もし鈴木涼美が桃太郎を書いたら

先日の伊藤政則×桃太郎が予想外のヒットだったので、今日はさらにマニアックかつ自分の趣味に走ったネタをやります。まぁマンネリのそしりは免れないかと思いますが、今日はこのイタコ芸シリーズで初めての試みとなる、女性作家の文体模写に挑戦いたしますので、これでもいろいろチャレンジしているのだ、とご理解いただきたいものだと!


これまでのシリーズ一覧。


もし大藪春彦が桃太郎を書いたら - 男の魂に火をつけろ! もし大藪春彦が桃太郎を書いたら - 男の魂に火をつけろ!
もし平山夢明が桃太郎を書いたら - 男の魂に火をつけろ! もし平山夢明が桃太郎を書いたら - 男の魂に火をつけろ!
もし夢野久作が桃太郎を書いたら - 男の魂に火をつけろ! もし夢野久作が桃太郎を書いたら - 男の魂に火をつけろ!
もし横溝正史が桃太郎を書いたら - 男の魂に火をつけろ! もし横溝正史が桃太郎を書いたら - 男の魂に火をつけろ!
もし小池一夫が桃太郎を書いたら - 男の魂に火をつけろ! もし小池一夫が桃太郎を書いたら - 男の魂に火をつけろ!
もし桃太郎が水曜どうでしょうだったら - 男の魂に火をつけろ! もし桃太郎が水曜どうでしょうだったら - 男の魂に火をつけろ!
もし桃太郎がなんJ民だらけだったら - 男の魂に火をつけろ! もし桃太郎がなんJ民だらけだったら - 男の魂に火をつけろ!
もし梶原一騎が桃太郎を書いたら - 男の魂に火をつけろ! もし梶原一騎が桃太郎を書いたら - 男の魂に火をつけろ!
もし伊藤政則が桃太郎を書いたら - 男の魂に火をつけろ! もし伊藤政則が桃太郎を書いたら - 男の魂に火をつけろ!
もし淀川長治が桃太郎を解説したら - 男の魂に火をつけろ! もし淀川長治が桃太郎を解説したら - 男の魂に火をつけろ!

もし鈴木涼美が桃太郎を書いたら

(※鈴木涼美って誰だ? という方は、前に書いたこちらの記事をご覧ください。〜高学歴の女・秘められた過去〜 - 男の魂に火をつけろ! 〜高学歴の女・秘められた過去〜 - 男の魂に火をつけろ!「『AV女優』のアクロイド殺し」 - 男の魂に火をつけろ! 「『AV女優』のアクロイド殺し」 - 男の魂に火をつけろ!

 昔々、なんていったところでいつのことなのかはわからないのだし、あるところに、なんていったって何処の話なのかは誰もわかってないのだし、おじいさんとおばあさんが住んでいました、なんて平気で言えてしまう人の気持ちを理解してやる義理はワタシには絶対にないのだけれど、かといって山で柴刈りをするおじいさんと川で洗濯をするおばあさんの存在を、頭から否定できるほどワタシは合理的にできてもいない。


 おばあさんが川で洗濯をしていると、川上からドンブラコ、ドンブラコと大きな桃が流れてきたというのだけれど、ワタシだったらそんな桃を拾うぐらいなら銀座まで足を伸ばして千疋屋で買ったほうがはるかにマシだと思うのだが、そんなことを考えてしまうのは私が山の人々の生活を知らないからなのだろう(ワタシにもその程度の謙虚さはあるのだ)。


「そしておじいさんとおばあさんが桃を切ってみると、中から男の赤ちゃんが生まれました」
「なんで桃の中から赤ちゃんが生まれるのよ。どれだけ大きな桃だったの。それに、桃を真っ二つに切ったら赤ちゃんだって一刀両断じゃん。ドンブラコってオノマトペの意味もわかんないし」
「アナタは昔からそういうことばかり言う子だったわね。そういう鋭い閃きは必要かもしれないけど、でもそれだけで書いたものは私は読みたくない。物事の本質って、そういう才能みたいなものじゃなくて、もっと地道に磨かれた感性でしか見抜けないものなんじゃないかしら」
 ワタシが横浜は関内の小汚いマンションで、清さと正しさと美しさ以外のすべてを体現しながら生活していた頃、母はときどき電話をかけてきてはこんな話をしていた。


 桃から生まれた男の子に「桃太郎」と名付けてしまうそのセンスには断じて納得できないが、他人の子どもに文句をつけるよりは、自分がいい歳になって結婚もせず子どもを産んでもいないことを反省すべきであろう。母親たちがワタシたちに求めているのは、きっとそういう正しさなのだ。そしてワタシたちは、自分がぜんぜん正しくないことを知っているのだし、そんな正しくなさに辟易としてもいるのである。


