「ちゃんと役立つ」宇宙基地デザインコンテスト、NASAが開催

これまでにも火星基地のデザインコンテストなどを行ってきたNASAが、宇宙基地のデザインコンテストを開催する。コンテストは2段階にわかれ、参加者たちはデザインコンセプトと実際の建造技術を競う。
「ちゃんと役立つ」宇宙基地デザインコンテスト、NASAが開催
PHOTO BY ARCHITECTURE ET CETERA

米航空宇宙局(NASA)は、宇宙基地のデザインコンテストを開始した。デザインコンセプトを競う第1ステージでは賞金5万ドル、実際の建造技術を競う第2ステージでは、賞金110万ドルの最優秀作品2作品が選ばれるものだ。

NASAのジェット推進研究所(JPL)は2014年にも、3DプリンターメーカーのMakerbot社と共同で、火星基地のデザインコンテスト「MakerBot Mars Base Challengee(日本語版記事)」を主催した。そのときは、最優秀作品に贈られるMakerBotのデスクトップ3Dプリンター「Replicator 2」を求めて、興味深い219作品(日本語版記事)の応募があった。それに比べて今度のコンテストは、賞金総額も大きく、真に役立つデザインや技術が登場する可能性が大きい。

今回のコンテストは2段階で実施される。第1ステージは、3Dプリンティングの特性を活かした建築コンセプトのデザインコンペだ。コンテスト概要は、カリフォルニア州サンマテオで5月中旬に開催された「ものづくり」の祭典「Maker Faire Bay Area」において、NASAと全米積層造形イノヴェイション機構(NAMII)によって発表された。応募作品のなかから評価の高い30作品が選ばれた後、9月下旬にニューヨークで開催される「New York World Maker Faire」で、最優秀作品に賞金5万ドルが贈られる。

コンテストの第2ステージは、「Structural Member Competition」と「On-Site Habitat Competition」のふたつに分かれている。

前者は、居住施設を構成する部材を製造するための技術開発コンペだ。リサイクル可能な資材と、惑星の表面で発見された資源を組み合わせてもいい。NASAは2013年、巨大なクモ型ロボットが月の塵を焼結し、それを溶かして建築用ブロックをつくることで居住施設を組み立てるというプロジェクトを発表。今回のコンテストでは、惑星で採集するものだけでなく、人が持ち込んだ物も利用できる。宇宙船そのものを原料にしたっていい。後者は、そうした部材を使って実際にフルサイズの居住施設を組み立てるチャレンジだ。

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9月26日の「New York World Maker Faire」で、第1ステージの受賞者が発表された後、第2ステージへの登録受付が開始される。第2ステージでは、それぞれの最優秀作品に賞金110万ドルずつが授与される。

これまでの「宇宙基地」デザインには、NASAが思い描いた、クモ型ロボットが月塵で建設する居住施設のほか、欧州宇宙機関(ESA)による未来の月植民地のアイデア(日本語版記事)などもある。また、2014年に開催されたMakerBot Mars Base Challengで、3Dプリントのファンたちが考え出した無数の風変わりで素晴らしい火星基地も興味深い。

2014年のMakerBot Mars Base Challeng最優秀作品となったValcrowのデザイン。「ギザのピラミッド」の比率に基づいデザインであり、閉鎖循環型アクアポニックス・システムを利用して食料を生産したり、鏡をベースにした太陽熱収集器を製造してエネルギーを確保したりする。PHOTO BY BASED ON THE PROPORTIONS OF THE PYRAMID OF GIZA, THE DESIGN USES A CLOSED AQUAP

TEXT BY LIAT CLARK

TRANSLATION BY MINORI YAGURA, HIROKO GOHARA/GALILEO