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アマゾンの「空飛ぶ宅配便」 小型無人飛行機「ドローン」の配送は日本では実現困難?
アマゾンはドローンによる荷物宅配のイメージ動画を公開した

アマゾンの「空飛ぶ宅配便」 小型無人飛行機「ドローン」の配送は日本では実現困難?

「空飛ぶ宅配便」が、頼んだ商品を届けてくれる——。米アマゾン・ドットコムは7月上旬、小型無人飛行機(ドローン)による商品配送システム「アマゾン・プライム・エア」の実用化に向けて、米連邦航空局(FAA)に屋外試験飛行の許可を申請した。

報道によると、米国では現在、趣味などで上空122メートル以下を飛ぶ無人機は合法だが、商業利用での飛行は禁止されている。同社は今回、例外的な措置として、同社の研究施設があるシアトル近郊の屋外でテストするための許可を申請している。

同社は2015年までに、最大2.3キログラムの荷物を30分以内に購入者の玄関先に届けるための配送システムの実現を目指している。実現すれば「夢の宅配便」になる可能性もあるが、無人で空を飛ぶだけあって、法的なハードルは高そうだ。米国でも実現可能なのかは未知数だが、仮に日本で同様のサービスを実用化しようとする場合、どのような法的課題があるのだろうか。小林正啓弁護士に聞いた。

●法的な位置づけは「模型飛行機」

「ドローンに適用されうる法律として、まず考えられるのは航空法です」

小林弁護士はこう切り出した。

「しかし、航空法において『航空機』とは、『人が乗って航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機及び飛行船その他政令で定める航空の用に供することができる機器をいう』(2条1項)と定められています。

つまり、人が乗れることが要件とされているので、ドローンは航空機にあたりません」

では、ドローンはどんな扱いになるのだろうか。

「ドローンは、航空法施行規則が定める『模型飛行機』にあたると思われます。

『模型飛行機』には、『何人も、航空交通管制圏、航空交通情報圏、高度変更禁止空域又は航空交通管制区内の特別管制空域における航空機の飛行に影響を及ぼすおそれのあるロケットの打上げその他の行為で国土交通省令で定めるものをしてはならない』という航空法99条の2第1項が適用されます。

つまり、航空機の運航に危険を及ぼす空域での飛行が禁止されます。具体的には、航空路管制圏等以外の場所でも、上空250メートル以上の高さを飛行させることが禁止されています」

なるほど、「模型飛行機」として、空域によっては250メートルまでなら飛行可能なケースもあるということか。

●荷物を「空輸」することには法的課題がたくさん

では、アマゾンの計画のように、荷物を届けるようなサービスは可能なのだろうか。

「アマゾン・ドットコムのホームページを見ると、商品を配達するドローンは、地上数十メートルを飛行しているように見えます。

そうだとすると、高度の点では航空法には違反しないことになりますが、他の法律との関係で、さまざまな問題があります」

どのような問題があるのだろうか。

「たとえば、民法は『土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ』(207条)と定めていますので、上空数十メートルであっても、他人の土地の上を飛行することは、その土地の所有権を侵害していることになります。

また、公道の上を飛行することは、道路交通法に違反する可能性があります。

このほか、万が一墜落したり、荷物を落としたりして、人に怪我をさせたり、損害を与えたりしたら、不法行為による損害賠償責任も免れません」

飛行だけならまだしも、荷物を運ぶことについては、さまざまな法的課題がありそうだ。

「結局のところ、わが国において、ドローンに荷物を配達させることは、法令による規制が多く、事故の危険性も高いのです。現状では難しいといわざるを得ないでしょう」

「空飛ぶ宅配便」と聞くとワクワクするが、そう簡単に実現できるものではなさそうだ。

アマゾンが公開した「Amazon Prime Air」のイメージ動画はこちら。

https://www.youtube.com/watch?v=98BIu9dpwHU

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

小林 正啓
小林 正啓(こばやし まさひろ)弁護士 花水木法律事務所
1992年弁護士登録。ヒューマノイドロボットの安全性の問題と、ネットワークロボットや防犯カメラ・監視カメラとプライバシー権との調整問題に取り組む。

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