Googleは10月22日、『Inbox by Gmail』と呼ばれるまったく新しいEメールサービスを発表しました。「Inboxなんて初めて聞いた」「機能や仕組みがわからない」という方のために、この記事では、1週間毎日使ってみてわかったことを説明していきます。

現時点で、Inboxは招待制のサービスですが、招待は着実に広がっているようです(抜け道もあります)。

今までの常識を捨てるべし(メールはToDoリストと見なせ)

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Inboxの機能を紹介するまえに、そもそもInboxとは何かを説明しておくほうが良いでしょう。ほとんどの人がぶつかるであろう最初の問題は、「どのボタンで何ができるのかわからない」ということです。たとえば、米Lifehacker編集長のウィットソン・ゴードン(Whitson Gordon)は、Inboxを初めて使った時に、「メールを『Done(完了)』にするってどういうことなんだ? 既読にするってこと? それともアーカイブ?」と尋ねてきました。

そうした疑問には、実はひとつの答えがあります。InboxもやはりGmailと同期していて、Gmailでのメールの処理に影響を与えます。ですが、この疑問はもっと大きな問題に関係しています。「既読にする」や「アーカイブ」といった用語は、Inboxでは意図的に使用されなくなっています。その代わりに、Inboxでは、メールがToDoリストのように扱われます。「どんなメールに対しても、何かをする必要がある」というのが前提になっているのです(おそらく、その前提は正しいでしょう)。例えば、重要な情報が含まれたメールは分類したりとっておいたりする必要がありますし、返信が必要なものもあります。料金の支払いなど、現実の世界でしなければならないことを伝えるメールもあるでしょう。いずれにしても、メールを「既読」にしたからといって、必要な行動をとったことにはなりません。それなら、わざわざ既読にする必要があるでしょうか?

筆者の意見では、この点こそが、鍵を握る重要な特徴です。このポイントさえ押さえておけば、そのほかのすべてがすんなり腑に落ちるはずです。Inboxを使う時には、新しい機能を既存の用語に翻訳しないようにしましょう。どのボタンで何ができるかはあとで説明しますが(万が一Gmailに戻る場合に、全体の流れをめちゃくちゃにしたくはないでしょうから)、Inboxの世界に飛びこみたいなら、頭から飛びこんで、うしろは振り返らないのが一番です。

メールの3つの分類:ピン、スヌーズ、完了

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Inboxでは、メールの処理に関していくつかのオプションがあります。そのうちの主要な3つのアクションが、「Pin(ピン留め)」、「Snooze(スヌーズ)」、「Done(完了)」です。ここからは、この3つの機能と、それに対応するGmailの機能について説明します。

  • Pin(ピン留め):メールを「ピン留め」すると、受信トレイの目立つ場所に置かれます。メールがバンドル(これについてはあとで詳しく説明します)の一部になっている場合は、独自のラインが割り当てられるので、いっそう見やすくなります。また、どのプラットフォームでも、アプリの上部に表示される大きなスイッチを使って、「ピン留め」されたメールだけを表示することもできます。旅行の確認書類、参考文書、重要な会話など、あとで読み返す必要のあるメールは、「ピン留め」しておくと良いでしょう。Gmailには「ピン留め」に対応する機能はありません。
  • Snooze(スヌーズ):Boomerang』のユーザーなら、メールをいったん保留にしてあとで処理するという概念はおなじみかもしれません。メールの中には、必要ではあるけれど、いますぐ必要ではないというものもあります。Inboxでは、そうしたメールを「スヌーズ」にして、いったん受信トレイから消し、あとでまた表示させることができます。特定の時間を設定しても良いし、「明日の午後」のようなおおまかなプリセットも使えます。いますぐ処理する気がなくて、時間的な制約が厳しくないものについては、「Someday(いつか)」オプションを使って、Googleに時期の判断を委ねてしまっても良いでしょう。Gmailの受信トレイを見れば、「スヌーズ」にしたメッセージがアーカイブされているはずです。
  • Done(完了):このアクションは、メッセージがもう必要なくなった時に使います。メールを「完了」にすると、受信トレイや表示されているバンドルから削除されます。「完了」にしたメールも検索できますが、受信トレイがゴチャゴチャすることはもうありません。Gmailでは、「完了」にしたメッセージもアーカイブされます。機能はInboxと同様です。

Inboxにはほかの機能もありますが(あとで説明します)、メールを処理する際には、おもに上述の3つを使うことになります。いますぐ必要なのか、あとで必要になるのか、もう必要ないのか。とても単純でしょう?

