Amazonで販売業を行う、3社のサードパーティ(第三者)小売業者の情報筋によると、同社が偽造品対策として、プラットフォーム上のサードパーティに向けたトランスペアレンシー(透明性)プログラムを拡大中だという。これにより、小売業者の登録認証が義務化されるのではないか、という推測も出ている。
Amazonで販売業を行う、3社のサードパーティ(第三者)小売業者の情報筋によると、同社が偽造品対策として、プラットフォーム上のサードパーティに向けたトランスペアレンシー(透明性)プログラムを拡大中だという。
このプログラムは、今年3月にAmazonの自社製品およびブランドに対して試験的に開始されたものだ。そしてこのほど、Amazonのサードパーティセールス向けプラットフォームであるマーケットプレイスで、全販売者向けに運用開始した。これにより、小売業者の登録認証が義務化されるのではないか、という推測も出ている。
トランスペアレンシープログラムは、顧客向けに製品の製造日や製造場所、そして材料や原料などの詳細情報を提供するもの。青いT字型のトランスペアレンシー認証ラベルが張られた商品にはすべて固有のコードがついており、Amazonのアプリからスキャンすれば製品情報が表示される。
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これはシリアルコードや統一商品コード(UPC)のような働きをするという。ブランドはAmazonからコードを購入し、マーケットプレイスに出品するすべての製品に固有コードをつける。すべてのコードがシリアライズされ、コードのない製品はAmazonで受付拒否されるのだ。Amazonは販売者に対し、いま現在コードの付いていない製品については、早急にコード取得しなければ、Amazonから削除されるリスクがあると伝えている。
ブランドからは歓迎の声
前述の情報筋によると、Amazonは同社の巨大なマーケットプレイスで小売業を展開するサードパーティーセラーのトランスペアレンシー確保に力を注いでいるという。Amazonはマーケットプレイス上のすべての小売販売取引でマージンを得ている。このトランスペアレンシープログラムは現在オプションであり、利用料はかからないが、いずれ小売り業者は数百万というコードを取得することになり、Amazonは各社から数セントずつ徴収するようになるだろう、と情報筋は話す。Amazonはまだそのことについて言及していない。
トランスペアレンシープログラムに登録するブランドのひとつが、高性能水筒メーカーのコークシクル(Corkcircle)だ。Amazonのサードパーティーセラーである同社のパートナー、エリック・ミラー氏は、同社製品の模倣品が出回っている状況から、本プログラムの考え方を歓迎する。
「Amazonは、単なる巨大小売業者であるというコンセプトから脱却したいと考えている」と語るのは小売業者フォトン(Photon)でマーケティング担当バイスプレジデントを務めるマイケル・リバイン氏だ。「彼らは、以前、正当性という課題を抱えていた。基本的に、独自のUPCを出すことによって信頼性を保証することになる」。さらに、そのことによって、Amazonが長きにわたって望んできた、高級品という分野への扉が開くことになる、とリバイン氏はいう。高級ブランドにとって、Amazonが低価格の「店頭」である、という点だけでなく、ブランドの価値を下げる偽造品販売者も懸念材料だ。
ルイ・ヴィトンのレベルには及ばないコークシクルのような企業でも、トランスペアレンシーは歓迎すべきものであり、何かが劇的に変わるわけではないかもしれないが、「心地いいと感じられるレベルだ」とミラー氏はいう。
本施策のふたつの目標
eコマースコンサルタント会社、クウォンティファイド(Kwontified)の創設者であり、Amazonファッションの高級部門でベンダーマネジャーを務めたエレイン・クウォン氏は、トランスペアレンシーはAmazonが顧客体験、そして信頼に重点を置く活動の一環だと話している。トランスペアレンシーに登録するブランドは、自身も多くの作業が求められる。たとえば、提携する公認小売業者がプログラム登録申請しないよう注意する、といったところまで目をかけなければならない。これは、正規のリセラーがAmazonから偽造品販売者扱いされないためだ。
クォン氏によると、トランスペアレンシー制度によってふたつの目標が達成されるという。それは、「悪い」製品を排除しつつ、マーケットプレイスでの価格競争は維持する」というものだ。これは結果的に、顧客の選択肢を最大限広げるだけでなく、さらにAmazonにとって有益なことになる。しかし、ブランドをサポートするものではない。マーケットプレイス上で数々の販売者と価格競争を繰り広げることに変わりなく、セラー側は価格を下げることになるからだと、彼女はいう。
情報筋によると、Amazonで展開するバイヤーは、大規模なマーケットプレイスで偽造品を見つけて排除する、もぐらたたきゲームのような状況に悪戦苦闘しているという。
「すべて追跡できるように」
Amazonはこの具体的なプログラムについてのコメントや、その拡大を認めることはしなかった。しかし、同社の広報担当者は、「ブランド保護への投資の一環として、権利所有者のニーズに合わせた強力なツールを構築している」と語った。悪意のある人物や潜在的な偽造品を検出するために、ソフトウェアエンジニア、研究科学者、プログラム管理者、調査員からなる専属チームを立ち上げ、継続的に我々の偽造防止プログラムを運用、改善していく。もしも企業がAmazonのマーケットプレイスで製品販売登録する場合、Amazonの自動システムがその企業の情報をスキャンし、悪徳業者である兆候がないかどうか確認する。そして、悪意の販売者が製品を販売する前に、Amazonが登録の段階でそれをブロックする」。
トランスペアレンシープログラムは、企業がロゴやIPを登録できるAmazonのブランド登録プログラムとは別物だ。ブランド登録プログラムに加入すると、偽造品販売者のアカウントを取り下げることができるため、大手ブランドがAmazonで直接販売を行う大きな理由のひとつだ。スポーツブランドのナイキ(Nike)が最近このプログラムに登録したのも、同ブランドの偽造品が多数Amazonで販売されていたことが原因だ。ブランド登録プログラムに加入すれば、この問題は解消される。
「Amazonの言葉を借りれば、『我々は一歩を踏み出してプログラムを構築し、Amazonで販売されるすべての製品を追跡できるようにする』ということだ」と、リバイン氏は述べた。