オランダ美術「デ・ステイル」の原則から学ぶWebデザイン

Stephen Moyers

Stephen Moyers氏は、オンラインマーケティング担当者、デザイナー、先端技術などに精通したライターです。

この記事はSpeckyboy Design Magazineからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

How a 100-Year-Old Dutch Movement Can Improve Your Site Design

20世紀オランダ美術の愛好家でなければ、「デ・ステイル」のコンセプトは知らないでしょう。しかし、知らず知らずのうちに、デ・ステイルの原則をいくつも目にしているはずです。今ではデ・ステイルに親しみがある人はほとんどいませんが、このオランダ美術のコンセプトは現代のWebデザインに強い影響を与えています。

デ・ステイルはオランダ語で「スタイル」を意味し、新造形主義としても知られています。1917年にオランダで起こったこの運動は、芸術や建築、デザインに世界的な影響を与えてきました。デジタルデザインも例外ではありません。

この運動の先駆者は、1931年に亡くなったTheo Van Doesburg氏でした。ほかにも、画家のPiet Mondrian氏や建築家のGerrit Reitveld氏などの芸術家たちが運動に加わりました。

デ・ステイルは、シンプルでミニマリズム的なアプローチを支持している点で、現代のWebデザインに影響を与えました。この運動は、同時期に流行した、派手なアールデコスタイルに反発する形でも拡大していきました。

デ・ステイルは、シンプルであることを究極的に追求するデザインを提唱する活動でした。運動の支持者たちは、デ・ステイルのシンプルなデザインこそが調和と秩序の理想を表現していると考えたのです。デ・ステイルの芸術家たちが発展させた主要原則には、以下のようなものがあります。

  • 垂直方向と水平方向の視覚的なコンポジションをシンプルにすること
  • 白と黒のほかには、原色のみを用いること

現在でもデ・ステイルの原則が活用されている素晴らしい事例として、Googleのホームページがあります。次の画像の、白色の背景上に原色を使った、整ったデザインに注目してください。Googleのチームは、デ・ステイルの芸術家の誇りを胸に、このデザインを制作されたのでしょう。ミニマルなデザインですが、力強くて認識しやすく普遍的な魅力があります。

デ・ステイルはミニマリズムの重要性を強調しています。芸術スタイルとして栄えた期間は短かったですが、のちに起こるミニマリズム運動の重要な基盤を築きました。

デ・ステイルの隆盛から長い年月が経ちましたが、シンプルでミニマルなデザインは依然として流行しています。ミニマリズムは派手なデザインの手法ではありませんが、その中にはたくさんの思想が含まれているのです。ミニマリズムは、不必要なことが多い派手な詳細部分ではなく、デザインのレイアウト、コントラスト、目立つこと、清潔さを重視し、奥の深いビジュアルデザインを目指します。

ミニマリズムは、芸術や文学など、あらゆるデザインに適用されます。ミニマリストの思考法は、デザインの目的を損なわずにどれだけ「無駄」を取り除けるかを追求することです。優れたミニマリズムのデザインは、本質のみを重視し、派手な装飾ではなく配置や動き、コントラストを通して興味を引きます。

余分なものを排除して、最小限の要点に焦点を絞ることで、ユーザーフレンドリーなWebサイトやグラフィックデザインを目指すことができます。Webデザインや開発にミニマリズムを取り入れることが、直感的でわくわくするユーザー体験に自然とつながるのです。

デ・ステイルとミニマリズムの原則からは、グラフィックデザインの無駄をなくして見映えを良くするための、多くの方法を学ぶことができます。それでは、グラフィックデザインに取り入れやすいデ・ステイルの原則をいくつか紹介しましょう。

少ないほうが得るものが多い(Less is More)

雑然としたWebページは訪問者に好まれません。あまりにコンテンツが多いと、初めてWebサイトを見た訪問者が圧倒されてしまいます。このとき、訪問者はどうしたら良いのかわからないまま、混乱と苛立ちを感じてWebページを閉じてしまうことが多くあります。これを避けるために、デザインをシンプルにしつつも、有意義なものを目指しましょう。

