沖縄県民「ダンボールください」←泡盛を10倍楽しむ基本講座

ライター紹介

塩見なゆ
塩見なゆ
酒場案内人/フリーランス。作家で飲兵衛の両親に育てられた生粋のお酒好き。毎日5軒以上はハシゴ酒、年間2,000軒の酒場を飲み歩いています。Web・TV等で酒場情報を発信中。

みなさんは普段どんなお酒を飲みますか?

ビールから始まって酎ハイ、日本酒、焼酎。そういう流れが多いのではないでしょうか。

ただ、日本にはまだまだ様々なお酒があります。例えば「泡盛」。沖縄で作られる郷土のお酒として知られ、沖縄へ行ったら必ず一度は飲みますよね。でも、泡盛の飲み方や種類についてはいまいちよくわからない……。

ということで、普段から身近にあるけれど考えてみればあまり知らない「泡盛」の魅力について、泡盛マイスター藤野昌也氏に教わりたいと思います。知れば知るほど美味しくなる泡盛を一緒に勉強しましょう。

取材はもちろん泡盛を飲みながら。伺ったお店は銀座7丁目の「島どうふ」。こぢんまりとした造りで店長との距離も近く、毎夜泡盛通が通う隠れ家です。泡盛マイスター藤野氏も常連の1人。

お話を伺う人

藤野昌也
藤野昌也
北海道出身。現在は新橋の会社に勤めながら、泡盛マイスターの資格を持ち泡盛の魅力を東京から全国に発信中。現在放送中のFM那覇の「ソントキノ泡盛」にも携わっている。

北海道出身者が「泡盛」にハマったわけ

藤野さんは北海道ご出身と伺いましたが、沖縄から一番離れたエリアから泡盛にハマったきっかけを教えてください。

▲泡盛マイスターの藤野昌也氏

▲泡盛マイスターの藤野昌也氏

北海道生まれで、8年前まで札幌勤務でした。飲み歩きが好きでよくすすきのを飲み歩いていました。北海道のお酒と言えばビールとウヰスキー、ワインに日本酒、他にも紫蘇焼酎や甲類焼酎も地元のお酒で、それらを愛飲していました。

そういった意味では、お酒といえば一通り飲んできましたが、泡盛との出会いは札幌の泡盛専門バー(Aサインバー)が私を泡盛好きに目覚めさせてくれました。

そこでは古酒の品揃えが豊富で、何度か通っているうちに沖縄サミットで供されたと言われている「春雨」の古酒に巡り会い、シルキーな味わいに驚き、それからすっかり泡盛の虜です。

泡盛はロックで飲むだけのものではなく、定番のものから古酒まで飲み方は様々で、そんな奥深さも魅力です。

泡盛の奥深さ、知れば知るほどおもしろそうです。泡盛マイスターについても教えてください。

泡盛マイスターは泡盛の普及・振興のために設立された「一般社団法人 泡盛マイスター協会」が審査する沖縄県公認の資格です。筆記と実技があり、泡盛の歴史や製造法を深く知り、利き酒や客応対までこなせる泡盛のプロを育てる認証制度です。

実技では利き酒があり度数や蒸留酒の原材料を判断するものや、世界4大スピリッツ(ジン・ウォッカ・テキーラ・ラム)と泡盛を利き分けるものもあります。泡盛のテイスティングコメントを記述する問題もあり、銘柄を伏せて出された泡盛の香りや味わいといった個性、更には料理とのペアリングを表現することが求められます。

泡盛の魅力は「熟成」にあり

先程、古酒からハマったと伺いましたが、泡盛の違いについて教えてください。

1番の魅力は「熟成」ですね。泡盛は長く寝かせることで、まろやかになって熟成した古酒へと成長していきます。

また、ウイスキーやワインと異なり、泡盛の熟成には「仕次(しつぎ)」という手法で古酒を育てる概念があります。

一番古いお酒を親酒として、二番甕(にばんがめ)から親酒(一番甕)へ、三番甕から二番甕へと移していきます。こうして育てられた古酒は独特の風味を持ちます。

泡盛は貯蔵の方法にも種類があると聞きますが、どういった味の違いがでますか。

甕の貯蔵では甕そのもののミネラルが泡盛の成分の化学変化を促進させますが、他にも
樽貯蔵(ホワイトオーク、シェリー樽)というものがあります。

神村酒造の暖流はバーボンの樽で貯蔵していて、一部はジャックダニエルの樽も使われています。この樽詰は戦後のもので、ニッカウヰスキーが沖縄の工場で瓶詰めをしていた頃に、技術交流したのがきっかけと聞いています。以来ウヰスキーの樽で貯蔵した独特な風味と、米を原料とする日本人好みの甘さのある泡盛が楽しめます。

この他にも、海底貯蔵というのもあります。瓶詰めの泡盛を海底に沈めることで海の中の振動・圧力で変化を受け熟成します。引き上げた瓶には珊瑚礁がついているのでお土産としても人気です。

「泡を盛る」で泡盛、その名前の由来は?

