにくい話だとも思う。

ただ、このテーマについて相談した編集部の古賀さんからは共感を寄せてもらえた。古賀家のデザート事情をメールから引用しよう。

我が家の子供は食後にそれこそ「デザート」を食べる習慣になっているんですよね。

ただ、そんなに毎日フルーツやデザート的なものを自宅に買い置いておらず、いきおい、ベビーチーズとかふかし芋とかを「デザート」として出すことがあるんです。

そんなことをしているので、おかずとして出した煮豆などはよく「これ、デザート?(食後に食べるべき? ご飯と一緒に食べていいもの?)」と子供に確認されます。
リアリティがある話だ。デザートの境界を鋭く問うてくる子供たち。
君は何でありたいの?(こちらの記事より)
君は何でありたいの?(こちらの記事より)
おかずなのかデザートなのか。その間にあるグレーゾーンに位置する食べ物たち。果たしてそれをどう受容すべきなのか、実際に食べて確かめてみよう。
君は一体何なんだ
君は一体何なんだ
ぼかしながらもおかず気取り
ぼかしながらもおかず気取り
まずは煮豆。甘く煮てあるタイプゆえ、境界が曖昧になりやすい。

しかし、パッケージには「もう一品という時に」とはっきり書いてある。暗に「自分はおかずです」と主張しているように見える。
精一杯デザート気分の器に盛った
精一杯デザート気分の器に盛った
ただ、遠回しな言い方なのは、自分でも本当におかずなのか自信がないからだろう。まさにグレーゾーンだ。
これは…
これは…
豆だ!
豆だ!
おかず/デザート判定員として、じっくりと味わいながら食べてみる。口に入れればすぐわかると思ったが、実際にやってみるとこれは意外と難問だ。

しばらく考え込んだあと、浮かんできた答えは「豆」。

おかずでもデザートでもないっす、自分、豆っす。そう豆が言っている。

おかず、デザート、豆。デザートか否かに気を取られ、見失っていたカテゴリーがそこにある。「もう一品という時に」のぼかし方がよくわかる。
ネイティブ風に言うとベイビーチーズ
ネイティブ風に言うとベイビーチーズ
巧みなカテゴライズ
巧みなカテゴライズ
続いて検証するのはベビーチーズ。包装シールに書いてあるのは「おやつ、おつまみに」。そうか、そういう表現に逃げる手があったか。
むきベビーチーズのベビーチーズ添え
むきベビーチーズのベビーチーズ添え
おかずともデザートとも言ってこないベビーチーズ。自らの微妙な立ち位置を自覚しているようでもある。
これは…
これは…
おかずです!
おかずです!
判定は、おかず。あくまで自分の基準で勝手に決めているだけだが、これは明らかにおかずだ。

はっきりした理由もある。ご飯と合いそうだからだ。

そう言えばオードブルにチーズ出てきて「ああ、ご飯と食べたいな」と思ったことがある。私にとってチーズとはオードブルでもデザートでもなく、おかずだ。
おいしいと主張するイモ
おいしいと主張するイモ
何っ!?
何っ!?
最後に確かめてみるのはサツマイモ。グレーゾーンフードとして検証するが、パッケージでは「おかずにもう一品」と、おかずであることを断言。
あくまでデザート気分で盛付ける
あくまでデザート気分で盛付ける
ずいぶん大きく出たな。そこまで言い切って大丈夫なのか。自信のほどを確かめてみよう。
これは…
これは…
デザートだろ!
デザートだろ!
自分の感覚では、どう考えてもデザート。ご飯と一緒は無理だ。

基本的に甘い味付けであるのに加え、材料にも載っているレモン果汁の風味がさらにデザートへ寄せてくる。「スイートポテトのシュガーグラッセ」っ名前をつけたら、もう名実ともにデザートだ。

よって、古賀家のグレーゾーンフードは、おかず1・デザート1・豆1という結果になった。

イモに真摯に向き合う(こちらの記事より)
イモに真摯に向き合う(こちらの記事より)
その食べ物がデザートか否かをもう一度問い直す今回の試み。見えてきたのはデザート精神論だ。

あいまいな食べ物をデザートとして出す古賀さんは、子供たちに「自分で判断せよ」「既存の枠にとらわれるな」というメッセージを送っているのではないだろうか。

デザートを通して、人んちの教育理念にまでたどり着いた。これからもそれがデザートかどうか、自分の心に問いかけていきたい。
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