つまり、サイトにとって重要な要素は見つけやすくして、訪問者が疑問を持たないようにしてください。

繰り返しになりますが、Googleのホームページは完璧な事例です。このサイトはGoogleのロゴと検索バーのみで構成されており整然としています。Googleのサイトに来るユーザーは、ここで何ができるのかを明確に理解しており、また検索エンジンはとても使いやすいのですぐに検索を始めることができます。

Webサイトのデザインを徹底的に削ぎ落とすことで、販売したい製品などの本当に重要なものだけにユーザーの注目を集めることができます。デザインのせいで訪問者の注意が散漫になればなるほど、製品を買ってもらえる可能性は下がってしまうでしょう。

中間色のカラーパレットを使用する

カラーパレットの選択はWebサイトデザインをする上での、もう1つの重要なポイントです。配色を派手にしすぎると、意図しない感情を訪問者に起こさせる可能性があるので、中間色で配色するのが一番です。ロゴに明るい色が含まれている場合は、ほかの配色をとてもシンプルにすると良いでしょう。

Craigslistはとてもシンプルな配色でデザインされたサイトの良い例です。CraigslistのWebサイトは、優れたデザインの事例として推奨すべきサイトではないかもしれませんが、ミニマリズムのスタイルとしては素晴らしい事例です。サイトでは、白とグレーと青をメインに数色しか使用されていません。すべてが明確にレイアウトされているので、ユーザーはサイトのどこをクリックすれば良いのかすぐにわかります。度が過ぎた配色や気を散らすようなフォントはありません。

コンテンツを「王様」にする

マーケティングには「コンテンツは王様(content is king)」という格言があります。つまり、デザインではなく、常にコンテンツに焦点が当たるWebサイトにする必要があるということです。

コンテンツは、ブランドの認知度と関与を高めるために使用できるもっとも強力なツールの1つでもあります。コンテンツを整理してシンプルにすることで、潜在顧客に伝えたいことを際立たせることができます。Webサイトのデザインは顧客に情報を提供するための手段の1つだと認識するべきで、Webサイトの中心に置くべきではありません。

色あせないデザインにする

ミニマルデザインのメリットの1つは、年月を経ても色あせないことです。デ・ステイル運動が始まったのは100年以上前ですが、現代でも、私たちはデ・ステイルがどのように関連しているのかについて話しています。

毎年更新する必要のないサイトデザインを求めているのであれば、美しいミニマリズムのデザインを追求してください。デザインについてブレインストーミングをするときには、すぐに廃れる可能性のある、あらゆるトレンドを排除するようにしましょう。これらのトレンドは、今は顧客にとって魅力的かもしれませんが、最新の流行に対応するために、継続的にサイトを更新する必要があります。

美しくする

結局のところ、毎日Webサイトと共に生活し、働かなければいけないのは、制作者であるあなたです。そのため、Webサイトを本当に評価し、美しいと自分で思えることが大切です。

もしWebサイトが美しいと思えなければ、試作段階に立ち戻ってください。Webサイトは顧客に素晴らしい体験を提供するために存在するものですが、制作者であるあなた自身がそのデザインを好きになれないのであれば、それは自身の思いを十分に反映できていないということです。

現代の消費者はとても洞察力があり、信頼する価値があるかを重視します。そのため、この原則を覚えておくことで競合から一歩抜け出すことができるでしょう。

すべてのバランスを保つ

ミニマリズムにおけるもっとも難しい要素の1つは、ページ上のすべての要素のバランスがとれていることです。デザインを観察してみて、一部分だけ不必要な表現になっていないかを確認してください。

次のデザインプロジェクトを開始する前に、この記事で取り上げたデ・ステイルの原則を念頭に置いてください。このミニマリズムのアプローチは、ユーザーフレンドリーなWebサイトを制作して、ユーザー体験を向上させるのに役立ちます。

デザインのシンプルさは、制作者の思考を反映することを覚えておきましょう。ユーザーがサイトを簡単に使いこなせるかどうかをよく確認してください。機能性より流行を重視することがないように、サイトがうまく機能しているかどうか確認し、必要に応じてデザインの見直しをしてください。


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