エナジードリンクの代表格といえばレッドブルだろう。世界160カ国以上で販売され、愛飲されている。
仕事に勉強にとレッドブルが手放せない人も多いだろう。

このレッドブルには大きく分けて二つの系統があるのをご存知だろうか。日本でも売られている青と銀のメタリックな缶に赤いロゴが印刷されたレッドブルは、ヨーロッパのオーストリアが原産だ。もう一方で、タイ原産のレッドブルが存在する。

レッドブルはどうやって生まれた?


レッドブルの元祖は日本だった? 実は二系統ある世界のレッドブル

レッドブルのルーツは、タイで売りだされていた「カティンデン(Krating Daeng)」という栄養ドリンクに求められる。カティンはウシ科の動物であるガウル、デンは赤色を意味する。
「Red Bull」は「Krating Daeng」をそのまま英語にしたものだ。

1970年代末、タイでは日本産の栄養ドリンク「リポビタンD」が広く普及していた。これに目を付けた中国系タイ人、チャリアオ・ユーウィッタヤーが、独自に調合した「カティンデン」を「リポビタンD」より安価な値段で売りだしたところ、低所得層の労働者を中心に爆発的なヒットを記録。さらに、80年代に入り、歯磨き粉のセールスマンとしてタイに来ていた、オーストリア人のディートリヒ・マテシッツの目に止まり、ライセンス契約がなされ、ヨーロッパでも販売がはじまる。その後、世界的なヒットに繋がったのは言うまでもない。

タイ産レッドブルがなければ、世界的なエナジードリンクであるレッドブルも誕生することがなかった。
ということは、すべてのエナジードリンクの元祖は日本産の「リポビタンD」とも言えるだろう。とはいっても、現在もタイで売られている「リポビタンD」は甘味とコクが強烈で日本の商品とはかなり異なる。

タイのコンビニではオーストリア産レッドブルと、タイ産レッドブルが仲良く並んでいる。タイ産レッドブルの価格が10バーツ(約30円・1バーツは3円換算)なのに対し、オーストリア産レッドブルは60バーツ(約180円)と6倍も違う。タイ人の経済感覚だと10バーツが100円くらいなので、オーストリア産レッドブルは600円近くする計算になる。タイ産レッドブルと差別化をするためか、ラベルには“PRODUCT OF EUROPE(ヨーロッパ製)”のただし書きがある。


タイ産レッドブルは、タイのほか、マレーシア、ベトナム、中国など、東南アジア一帯で広く販売されている。タイ以外の国では金色のラベルが目印だ。日本でも飲めないものかとアジア食材店を探しまわったが、入手できなかった。海外産のレッドブルには、日本だと医薬品に分類されるタウリンなどの成分がギンギンに入っているため、輸入販売ができないのかもしれない。

タイをはじめ東南アジア諸国にはレッドブル以外にも無数のエナジードリンクが売られている。旅行の際は、飲み比べをしてみるのも面白そうだ。

(下地直輝)