いつでも整理整頓:リマインダーとバンドル

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Reminders(リマインダー)

メールを「スヌーズ」にすると、あとで必要になった時にそのメッセージが表示されるだけです。けれども、「Reminders(リマインダー)」機能を使えば、未来の自分にメモを送ることができます。例えば、販促メールに実際に買いたいものが載っていたとしましょう。「Xのためのクリスマスギフト」というリマインダーを設定すれば、メールの隣にそれも表示されます。

もちろん、『Google Now』のユーザーなら、リマインダー機能をご存じのはずです。スマートフォンやタブレット、スマートウォッチをリマインダーに使っている人もいるでしょうし、もしかしたら近いうちに、自分の脳を使って、「帰宅したら忘れずに支払い手続きをすること」といった自然言語のリマインダーを設定できるようになるかもしれません。いつも使っているそうしたリマインダーを、受信トレイにも表示できるようになるわけです。Inboxでは、データがToDoリストのように扱われます。また、自分あてのリマインダーの場合、おそらく「するべきこと」を伝えるケースが多いでしょう。ですから、Inboxとリマインダーはとても相性が良いのです。

Bundles(バンドル)

リマインダーやメール、さらにInboxが追加する情報カードが集まると、そのぶん情報の把握は難しくなります。そこで役に立つのが、「Bundles(バンドル)」機能です。バンドルは、関連するメールを受信トレイ内でひとまとめにする機能です。例えば、AmazonやNewEgg、Appleからの販促メールが、すべて1つの開閉式バンドルにまとまります。1つのボタンでバンドル全体を「完了」にすることもできます。

バンドル機能は、ラベル、フィルター、Gmailのスマートタブが一体化したものです。ここで少しだけ話がややこしくなりますが、「プロモーション」や「新着」(そのほかの新しいタブも)といったこれまでのタブは、Googleがつくったバンドルとして扱われます。それぞれのバンドルに特定のルールがありますが、ユーザーはそのルールを修正したり無効にしたりすることができます。古いラベルもきちんとインポートされますが、どちらかといえばフォルダに近い形で機能します。既存のラベルのいずれかに手動でメッセージを追加すると、そのメッセージは受信トレイからは完全に削除されます。そうした古いラベルはすべて、サイドバーの「Unbundled(アンバンドル)」と呼ばれるカテゴリーにまとめられます。

既存のラベルから独自のバンドルをつくったり、新しいバンドルを作成したりすることもできます。サイドバーにあるラベルをクリックし、上部のアクションバーで「Setting(設定)」をクリックします。ここで、そのラベルのルールを作成できます。そうすると、そのラベルがバンドルに変わり、それ以後に来るすべてのメールに適用されます。Gmailではフィルターとラベルは別々のものでしたが、Inboxでは直接結びついています。

上述の設定をしたあとは、ルールに合致するメールが来ると、Google独自のバンドルのケースと同じようにグループ分けされます。受信した新着メールのなかに、フィルター条件に合うものがあれば、1つの開閉式バンドルに自動的に振り分けられます。分類されたメールには、サイドバーからもアクセスできます。ただし残念ながら、ラベルと違って、過去のメールには適用できないというマイナス面もあります。

Eメールを超えて:埋めこみ型情報とGoogle Now

最後に紹介するInbox最大の長所は、メールを開いたり別の場所で情報を探したりしなくても、必要な情報が表示されるという点です。例えば、フライト情報に関するメールを受信すると、搭乗予定のフライトの状況が表示されます。写真が添付されたメールが来ると、受信トレイに埋めこまれた形で写真が表示されます。メッセージをじかに開く必要がないのです。

これはとても素晴らしい機能です(とはいえ、筆者の経験からいえば、一般的なメールでそうした情報カードが表示されるケースはめったにありません)。ですが一方で、この機能があるがゆえに、Google Nowやデータスキャンを好まない方にはInboxは向かないかもしれません。これらのスマート機能はアプリに組みこまれていて、オプションではありません。メールの内容にもとづくサジェストを無効にするボタンは存在しません。こうした機能を煩わしく思うなら、Inboxには手を出さないほうが良いでしょう。

とはいえ、それ以外の人にとっては、Inboxはメール処理の新たなアプローチを提供する優れたサービスです。メールが来たら、たいていは読むだけでなく、何らかの行動を起こすもの。Inboxはその点を理解しています。また、大量に送られてくるメールをすばやく分類する必要があることも理解しています。生産性が求められる現代の社会では、メールを「既読」にするよりも「完了」とするほうが、ずっと理にかなっていると思いませんか?

Eric Ravenscraft(原文/訳:梅田智世/ガリレオ)