泡盛は「泡を盛る」と書きますが、どういう由来があるのでしょう。

お酒を高い位置からこのように注ぐと泡が立ちます。

アルコールの度数を図る技術がない時代にはこのようにして泡の出方から度数を判断していたと言われます。度数が強く良質な泡盛ほど泡が保つ時間が長いです。このような習慣から泡を盛る「泡盛」と言う名前が付いたという説があります。(※諸説あります)

泡盛の歴史や定義について教えてください。

起源は琉球王朝にあり600年の歴史があると言われています。(※諸説あります)

お酒の性質的にはタイのスピリッツ「アラック」に近いので、アジアからやってきたものと思われます。蒸留技術は中国からのものとも言われていますが、歴史が長く正確な記録が残っていません。

米麹を作るのに用いられる麹菌は、黒麹菌だけを使用することが定義されています。ちなみに、九州の焼酎づくりで主に使用されている白麹は黒麹が大正時代に変異したものですね。

ですので、原料は米、黒麹による全麹仕込み(麹と水と酵母だけ)、そして単式蒸留というのが泡盛の定義です。さらに沖縄で作られたもののみが「琉球泡盛」を名乗れます。

日本酒やシェリー、ウイスキーにも古酒はありますが、自分より年齢が上(藤野氏は47歳)のお酒に出会えるのも泡盛の魅力です。

泡盛でペアリングを楽しもう

一般酒に古酒、貯蔵方法の違いなど泡盛と言っても種類豊富ですよね。飲んでいく順番やどんな料理と合うのでしょうか。

「一般酒(爽やか)→ 古酒(濃厚)」と飲んでいくのがおすすめです。一般酒は沖縄の人は水割りにして無理なく飲むことが多いです。ソーダで割ることもります。泡盛は割っても風味が残るのが特徴なので、それを活かした飲み方なんです。

また、シークアーサーの果実のヘタの部分に爪楊枝をさし、そこから数滴垂らして香りをつけるような飲み方も人気があります。

古酒の飲み比べには「山川酒造」の泡盛だと3年、5年、10年と区切られているので飲み比べがしやすく時間とともに熟成していく味わいの変化がわかると思います。

古酒を飲み比べると確かに違いが感じられますね。一般酒から順に実際に料理と合わせながら、沖縄料理をもっと楽しむ方法を教えてください。

一般酒の水割りにはやはり定番のゴーヤーチャンプルーです。

簡単そうにみえて難しいゴーヤーチャンプルーは沖縄料理店の美味しさの指標になる料理だと思いますし、これが美味しければもう安心。泡盛は定番の瑞穂を琉球ガラスで水割りに。

まずは定番の組み合わせですね。泡盛も水割りで酔いを感じずにすいすいと楽しめます。

泡盛ツウなら知ってる「ダンボール」とは?

「ダンボール」という飲み物をご存知ですか? 神村酒造の「暖流」をベースにしたハイボールをダンボール(暖流+ハイボール)といい、しかも神村酒造公認の呼び名です(笑)。

これが揚げ物全般にぴったりなんです。樽で熟成していますので、ウイスキーハイボールにも似た印象だと思います。

ダンボールというインパクトある響きですが、本当に美味しいですね。揚げ物と風味豊かで香り高い炭酸が相性抜群。これからは泡盛が揃う居酒屋にいったら、得意げに「ダンボールくださーい」と言ってみたいです!(笑)

古酒にはラフテーなどの味の濃いものがおすすめです。こちらも水で割ってください。味がしっかりしているので肉料理にも負けません。

これもまた定番の組み合わせ。沖縄料理店でペアリングを考えるときは、「一般酒でゴーヤーチャンプルー」「ラフテーのようなメインディッシュには古酒」と覚えておきたいですね。濃厚な豚の旨味に調和しつつもすっきりとさせてくれるので、箸も杯も止まりません。

度数が強い甕貯蔵の古酒は「カラカラ」という酒器に一度入れてから、お猪口に垂らすように注ぎます。

▲カラカラ

▲カラカラ

舌の上で舐めるようにちょっとずつゆっくりと。そうすると時間と共に香りが広がり豊かな味わいを楽しめます。

香ばしいナッツやキャラメルを思わせるような風味ですね。余韻もゆっくりと続き幸せな気分。豆腐ようの濃厚な旨味と発酵由来のコクに調和して、これはたまりません!

泡盛をディープに楽しむなら「泡盛部」へ

泡盛の楽しみ方のひとつとして、全国各地に沖縄県酒造組合公認の「泡盛同好会」があり、各地でイベントが開かれています。東京では、「東京泡盛会」が開催されています (次回は、2018 年 1 月 13 日に開催)。他にも、大人の部活動として「泡盛部」という集まりがあり、泡盛好き同士で毎回盛り上がります。

イベントには泡盛の女王も参加してくれます。泡盛好きの間では「泡盛の女王に謁見する」ということを楽しみにする人たちもいるんですよ。

泡盛の女王、とても気になりますね。お酒のライターとしてぜひ一度取材してみたい。いや、むしろ飲み交わしたいです!

泡盛部は、今年で10年目になり、泡盛を楽しむだけではなく沖縄情報の交換の場にもなっていて、新入部員も大歓迎なので興味がありましたらぜひ一度参加してみてください。

今日はありがとうございました!

終わりに

泡盛と一括りにしていても、種類も飲み方も多様。度数が強いのでロックで飲むことにこだわらず、水割りやソーダで割ってラフに楽しむほうが本場流。

古酒や貯蔵方法の違いからみえてくる奥行きの広さも知識欲がくすぐられ、もっと色々試してみたくなります。泡盛の蔵は46蔵だということで、ハマれば全部の蔵めぐりも夢ではなさそうです!

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