io9:現代生活におけるアルゴリズムの重要性は決して過小評価できません。アルゴリズムは、金融機関からデートサイトまで、至る所で使われています。その中でも、世界を支配しているいつくかのアルゴリズムが存在します。今回紹介する10のアルゴリズムがまさにそれです。まずは予備知識。アルゴリズムとは? 公式な定義はありませんが、コンピューター科学者たちは一連の処理手順を定めたルールセットをアルゴリズムと呼んでいます。コンピューターに問題の解き方や目標の達成方法を指示するものです。アルゴリズムを考えるときには、視覚的なフローチャートがよく使われます。

1. Google検索

かつて、それほど昔ではない時代に、インターネットの覇権を争って検索エンジン同士の戦いがありました。そして、Googleとその革新的なページランクアルゴリズムが勝者となりました。

今では、米国の検索エンジン市場の66.7%をGoogleが占めています。Microsoft (18.1%), Yahoo (11.2%), Ask(2.6%)、AOL(1.4%)と続きます。Googleが圧倒的に市場を支配しているのがわかります。多くの人にとって、Googleがインターネットへの入り口となっているのです。

ページランクアルゴリズムは、スパイダーやクローラーと呼ばれる自動収集プログラムや、キーワードと場所情報の巨大なインデックスと連携して処理を行います。このアルゴリズムは、ウェブページへのリンクの数と質を評価することで、そのサイトの重要性をランク付けします。重要なウェブサイトほど、より多くのサイトからリンクされているはずだというアイデアに基いています。簡単にいえば人気コンテストです。また、ページランクアルゴリズムは、ページ内に登場するキーワードの場所や頻度、ページの存続期間にも注目します。

2. Facebookのニュースフィード

どんなに認めたくなくとも、Facebookのニュースフィードは私たちが多くの時間を浪費している場所です。自分で表示方法を設定しない限り、Facebookのアルゴリズムが選んだニュースフィードを毎日見ることになります。

あなたにとってどのコンテンツがもっとも興味深いかを決めるために、コメント数、投稿者(人気のある人か? あなたがよくやりとりする人か?)、投稿のタイプ(写真、動画、ステータス、アップデート)など、様々な要素が解析されます。

3. OKCupidデートマッチング

オンライン・デートサイトは今や20億ドル産業です。Match.com、eHarmony、OKCupidなどのおかげで、この業界は2008年から毎年3.5%の成長を続けています。アナリストはこの成長はあと5年は続くと分析しています。実際、デートサイトは効果的にパートナーと出会えるツールとなっています。OKCupidは、お互いの嗜好や傾向に関するデータに基づき、相性が良さそうなカップルをマッチングしてくれます。もちろん、このマッチングはアルゴリズムによって行われます。

アメリカで発表された最新の研究によると、最近の結婚するカップルの3分の1が、オンラインで出会っているそうです。

OKCupidは、ハーバード大学の数学者Christian Rudder氏が創設した無料のオンラインデートサイトです。ユーザーから集めた情報を解析し、マッチングを行います。OKCupidのマッチング・アルゴリズムは、共通の趣味や嗜好でおおざっぱにマッチングするのではありません。ユーザーごとに各項目の重要度が重み付けされ、それに基づきてマッチングが行われます。これが、OKCupidが効果的なデートサイトとなっている理由のひとつです。

4. NSAのよるデータ収集、解析、暗号化

今や私たちは、人間ではなく、アルゴリズムに見張られています。エドワード・スノーデン氏のおかげで、NSA(アメリカ国家安全保障局)とその国際パートナーが、何億人もの市民をスパイしていた事実が明らかになりました。流出した資料によると、Five Eyes(アングロサクソン系5ヵ国)によって運営される無数の監視プログラムが存在するとのこと。また、米国、カナダ、オーストライア、ニュージランド、英国からなる国際諜報同盟の存在も暴かれました。彼らは結託して、私たちの通話やメール、ウェブカメラ、位置情報などを監視しています。アルゴリズムを使って、人間には到底処理できない量の情報を収集・解析しているのです。

興味深いことに、NSAは、市民の情報を「収集」はしていないと主張しています。1982年の手順書によると、「情報は、国防総省諜報機関の職員が、公務で使用するためにそれを受け取ったときに初めて『収集した』とみなされる」また、「電子的手段によって取得されたデータは、それが理解可能な形に加工されている場合にのみ『収集された』とみなされる」なのだそうです。英国ガーディアン紙のBruce Schneier氏は次のように語っています。

あなたの友人の家に何千冊もの本があったとします。NSAによれば、その友人は本を「集めて」いないことになります。「集めた」と言えるのは、彼が実際に読んだ本だけなのです。

これは見逃せない問題です。

コンピューターアルゴリズムはとても身近になっています。コンピューターアルゴリズムが私たちを監視し、個人情報を解析しているとしたら、アルゴリズムの背後に誰がいるのかを考える必要があります。実際に誰かがデータを見ていないのだとしても、見れる状態にあることがすでに「監視」なのです。

最後に関連情報として、NSAの「Suite B」を紹介しておきます。暗号化、鍵交換、デジタル署名、ハッシングに使われる強力なアルゴリズムです。これを使ってNSAはあらゆる内部資料を守っています。

5. きっとあなたはこれが好き...

