特集 2014年8月20日

「セミロックフェス2014」緊急レポート

熱演中のアーティスト
熱演中のアーティスト
フジロック、サマソニ、ロック・イン・ジャパン。残念ながら、どのフェスにも行けなかった。しかし、今もっともロックな夏フェスがあるのをご存じだろうか。

公園でセミの羽化を見守る「セミロックフェス」だ。出演アーティストはセミ。その全貌をお届けしよう。
ライター。たき火。俳句。酒。『酔って記憶をなくします』『ますます酔って記憶をなくします』発売中。デイリー道場担当です。押忍!(動画インタビュー)

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会場に入ると、まずネーム付きのパスを渡される

夏真っ盛りの8月上旬。ジージーミンミンと昼夜を問わずセミが鳴く。そんな時期に「セミロックフェス」は開催される。フェス当日、今年の会場となる板橋区・城北中央公園へと自転車で向かった。
多摩動物公園のコアラのエサとなるユーカリも栽培
多摩動物公園のコアラのエサとなるユーカリも栽培
「セミロックフェス」は今年で7回目。主宰の石井夫妻によれば、「公園内を散歩中に、たまたま羽化するセミを見つけた」のがきっかけだという。
セミピースでキメる石井氏
セミピースでキメる石井氏
公園一帯から降るようにセミの鳴き声が聞こえる。その音は、たしかにロックである。

「あらためて見渡すと、ここってセミがやたらたくさんいるんですよ。しかも羽化のシーンは単純に見ていて面白いので、周囲に声をかけたところ、フェス化に至りました」

会場に入ると、まずネーム付きのパスを渡される。参加費は500円だ。安い。
これひとつで、気分も盛り上がる
これひとつで、気分も盛り上がる
「別に悪いことをしているわけじゃないけど、大勢で木の幹を見つめている様子って、そうは言っても変じゃないですか。だから、こういう小道具で『怪しくないですよ』ということをアピールしようと思って」
「セミの羽化を見守らないこと」という文言はない
「セミの羽化を見守らないこと」という文言はない
会場には十数名の参加者がいた。初回から参加しているコアなファンから、今年初めて来たという人まで様々だ。
ステージへ向かう参加者たち
ステージへ向かう参加者たち
「セミロックフェス2014」が始まる。

割れてセミヌードに(ポロリもあります)

最初のステージでは、早くも大量の抜け殻を発見。
抜け殻銀座である
抜け殻銀座である
どこの公園でもセミの鳴き声は聞こえる。ふだん何気なく歩いている近所の公園も、注意して探せばこのような光景が見られるのだろう。

ちなみに、「しょこたん」こと中川翔子はセミの抜け殻マニアで、毎年この時期になると抜け殻をまとった自撮り写真をSNSなどにアップする。来年のフェスには、ぜひ参加してほしいものだ。
7年間の沈黙を破り、穴から出て
7年間の沈黙を破り、穴から出て
本能で木の幹にのぼり
本能で木の幹にのぼり
羽化の準備を始める
羽化の準備を始める
ほうほうと見ていると、脇で詳しい人が解説してくれる。

「背中に脱皮線があるでしょう。『ウンッ』と力むことで、あそこから割れてきますよ」
割れてセミヌードに(ポロリもあるよ)
割れてセミヌードに(ポロリもあるよ)
「セミの羽化は日没後。これは、夜の間に羽を固めて、敵が活動を始める朝には飛び立てるようにするためなんです」
こんなところで演奏するアーティストも
こんなところで演奏するアーティストも
時間が経つと羽にうっすらと茶色が出てくる
時間が経つと羽にうっすらと茶色が出てくる
セミの羽化。音こそ鳴らないものの、いずれも静かな感動を呼ぶ熱演である。

「セーミ!」「セーミ!」。応援コールが起きた

「じゃあ、そろそろメインステージへ向かいましょう」

石井氏のひと声で、全員が歩き出す。あら、ここはサブだったのか。
公園内を歩くこと数分
公園内を歩くこと数分
メインステージに着いた
メインステージに着いた
写真ではわかりづらいが、地面は抜け殻だらけである。よろよろと歩く幼虫もいる。そして、そこかしこの幹でアーティスト(セミ)の演奏(羽化)が始まっていた。
ゆっくりと這い出る
ゆっくりと這い出る
こんなに大変なのかと思うほど、羽化には時間がかかるようだ。オーディエンスのこぶしにも力が入る。「セーミ!」「セーミ!」。応援コールが起きた。

そして…
その瞬間をカメラは捉えた
その瞬間をカメラは捉えた
いやあ、想像以上に神秘的である。さらに、前脚で殻の上部をつかんで起き上がらなければならない。

奮闘の様子を動画で撮影した。
動画は30秒ほどで切れているが、この後、完全に出るまでに10分以上かかっていた。大曲の熱演である。
リアルタイムでUst中継も
リアルタイムでUst中継も

それぞれの「推しメン」を見つけて見守る

なお、これはフェスである。したがって、「フェス飯」も用意されていた。
和菓子と焼き鳥
和菓子と焼き鳥
「焼き鳥は、近所のおいしい店で買ってきたやつ。こしあんのほうは、4個だけセミにちなんだあるものが入っていますよ」と石井氏。

自分の分を食べてみると、ん、じゃりっという食感とともに、何か香ばしい味がする。種明かしは川海老の唐揚げだった。セミの抜け殻に似ているから、という趣向だ。

さて、殻を出た後は羽を固める必要がある。オーディエンスも、それぞれの方法で力を貸す。
葉っぱで扇いだり
葉っぱで扇いだり
息を吹きかけたり
息を吹きかけたり
面白かったのは、みんなで同じアーティストを観るのではなく、気づけば自然にそれぞれの「推しメン」を見つけて見守る傾向にあること。

石井氏は言う。

「キャバクラみたいなもんですよね。しかも、キャストは豊富にいるから選び放題だし」
ディフューザーで光量を調整しながら撮影する参加者
ディフューザーで光量を調整しながら撮影する参加者
よく見ると、意外とかわいいのだ
よく見ると、意外とかわいいのだ
そして、最終形は凛としている
そして、最終形は凛としている

フェスを振り返って

フェスは3時間ほどで終演となった。この間にいくつの名曲を聴いただろうか。「リピーター率が高い」という理由もよくわかる。

なお、あお向けに死んでいると思ったセミが突然暴れ飛ぶさまを「セミファイナル」と称する。生死の見分け方は「脚が開いているかどうか」だそうだ。ぜひ、参考にしてください。
脚を閉じている=ご臨終(セミリタイア)
脚を閉じている=ご臨終(セミリタイア)
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