 桃太郎はすくすくと育って、やがて強いオトコに成長したというのだが、オトコというのは、オンナ「が」好きになる人と、オンナ「を」好きになる人の2通りしかいなくて、前者は得をし続けるのだし、後者はずっと損ばかりの人生を歩むのだ、というのがワタシの持論である。桃太郎がどっちだったのかはワタシの知るところではないが、自分で「日本一」を名乗るぐらいだから、さぞかし押しの強い、自信満々なキャラだったのだろう。そういうオトコには得てしてメンヘラちゃんが群がるものなのだが、彼女たちの生態に関する論考はまたいつの日にか❤


「鬼ヶ島へ行って鬼退治をする」というのが「歌舞伎町のホストクラブでナンバーワンになる」と同じ意味だということに気がついたのは、ワタシが夜のオネエサンになって間もない時期であった。ワタシが知っているあのオトコが桃太郎だとしたら彼は、犬(風俗嬢)、猿(キャバクラ嬢)、キジ(何やってる人なのか誰も知らない嬢)にきび団子をあげて(枕営業)、旅の仲間にした(育て)。
 彼は、「鬼退治をしたら財宝を分けてあげるから」(ナンバーワンになったら店を辞めてキミと結婚するから)というような内容を、3回ぐらい洗濯して漂白した言葉で3人それぞれに言っていたようだが(カッコ内はワタシの翻訳)、常連客には桃太郎の三股はすっかりバレていて、「ホスラブ」で店のスレッドをチェックすると「桃太郎の3人組ってウザくね?」という書き込みがあり、それに「え? あの人たちいい子だよ」「本人乙」などとレスがついていたものであった。


 ワタシたちは、きび団子で買える幸せも、きび団子じゃ買えない幸せもどちらもほしいのだし、いつだってセンスあるオトコが思うより、センスないオトコが思うより、ずっとアンビバレントであるのだし、愛してくれないと嫌だし、愛してくれるだけでも嫌なのだ。


 桃太郎がナンバーワンになったかどうかを見届ける前に、ワタシはこめかみ辺りまで浸かっていた夜の街を出て、くたびれた昼のオネエサンに成り下がったので、あのオトコが鬼ヶ島の財宝を手にできたのかどうかは知らないし知りたいとも思わない。けれども、犬や猿やキジが桃太郎を通じて得ていたであろう、ごみみたいな夜の街でしか得られない万能感は、指名していたホストの誕生日に、8段に重ねたグラスタワーのてっぺんからドンペリ(夜の街価格で6万)を注いでいた21歳のワタシを振り返るまでもなく、桃から生まれた子どもに桃太郎と名付けるセンスよりは、ずっとたやすく理解できるのである。


あー、今まででいちばん苦労して書いたんだけど、果たして何人に伝わるのかなぁ。今までの、この人に対するはてな村の反応を見ると、村ではこういう経歴の人は理解の対象外とされることが多いからなぁ。


AV女優への偏見こそが仕事の価値を生んでいる「女子高生」ほどわかりやすい“値札”はない【社会学者・鈴木涼美×社会学者・開沼博】|対談 漂白される社会|ダイヤモンド・オンラ AV女優への偏見こそが仕事の価値を生んでいる「女子高生」ほどわかりやすい“値札”はない【社会学者・鈴木涼美×社会学者・開沼博】|対談 漂白される社会|ダイヤモンド・オンラ


何を選択しても批判され、満たされない世界――元AV女優の社会学者・鈴木涼美が語る、女の生きづらさ|ウートピ 何を選択しても批判され、満たされない世界――元AV女優の社会学者・鈴木涼美が語る、女の生きづらさ|ウートピ


「“AV女優の何が悪い!”という声のほうが気持ち悪かった」社会学者・鈴木涼美インタビュー(前編) | ダ・ヴィンチニュース 「“AV女優の何が悪い!”という声のほうが気持ち悪かった」社会学者・鈴木涼美インタビュー(前編) | ダ・ヴィンチニュース


でも、これらの記事についたブクマコメントや、ツイッターで言及されてたコメントなんかは、どれも鈴木さんからすればはるかに周回遅れというか、すでに想定済みの内容ばっかりだと思いますけどね。この人は、そういう反応が返ってくることを予想できないほどマヌケではないよ。


だってね、このブログではもう何回も書いたことですけど、「日経新聞記者はAV女優だった!」と週刊文春に暴かれた鈴木涼美さんは、その8年前に自ら監督・脚本・主演をつとめたビデオで「大手マスコミ記者の女性が、過去の過激な性体験を暴かれる」というストーリーを演じていて、しかもヒロインのつとめる会社の名前が「文藝春旬」だったんですからね。予言者ですよあの人は。
(でも、さすがにこんな改変ネタのテンプレに使われるとまでは予想できなかったであろう、と自負している)



そんな鈴木涼美さんは、1月31日に下北沢の「ビールが飲める本屋」B&Bにて、AVライターのアケミンさんと対談トークショーをされるそうです。
鈴木涼美×アケミン 「オネエサンたちの夜会」 『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』刊行記念 | 本屋 B&B
というわけで、イベントの告知もしたことだし、どうか勘弁してください!