「第3のビール」「発泡酒」の大幅値上げ計画が進行中 財務省とビール各社それぞれの思惑
財務省vs.ビール会社が繰り広げてきた「酒税戦争」。その最終仕上げに財務省が乗り出した。メーカー各社は手を取り合って反対運動—といきたいところだが、話はそう単純にはいかないようで。
この日を待っていた
「今回の税制改正が実行されれば、発泡酒と第3のビールを飲んでくださっているお客様は、確実にほかのお酒に行ってしまうでしょう。現在の景気状況を考えれば、多少の増税でも、『もう飲めなくても仕方がない』と諦めてしまう人が出てくると思うからです。いわゆる『ビール離れ』は、ますます加速してしまうでしょう。われわれが一番大切だと思っているのは、お客様の動向。それを無視した税制改正では困ります」
キリンビールの磯崎功典社長は、本誌の取材にこう語った。
戸惑うのも無理はない。
安倍政権がビール業界を揺るがす一大増税を断行する—そんな仰天の構想がいま急浮上し、ビール業界が騒然としている。
「ビール系飲料の税額を段階的に一本化するというのが、政府が目論む税制改正のシナリオです。狙い打ちされているのは、発泡酒と第3のビール。現在、ビール類の酒税は350ml換算で、ビールが77円、発泡酒は47円、第3のビールは28円ですが、この税率格差をなくすという名目で、発泡酒と第3のビールの税額を引き上げようとしています。最終的に一本化される税額は55円になるとも言われていて、その場合、発泡酒と第3のビールはそれぞれ10円、20円ほどの値上げになってしまう」(全国紙経済部記者)
若者のビール離れが止まらない中にあって、発泡酒と第3のビールは「安くてうまくて酔える酒」として、デフレ時代のヒット商品に成長した。かつては「まずはビール」だったのが、「まずは発泡酒」「まずは第3のビール」というのが当たり前。最近でもプリン体ゼロの発泡酒が絶好調で、第3のビールは年間出荷量でビールを逆転するのが秒読みと言われるほどである。
それが増税されるというのは、ビールメーカーにとっては稼ぎ頭を狙い打ちされたも同然。そのため、「売り上げ好調に水を差しかねない」(大手ビール会社幹部)と業界は大慌てなのだ。
ただでさえ消費増税でモノの値段が上がり、消費者が財布の紐をきつく縛っている時期である。そこに追い打ちをかけるような増税が実行されれば、庶民のささやかな楽しみである晩酌の機会を奪われかねない。
ビールメーカー5社で構成するビール酒造組合会長代表理事を務める、サッポロビールの尾賀真城社長が言う。