「Webとアプリでは明確に使い方が違う」BUYMAが実施するアプリ活用事例

 Post by MML編集部
ソーシャルショッピングサイト「BUYMA」は、2015年からアプリを開始。アプリ経由の総取扱高によるシェアは36%まで伸びてきており、現在、アプリに注力しているという。Webとアプリではどのような違いがあるのかとともに、BUYMAで行っているリテンション施策についての事例を説明した。
株式会社エニグモ 「BUYMA」ディレクター 松永 大志氏
10月26日、オプトとReproの共催で「アプリマーケティングセミナー#3 オムニチャネルにおけるアプリ活用」が開催され、エニグモの松永氏より「新規ユーザーのリテンション向上させる施策とは?」というテーマで講演された。

アプリのシェアが36%にまで拡大

BUYMAとは、世界中からファッションアイテムを購入することができるC to Cのソーシャルショッピングサイト。 購入者が注文をしてから買い付けをするため、出品者は無在庫で販売できるところが特徴である。 現在、パーソナルショッパーと呼ばれる出品者は世界中に約10万人おり、出品数は240万品以上取り揃えている。 そしてBUYMA会員は、約450万人が登録されており、平均年齢は33.1歳、男女比は、女性が75.8%、男性が24.2%となっている。 アプリダウンロード数は、前年度比182%、アプリ経由の総取扱高は前年度比179%となっており、PCとスマートフォン、アプリのシェアを見ると、36%までに拡大している。 「BUYMAは、もともとWebからスタートしたサービスです。2015年当初はアプリのシェアは数%でしたが、現在では36%まで伸びてきました」。

BUYMAが考えるWebとアプリの違い

ここまでシェアが伸びてきたアプリではあるが、はたしてWebとアプリは、どのような違いがあるのだろうか?「新規のリテンション」「全体のリテンション」「会員登録率の違い」「コンバージョン率の違い」という4つの指標について、Webとアプリでどんな違いがあるのかを比較してみたところ、各種数値においてアプリに優位性があることが分かってきた。 「アプリはwebと比較して、コンバージョン率が高くて、ユーザーの継続率も高いため、ユーザーにとってより近いメディアだというふうに思っている」と語る。 では何が違うのだろうかと考えたとき、それは2つあると思われる。 1つは、ユーザーとサービスとの接点に違いがある点。 Webの場合はGoogle検索などから自然流入するため、アプリよりも新規ユーザーが多くなる。 そしてメールやプッシュ通知の接点においても、メルマガは本文を読んでからURLをクリックするため、反応が鈍くなるのに対し、プッシュ通知はダイレクトにアプリへ遷移できることから、プッシュ通知は反応がいいことが分かった。 2つ目は、ユーザー属性に違いがある点。 アプリの方は比較的年齢層が若いので、年齢の違いによってWebとアプリの利用に違いがあると説明した。 これら2つの違いがあることによって、新規ユーザーの割合や全体のリテンション、会員登録率、コンバージョン率に違いが出ている、と考えているそうだ。

BUYMAの新規リテンション改善施策

では、新規のリテンションを改善していくために、BUYMAではどのようなことを行っているのだろうか。 今回行っている施策についての事例について語った。 まずは、新規ユーザーのファネルと属性について、BUYMAでは、いろいろと試した結果、現在はこのファネルを主に活用しているそうだ。 まずは、アプリを初回起動したユーザーは、「ほしいもの登録」と呼ばれる、気に入った商品をキープできる機能へと促していく。 そのためには、ユーザーに興味を持ってもらえそうなアイテムをレコメンドし、気になる商品をもっと見つけてもらう施策を行っている。 ほしいもの登録をしたユーザーは、一覧の中から実際に購入する商品をカートに追加するよう促していく。 カートに追加しても、買い忘れや「かご落ち」があるため、購入へ進んでいただくための訴求を行う。 具体的にファネルへ落とすため社内でユーザー属性を調査し、各ユーザーに適したプッシュ通知やアプリ内メッセージを配信している。

「プッシュ通知」と「アプリ内メッセージ」を同時併用

具体例として、プッシュ通知とアプリ内メッセージの実施方法を披露した。 初回起動したユーザーのうち、ほしいもの登録をしていないユーザーを対象に、先ほどの属性に合わせたプッシュ通知やアプリ内メッセージを配信している。 プッシュ通知とアプリ内メッセージを同時並行で実施することで、ユーザーの認知度合いが増加するため、よりユーザーが行動しやすい環境を作ることができる。 そして、プッシュ通知を許諾していないユーザーも少なくないことから、アプリ内メッセージを併用することで、許諾していないユーザーにもメッセージを伝えられるといった意味合いから、両方を実施しているという。

ABテストで開封率を改善

そのほか、3ステップからなるABテストで開封率の改善を行っている。 まずは、プッシュ通知のKPIを決めること。 アプリによっては開封率をKPIにしたり、またはコンバージョンをKPIにしたりするパターンがあると思うが、初回起動のタイミングやほしいもの登録したタイミングなど、プッシュ通知を送るタイミングによってKPIが変わるだろうとBUYMAでは考えている。 そのため、ABテストを実施して正しく判断ができるように、配信タイミングにおけるKPIを全て決めている、と松永氏は語った。 2つ目は、他のメンバーと話して仮説を決めること。 例えば、初回起動翌日のBUYMAユーザーは、日本では手に入らないアイテムがあることに価値を感じているのではないか、という仮説を設定しておく。 最後は、変数を1つに絞ること。 例えば、ダウンロード後に配信するプッシュ通知の文言を2種類作成し、先ほどの仮説は正しいのか検証を行っていく。 仮説に適合したA案の「BUYMAなら日本で手に入らないレアアイテムが見つかる!」と通常文言のB案「BUYMAなら貴方にぴったりなアイテムが見つかる!」で検証した。 この事例では、開封率はA案が115%、商品閲覧でも反応が良く、購入も1.5倍に増加したという。 「わずかな変化に見えますが、こういったことを積み重ねていくことで、最後のファネル(購入)においても大きな変化につながっていく」と説明した。

効果が高い!プッシュ許諾率の改善

プッシュの許諾についてもBUYMAの中で対応している。 「プッシュの許諾率はEC関連アプリで平均45%と言われていますが、もし仮にこれが55%へ改善されると、単純計算でプッシュ通知の効果は約120%に改善されます。 プッシュ許諾率を改善することで、日々運用しているプッシュ配信の効果を最大化することができる」と話す。 許諾を高めるための具体例として、プッシュ通知の許諾の設定ボタンを表示した場合、普段は内容を読まずに消していく人は多い。 そのため、アラートが表示する前でユーザーにプッシュ通知の許諾について説明し、そのことに許可したユーザーにだけ、アラートを表示するという手順へと変更した。 アプリの許諾アラートは、1度しか出さないものであるから、ユーザーへの伝え方とタイミングの最適化し、プッシュの許諾率を高めていくことが重要になっていくと松永氏は語った。 こういったことを続けていくことで、新規ユーザーのリテンションも大幅に改善していき、他のファネルにおいても数値が改善しているため、効果が実感できていると語った。