Googleが検索マーケティングを独占しているのは周知の事実だ。だがAmazonは、検索マーケティングプラットフォーム「Amazonマーケティングサービス(Amazon Marketing Services:以下、AMS)」の急成長を追い風に、Googleの牙城に挑む気だ。
Googleが検索マーケティングを独占しているのは周知の事実だ。だがAmazonは、検索マーケティングプラットフォーム「Amazonマーケティングサービス(Amazon Marketing Services:以下、AMS)」の急成長を追い風に、Googleの牙城に挑む気だ。
メディアバイヤーによれば、eコマースの巨人Amazonは、この半年でAMSを改善させた。多くのブランドは、まだAmazonでのマーケティングに関して試行錯誤の段階だが、検索広告プロダクトのパフォーマンスはすでに認められており、Amazonは広告主にAMSへのさらなる投資を促していると、エージェンシー幹部はいう。
検索広告は、世界最大の広告代理店WPPが今年、Amazon広告への大幅な増資を計画している主な理由でもある。昨年、Googleに50億ドル(約5500億円)、Facebookに20億ドル(約2200億円)を投じたWPPは、今年Amazonへの投資額を昨年の2億ドルから3億ドル(約220億円から330億円)に増やすと、同社CEOのマーティン・ソレル氏は先日CNBCのインタビューで述べた。このインタビューで、ソレル氏は「米国の商品検索の55%はAmazonからだ。これはGoogleには頭の痛い問題だろう」と述べている。
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AMSの広告フォーマット
AMSが提供する広告フォーマットは3つある。検索結果に「スポンサード」のラベル付きで表示される「スポンサードプロダクト」、検索バーのすぐ下に最初のスポンサード検索結果として表示される「ヘッドライン検索広告」、カテゴリーページまたは商品詳細ページの右側のコラムの「カートに入れる」ボタンの下に表示される「プロダクトディスプレイ広告」だ。
デジタルマーケティングエージェンシーのマークル(Merkle)が1月25日に公開したマーケティングレポートによれば、2017年の10月から12月、スポンサードプロダクト広告とヘッドライン検索広告の広告費はそれぞれ前四半期比で64%増、75%増となり、対してGoogleショッピングは37%増にとどまった。このレポートは、米国内の100以上のブランドの広告費に基づくもので、マークルはパーセンテージ以外の具体的な数値は公表していない。
「Amazonの広告売上の増加率がGoogleより高いのは、Amazonの広告フォーマットがブランドにとってまだ新しいものであるためだ」と、マークルの調査担当アソシエイトディレクター、アンディ・テイラー氏はいう。「しかし全体的には、Googleへの広告費がAmazonをはるかに上回っている」。
ブランドたちの利用傾向
ホリデーシーズンにAmazonの検索マーケティングを利用した広告により力を入れるのは、ブランドにとっては通常どおりなのかもしれない。だが、エージェンシー5社の幹部に取材したところ、彼らはAMSの広告費は全体的に増加傾向にあると述べた。
ニューヨークを拠点とする、あるエージェンシーの幹部が匿名を条件に語ったところによると、多くのブランドはAmazonを理解し信頼するのに一定の時間を要したが、2017年以降はAmazonの実績を信頼するようになったという。
「ブランドはAmazonの広告費を全体として増やしている。よそに出稿していた分を移しているわけではない」と、同幹部はいう。「(AMSの)ROAS(広告費用対効果)は概してほかの検索エンジンよりも高い。検索の時点で購買ファネルのより下層にいるためだ」。
エージェンシーの見立て
エージェンシー「アイクロッシング(iCrossing)」でオーディエンスプランニング担当責任者を務めるジェイコブ・デイビス氏は、同社のクライアントのAmazon広告費のほとんどは検索広告に使われていると語る。ただし、デイビス氏のチームは、Amazonのほかの広告プロダクトについても評価を続けている。
