アジアで高まる中古高級時計ブーム、専門ECサイトも増加

Photo by Astrid Stawiarz/Getty Images for Hamptons Magazine

近年、高級腕時計業界が冷え込んでいると言われる。2016年のスイスの腕時計輸出総額は、前年から約20億スイスフラン(約2280億円)減少した。

これには2016年4月、中国政府が国内消費を促すために海外から持ち込まれる高級腕時計の関税を60%に引き上げ、中国人の爆買いが大幅に減ったことが大きく影響している。アジアは高級腕時計市場の約半分を占めており、中国人消費者による売上の縮小は業界全体に打撃を与えた。

しかしこの苦境の中から、別のトレンドが成長しつつある。中古の高級腕時計ブームだ。

ミレニアル世代はヴィンテージを好む

中古腕時計のマーケットを活気づけているのは、ディーラーによる買い戻し保証制度の導入と、消費者の希少なヴィンテージ品を所有する喜びだ。特に、他とは違う逸品を好むミレニアル世代がブームを支えている。

コンサルタント会社のベイン・アンド・カンパニーが行なったミレニアル世代の消費動向調査によると、2025年までに世界の高級品消費者の45%をミレニアル世代とその下の世代が占めるという。また、アジアにおける消費が全体の53%を占めることが予想されている。

シンガポールのLifeline Medical Group創業者で、世界的に著名な時計コレクターでもあるバーナード・チョン医師は、「生産終了した時計の入手方法をコレクターが知る手段」としてインターネットが果たす役割は大きいと語る。ChronoexpertやWatchfinderといったユーザーが安心して利用できる高級腕時計の売買プラットフォームの数は増加の一途を辿り、JeweLuxeのように個々の購入者に合わせたコンシェルジュサービスを提供するECサイトも出現している。

これらのプラットフォームは、インスタグラムをはじめとするビジュアル重視のSNSと連携しており、ユーザーは常に最新入荷品の画像にアクセスすることが可能だ。つまり、SNSを週に平均6時間利用するミレニアル世代(ニールセン調査より)と相性がいい。

また、米国の老舗時計宝飾店ベターリッジでグローバル時計部門リーダーを務めるマイク・マンジョスは、特にこの10年で消費が拡大している中国とインドで、中古時計の需要が高まっているという。

「物語がある時計」に価値がある

インターネットのおかげで、ヴィンテージ腕時計は以前よりも手軽に入手できるようになった。しかし、どうすれば溢れる情報の中から本当に価値ある時計を見つけることができるのか?

マンジョスは購入者が注目すべきポイントとして、ブランドの歴史、希少性、複雑性、そして出所を挙げる。一方、チョン医師は第一に本物であること、第二に時代を象徴する時計であること、第三にプラチナか金製であることを確認すべきだと唱える。チョン医師によれば、これらの条件を満たした時計は「同額の車や宝石、家と比べて3倍から20倍は価値があるものだ」という。

「(価値の高い)時計の多くは少数生産品であるため、需要が供給を上回り、値段が高騰している」とマンジョスも語る。金のロレックスとパテック フィリップ、金製あるいはダイヤ入りのカルティエは中古でも高額で取引されることが多い。これからの時代、物語性を持つ唯一無二の高級腕時計を求める人は中古市場を探ってみるのもいいかもしれない。

編集=海田恭子

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