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「世界一難しい試験」と言われるロンドンのタクシー免許試験とは?

By James Barrett

ロンドンの伝統的なタクシーは背が高く黒色の車体を使っていることから「Black Cab」と呼ばれています。ロンドン市民だけでなく世界中の旅行者に親しまれ愛されているBlack Cabを運転するロンドンのタクシー運転手は、ロンドン市民から尊敬される対象とのこと。その理由は、Black Cabを運転する資格を得るための運転免許試験「Knowledge of London(ナレッジ試験)」が「世界一難しい試験」と呼ばれるほどの難関だからだそうです。

The Knowledge, London's Legendary Taxi-Driver Test, Puts Up a Fight in the Age of GPS
http://tmagazine.blogs.nytimes.com/2014/11/10/london-taxi-test-knowledge/

ロンドンのBlack Cabを運転するドライバーは、唯一の資格認定試験であるナレッジ試験をくぐり抜けた精鋭ばかりです。ナレッジ試験に合格するには、その名の通りロンドンの地理に関するあらゆる「知識」を持つことが要求され、合格に必要な学習時間は平均で約4年とのこと。もちろん平均4年なので合格までにそれ以上の年月を要することもしばしばで、道半ばで脱落していく人も多数。

ナレッジ試験は「Blue Book」と呼ばれる教本を受け取る事からスタートします。このBlue Bookには、ロンドン中心部にあるチャリング・クロスのチャールズ1世の騎馬像を中心として、半径6マイル(約10キロメートル)の中にある道路・建物・駅・公園などの公共施設に関するあらゆる知識を習得する必要があることが定められています。この範囲にある道路の数は約2万5000。当然、一方通行や行き止まりがあることを含めて完全に把握することが求められます。

By fmpgoh

ロンドン市内のあらゆる道路に関する知識を試す試験は筆記試験だけでなく試験官との1対1の口頭試験などを7段階わたってクリアすることが要求され、各試験ごとに合格するまでの期間制限が設けられており、期限を過ぎれば一つ前の段階に戻されることもあるとのこと。もちろん筆記試験・口頭試験に合格する過程で運転技術に関する実技試験もあります。

Blue Bookには640個の始点・終点からなる320のルートが掲載されていますが、試験はこの中から1つのルートが選ばれ、特定地点の正確な位置と最短距離の道筋を答えるというもの。筆記試験では最短ルートを白地図に描くことを要求され、筆記試験をクリアした人だけが進める面接官との口頭試験では、最短ルートで通るすべての道路・交差点の名前と右折・左折の方法を正確かつ素早く口答する必要があるとのこと。

当然ながらナレッジ試験で試される知識はロンドンのタクシードライバー(通称「cabby」)に必要な能力なので、始点・終点は固定的なものではなく、その間にあるホテルやレストランからの乗車ルートも尋ねられるので、受験者は道路だけでなくあらゆる建物の位置をインプットしているよう求められます。

By Olivier Hill

このようなロンドンの道路・建物に関する膨大な知識を求められるため、受験生はみな自転車やバイクを使って道路を実際に走行してメモをとる「ポインティング」と呼ばれる実地学習を行います。つい最近ナレッジ試験を突破したばかりの元受験生いわく、3年間で地球2周分に相当する8万キロメートルを走行し、暗記用のフラッシュカードは4万枚に到達していたとのこと。さらに多くの受験生がポインティングだけでなく、ナレッジ試験専門の受験予備校に通いながら教室の仲間と切磋琢磨して知識を磨いていきます。


ロンドン市内のありとあらゆる交通情報を完璧なまでに把握することを求められるため超人的な記憶力を身につけることになるcabbyの脳は、記憶に関する研究者の注目を集めています。ロンドン大学の神経学者エレノア・マグワイア博士が、15年間にわたってcabbyとその予備軍である受験生の脳について調査したところ、記憶をつかさどる部位である海馬が一般人に比べて大きいことが判明。さらに試験をくぐり抜けることで受験生の海馬が拡大していることも発見されています。

合格までに数年間の受験生活を余儀なくされるナレッジ試験をクリアすることが並大抵のことではないというのは明らかですが、受験生が減ることはないとのこと。それは、ロンドンのタクシー運転手はみな個人タクシー業態で、運転手であると同時に経営者でもあり仕事のスタイルを自分で決定できるという自由なライフスタイルが得られるから。また、あまりにも難しいナレッジ試験の存在のおかげで新規参入が難しく、cabbyの数は常に約2万5000人に維持されているそうで、生活が非常に安定しているというメリットもあるとのこと。

なお、ロンドンには「minicab(ミニキャブ)」と呼ばれるタクシーに似たサービスがありますが、ミニキャブが可能なのは電話予約をした客を運ぶことだけで、路上で客を乗せる権利はcabbyにのみ与えられています。そして、Black Cabでは高い知識を有する優秀な運転手による高品質なサービスを受けられることが約束されているため、Black Cabはミニキャブよりも高い運賃が得られます。

By Kaua'i Dreams

とはいえ、何年間もの受験勉強を強いられることを考えれば、弁護士などの他の資格を取得する方が収入面では有利だそうです。最難関のナレッジ試験をパスしてcabbyになることを夢見て勉強を続ける受験生にとっては、自由なライフスタイルや安定した収入を得られることよりも、cabbyにだけ装着が許される「green badge(緑色のバッジ)」を誇らしげに胸に付け、ロンドン市民の尊敬を受けられる「栄誉」こそが最大のモチベーションとなっているのかもしれません。

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in メモ,   乗り物, Posted by darkhorse_log

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