現在のところ、Amazonに広告出稿するブランドは、主にスポンサードプロダクト広告に注目しているようだ。前述のマークルのレポートによれば、スポンサードプロダクト広告のフォーマットはAMSの広告費全体の85%を占めており、次いでヘッドライン検索広告(11%)、プロダクトディスプレイ広告(4%)の順だ。シアトルに拠点をおく、あるエージェンシー幹部によると、クライアントは通常、Amazonでのマーケティング費用の60~75%をスポンサードプロダクト広告に使うという。
「スポンサードプロダクト広告から、キーワードに基づくターゲティングを行い、リターンを最大化できる」と、マークルのSEMマネージャー、ダニエル・ウォーラー氏はいう。「ヘッドライン検索広告には、より複雑な要素が絡む。たとえば、クリックスルー率が十分に高くなければ、Amazonはヘッドライン検索広告の表示をやめてしまう。広告パフォーマンスの観点でいえば、スポンサードプロダクト広告には厳格なルールがない」
スポンサードプロダクト広告
スポンサードプロダクト広告がクライアントの広告支出の大部分を占めるのは、わかりやすく、設定が簡単だからだという見方については、Amazon関連のコンサルティングを手がけるバイボックスエキスパーツ(Buy Box Experts)のパートナー、ジェームズ・トムソン氏も同意見だ。しかし、スポンサードプロダクト広告がこれほど広告費を集める、もうひとつの大きな理由として、サードパーティベンダーで取り扱いがあることがあげられる。あとのふたつ、ヘッドライン検索広告とプロダクトディスプレイ広告は、ふつうサードパーティでは扱っていないのだ。
「AMSは、ベンダーアカウントが必要な、ファーストパーティベンダー向けの広告プラットフォームだ。サードパーティベンダーはAMSにアクセスできない」と、トムソン氏はいう。「だが、Amazonは現在、サードパーティマーケットプレイスのベンダー向けにスポンサード広告ツールを提供していて、これはAMSのスポンサードプロダクト広告とよく似ている。ファーストパーティとサードパーティのスポンサードプロダクト広告は、利用者には同じに見えるし、広告表示の場所も同じだ」。
また、トムソン氏の考えでは、スポンサードプロダクト広告は購買ファネルの下層に位置するのに対し、ヘッドライン検索広告はブランドの認知度向上のために利用されている。スポンサードプロダクト広告がユーザーを商品の詳細ページに直接誘導するのに対し、ヘッドライン検索広告はユーザーを、そのブランドのストアページに誘導し、マーチャントが出品しているほかのプロダクトも見せる形式になっていると、トムソン氏は指摘する。「ヘッドライン検索広告のような、ファネルの上層の広告を出せるのは大企業だけだ。ヘッドライン検索広告のなかには、1クリックあたり49ドル(約5300円)もするものもある。対して、(スポンサードプロダクト広告は)クリックあたり数セントだ」と、同氏は語った。
さらに拡大するAMS
広告主がどのフォーマットへの投資を増やそうと考えているかはともかく、AMSへの広告支出の増加は続くだろう。Amazonは、通常よりもきめ細かなフォローアップを行い、成長の見込みや最適化のテクニックを強調することで、メディアバイヤーに検索広告への投資を促している。一方、エージェンシーと広告主もAmazonの利用拡大に積極的だと、アイクロッシングのデイビス氏はいう。
「ユーザーが広告表示に慣れ、Amazonが広告主にとって利用しやすいようサービスを改善ことで、広告のパフォーマンスが向上し、投資が加速した」と、デイビス氏は語った。
マインドシェア(Mindshare)のコマース部門、ショッププラス(Shop+)で北米支部を率いるジョー・ミグリオッツィ氏も、Amazonがエージェンシーへの情報提供と広告プラットフォームの改善にリソースを割くようになったと考えている。「1年前の検索広告の話をするなら、AMSは現在ほどメディアバイヤーにとって使いやすくはなかった」と、ミグリオッツィ氏はいう。
今年、AmazonはAMSをサードパーティベンダーにも開放するつもりのようだ。1月25日、Amazonの社内メディアエージェンシーであるアマゾンメディアグループ(Amazon Media Group)は、トムソン氏に以下のメッセージを送っている。「我々の今年の行動指針は、検索からディスプレー広告まで、サードパーティブランドセラーの成長にフォーカスすることだ。そうする理由はたくさんある」。
Yuyu Chen(原文 / 訳:ガリレオ)