ロシア、米の全農産物禁輸へ 欧州の野菜・果物も
【モスクワ=石川陽平】ロシア農業監督局のアレクセーンコ局長は6日、プーチン大統領が同日にロシアに制裁を科した国からの農産物などの輸入を禁止、制限する大統領令に署名したのを受け、米国のすべての農産物と欧州連合(EU)の野菜と果物が対象になると述べた。具体的な禁止品目は、政府が7日に発表する。禁輸措置は世界貿易機関(WTO)の通商ルールに抵触する可能性もある。
ロシア通信によると、アレクセーンコ氏は政府が発表する禁輸品目のリストについて「最大限に広いものになる」と述べ、食品だけでなく、農産物の原料も対象になると指摘した。禁輸措置の期間は1年間。ウクライナ危機を巡りロシアに制裁を科した欧米の食品業界や農業、輸出業者に打撃を与える狙いだ。
日本の食品や農産物への言及はなかったが、対象国になっている可能性がある。
米国の農産物には「米国で生産され、ロシアに持ち込まれるものすべてが禁じられる」と説明。鶏肉など肉製品も対象になると述べた。EUでは「果物と野菜が完全に禁止される」と指摘した。タス通信はロシア当局者の話として、ドイツやフランスなどの乳製品が禁止品目に入ると伝えた。
こうした一方的な禁輸措置は、ロシアも加盟するWTOが基本原則とする自由で無差別な通商ルールに反するとの批判を受けそうだ。ロシア経済発展省は6日、WTOに提訴される可能性は排除しないとしながらも「ロシアの立場は法的に検証済みだ」と主張した。
ロシアには今回の禁輸措置で、国内の農業や食品の生産者を保護する思惑もある。約1億4千万人を抱える自国の市場から乳製品や肉類など欧米の競争力の高い食品や農産物を締め出し、国内の食品産業や農業の生産回復を後押しする狙いだ。ただ、すでに年約6%の水準にあるインフレ率が高まり、消費者に打撃を与えかねない。