AmazonやNetflixのようなサイトやサービスは、ユーザーがどんな本や映画を買ったかを監視しています。そして、その人の嗜好に合わせた商品をリコメンドします。

ほかの自動化処理と同じく、この21世紀的な機能も評価が別れるところ。自動でリコメンドを受け取れるのは非常に便利ですが、全く的はずれな提案をしてくることもあります。とくに、3歳の娘のために絵本を買った後などには。

ページランクやFacebookニュースフィードと同じく、こうしたアルゴリズムは「フィルターバブル」を作り出します。自分の嗜好に合わない情報から隔離されてしまう現象です。Eli Pariser氏はこの現象を「情報決定論」と呼びます。インターネットをブラウジングするときの習慣が、その人の未来を決めてしまうのです。

6. Google AdWords

Google、Facebookなどのサイトもあなたの行動や、使うワード、検索クエリを監視して、コンテンツターゲット広告を配信しています。このモデルを用いたGoogle's AdWordsはGoogle社の主な収入源となっています。一方、Facebookはうまくいっていないようです(Facebookで表示される広告を最近クリックしましたか?)

7. 株の高速自動取引

金融業界では、市場の変動を予測するために、ずいぶん前からアルゴリズムを使ってきました。また、アルゴリズムを用いて株の高速自動取引も行われています。こうした高速の取引には、ミリ秒単位で取引を決定する「bot」と呼ばれるアルゴリズムが関与しています。人間だと、状況を把握してからアクションをとるまでに、最低一秒はかかってしまいます。というわけで、人間は取引の現場から撤退しつつあり、新しいデジタル経済が勃興しています。

とはいえ、ときにはアルゴリズムもミスを犯します。Leo Hickman氏が次のように語っています。

2010年5月6日に起きた「フラッシュ・クラッシュ」では、ダウ・ジョーンズの工業平均株価が数分のうちに1000ポイントも下落しました。ようやく回復したのは20分後です。この急落の原因は完全には解明されていませんが、多くの専門家たちは、計量分析的手法を用いた高速自動取引により「底辺への競争」が起きたせいだと考えています。要するに、アルゴリズムが暴走したのです。

米誌Wall Street Journalのレポーターで、『ザ・クオンツ 世界経済を破壊した天才たち』の著者でもあるスコット・パターソン氏は、アルゴリズムを使った取引を、自動操縦の飛行機にたとえています。現代、ほとんどの取引はアルゴリズムでなされていますが、なにか間違いが起きたときは(たとえばフラッシュ・クラッシュのように)人間が介入するべきです。

8. MP3圧縮

データを圧縮するアルゴリズムは、デジタルの世界にとって極めて重大で欠くことのできないものです。誰もがメディアを一刻も早く受け取りたいし、ハードドライブスペースを節約したがっています。そのために、数多くの圧縮・転送技術が開発されました。

1991年、Cisco Systems社がCRTP(Compressed Real Time Protocol)を開発しました。そして、1987年、ドイツの研究者が、音声ファイルを10分の1にできる圧縮技術「MP3」を発明しました。この圧縮技術は、やがて音楽業界に革命をもたらしました(良くも悪くも)。

9. IBMの予測解析ソフト「CRUSH」

まだ世界に広まってはいませんが、いずれはそうなります。各地の警察部門は「予測解析」と呼ばれる新しい技術を導入しつつあります。映画「マイノリティ・リポート」のような世界はすぐそこです。

2010年、IBMの予測解析ソフトウェア「CRUSH」の使用が告知されました。これを使い、メンフィス市の警察は、2006年と比較して、暴力犯罪15%を含む、重犯罪の30%以上を削減しました。これに受け、ポーランドやイスラエル、英国のいくつかの都市も導入を報告しています。現在、パイロットプロジェクトが米国のロスアンジェルスやサンタ・クルーズ、チャールストンで行われています。

このソフトは、データの集合、統計分析、最新のアルゴリズムで構成されています。その都市のおける犯罪事件のパターンを分析し、犯罪の「ホットスポット」を予測、事前に人員を配置することを可能としました。これにより、リソースの配分効率と、公共の安全性が向上しました。

将来は、こうしたシステムがアナリストの仕事を肩代わりするでしょう。犯罪者たちは洗練されたアルゴリズムで追跡され、インターネットでの行動、GPS、パーソナルデジタルアシスタント、生体署名、そのほかすべてのコミュニケーションをリアルタイムで監視されることになります。無人の飛行する車が、潜在的犯罪者を追跡するのに使われるでしょう。アルゴリズムが、対象人物の体の動きや視覚的情報から、次の行動を予測するのです。

10. オートチューン(音程補正)

最後は楽しいものをひとつ。流行の「オートチューン」にもアルゴリズムが使われています。一連のルールにもとづき、少しだけピッチを変えたり、歌声、楽器演奏を問わず、半音ずつ最も近い音階に補正するアルゴリズムです。面白いことに、このアルゴリズムはエクソンモービル社のアンディ・ヒルデブランド氏によって開発されました。彼はもともとこの技術を、地震データの解析に使っていたそうです。

The 10 Algorithms That Dominate Our World|io9

George Dvorsky(訳:伊藤貴之)