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【インサイト】ソフトバンクのアリババ株売却、幕開けにすぎない

ソフトバンクグループのニケシュ・アローラ副社長の願望は、潤沢な運転資本を永続的に保有する企業への移行だ。それにはもちろん、資本がなければ難しい。

  電子商取引で中国最大手アリババ・グループ・ホールディングの株式を少なくとも79億ドル(約8750億円)相当売却するとの発表はまさに、アローラ副社長が必要とする現金を積み上げるのに絶好のタイミングで行われた。

  一部投資家は今回の売却について、数々の困難をくぐり抜けるアリババの今後と結びつけて解釈するかもしれないが、実際には同社の馬雲(ジャック・マ)会長の対応よりも、ソフトバンクのアローラ副社長が直面している課題を物語っている。

  同副社長は自身が描く長期的な大ビジョンに賭けるため、ソフトバンクの現在の手元資金よりもはるかに大きな資金を必要としている。同社にとって引き続き悩みの種である米通信子会社スプリントでのトラブルを考えればなおさらだ。

Cash Is King

  現金を生み出す能力よりも速いペースで短期債務は膨らんでおり、ソフトバンクの運転資本は3年ぶり低水準に落ち込んだ。発表された金額を調達すれば、資金は3倍近い113億ドル前後に届く。

  アローラ副社長は500万ドルから5000万ドルといった小さめの投資案件には手を出したくない。むしろ、7年以上のタイムスパンで⒑億ドル単位で投資していくことに前向きだ。孫正義社長は3月の組織変更で、同副社長のビジョン実現を後押しする一歩を踏み出した。国内事業と海外事業を実質分割することで、海外を担当するアローラ副社長に、国際的な新興企業を対象にした広範な分野で存分に腕を振るう自由を与えた。

  投資で高額の小切手を切るとなれば、当然のことながら分厚い小切手帳が必要になる。アリババはソフトバンクの出資先としては最も規模が大きい会社であり、流動性が最も高い部類の企業でもある。スプリントや日本のヤフー、グルーポンやガンホー・オンライン・エンターテイメントを含め、アリババほど活用しやすい傘下・関連組織はほかにない。

  つまりこれはまた、今回のアリババ株売却の規模は比較的小さいものの、これは幕開けにすぎず、アローラ副社長が今後数回は再び同様の行動を起こすと考えるべきであることも意味する。

(このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピーの意見を反映するものではありません)

原題:SoftBank Tapping Alibaba’s Barrel Is Just the Start: Gadfly(抜粋)

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