ビジネスの世界では、仕事環境からマーケティング、ブランディングにいたるあらゆることに、色が大きな影響を与えています。Googleは、そうした色の威力を研究している米国の主要企業のひとつです。

消費者が見るのは「色」

Googleの企業広報マネージャーを務めるMeghan Casserly氏によれば、研究はまだ初期段階ではあるものの、すでに「労働環境における色と満足度の明確な関連性」が明らかになっていて、それを利用すれば、従業員の創造性と生産性を高めることもできるのだそうです。

ニューオーリンズ大学のマーケティング学助教、Elyria Kemp氏によれば、時間や注目の奪い合いがこれまでになく激しくなっている現代では、色が「もの言わぬセールスパーソン」なのだとか。

「私たちを取り巻く環境には、あまりにも多くの刺激が存在しています。だからこそ、特定の色をはっきりと目立たせることがとても大切なのです」とKemp氏は説明しています。

Kemp氏は、ビジネスにおける色のトレンドを追跡しつつ、感情と色の関連性について独自の研究を行っています。また、輸送や医療、金融といった特定のサービスに対して、消費者がどんな色のイメージを持っているのかも調べています。

Kemp氏によれば、消費者が商品を評価する際には、たいていは90秒以内で判断が下されるのだとか。しかも、初期段階での評価の半分以上は、色のみによって決まるのだそうです。

色で自社製品を連想させる

だからこそ、多くの企業は多額の資金を投じて、どんな色を選ぶべきかを研究し、トレードマークとなる色を決めているわけです。そうしたイメージカラーには、消費者に自社製品を連想させる効果があります。小口貨物を取り扱う米国のUPSのプルマンブラウン(19世紀の高級寝台列車プルマン・カーに使われていた茶色)、大手ホームセンターHome Depotの鮮やかなオレンジ、Tiffany & Co.の独特な青などは、その良い例です。

ニューヨークを本拠地とするTiffany & Co.の広報担当者、Joclyn Benedetto氏によれば、同社の全商品のラッピングに使われており、Tiffanyの「顔」ともいえるこの青は、同社のダイヤモンドやジュエリーの魅力を連想させる色だといいます。この色を選んだのは、創設者のCharles Lewis Tiffany氏。1845年に第1号がつくられた「Blue Book」カタログの表紙として選ばれたのが、この色だったのだそうです。

Coca-Colaのイメージカラーである赤も、起源は100年以上も昔にさかのぼります。同社の広報担当者Ted Ryan氏によれば、当時、出荷用の樽を赤く塗り、ビール樽と区別していたのがはじまりだそうです。

Home Depotの独特なオレンジはもともと、初期の広告看板で使われていた、解体されたサーカス・テントの色でした。それがいまでも使われています。

Home Depotの最高マーケティング責任者を務めるTrish Mueller氏は、こんな風に語っています。「お客様を対象とした調査で、Home Depotと聞いて思い浮かべる言葉を訊ねると、真っ先に返ってくるのが『オレンジ』という答えです。つまり、文字どおり当社のDNAに染みこんでいるというわけです」。

もっと小規模な企業も、色の利点を認識するようになっています。公衆トイレ用の製品や付属品を扱うMar Plastの卸売業者であるミシガン州アナーバーのEmil Hagopian氏によれば、そうした類の商品でも、標準的な無彩色やステンレスにとどまらない色の需要が高まっているそうです。

「色は、見る者に刺激を与え、優れたデザイン空間にいるような気分を生みます。安心感や快適さといったムードを、全体的に高める効果があると言えるでしょう」とHagopian氏は説明しています。

Hagopian氏によれば、技術の進歩も、より幅広い色の製品をつくれるようになった一因だといいます。とはいえ、大切なのはその場にふさわしい色を選ぶことです。

「なんとなく雰囲気が良いと思うのは、安心や安全を感じとるからです。頭で考えてわかるものではありません。ぱっとひらめくようなものですね」と、Hagopian氏は言います。「そして時には、なにかが良くない場合にも、そうしたひらめきでわかることがあります」。

Google Studies the 'Silent Salesperson' in the Office|Inc.

Stacey Plaisance(訳:梅田智世/ガリレオ)

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