Amazonが、Amazon Marketing Services(以下、AMS)のアプリケーションプログラミングインターフェイス(以下、API)のベータテストを進めている。AMSは、同社の広告事業のうち、ペイドサーチのプラットフォームなどセルフサービス広告を広く集めたサービスだ。
Amazonが、Amazon Marketing Services(以下、AMS)のアプリケーションプログラミングインターフェイス(以下、API)のベータテストを進めている。AMSは、同社の広告事業のうち、ペイドサーチのプラットフォームなどセルフサービス広告を広く集めたサービスだ。
Amazonの広報担当者によると、スポンサープロダクトのAPIは出品者向けにはすでにあったが、新たにブランド向けに別のAPIのテストを進めているという。結果として、セルフサービスでカスタマイズできるものを広告主にできるだけたくさん提供することをめざしている、とこの担当者は語った。
注目すべき展開
米DIGIDAYがインタビューしたエージェンシーのバイヤーたちによると、これは注目すべき展開だ。そのひとりは、このAPIは2017年夏から予想されていたもので、「キャンペーンの調整とレポートに組織化されたアプローチ」をもたらし、「キャンペーン実施の自動化を可能にする」ものだと語った。
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パーソナライズ企業のブルームリーチ(BloomReach)による、よく引用される推定にもとづけば、オンラインの買い物客の約55%が商品検索をAmazonで開始している。ペイドサーチは広告事業のかなりの部分を占めており、ブランドやエージェンシーが欲しがっている情報およびツールとこれを結びつけるAPIが加われば、さらに強力になる。
ある広告バイヤーは以下のように語った。「Amazonには極めて広範におよぶペイドサーチプログラムがあるが、キャンペーン制作やキャンペーンのレポート作成とモニタリングのためのツールについては、まだ基本的なものしかない。どのマーケターも、機能や追加データを欲しがっている」。
また別のバイヤーは、「(Amazonは)APIがないことがボトルネックになっていた。APIがないと、できることが大幅に少なくなる」と語った。
現在、どこがこのAPIを利用しているのかは明らかにされていないが、あるエージェンシーによると、資格は、AMSでの支出額など、複数の要因の組み合わせで決まっているという。
ゆっくりと確実に進化
Amazonは2017年の夏、Amazon Media Group(以下、AMG)のAPIを広く利用できるようにした。エージェンシーらはこのとき、AMSについても同様の展開になると予想したという。現在ベータ版のAPIは、Amazonスポンサープロダクトのほかに、キャンペーン、広告グループ、広告、キーワード、入札、予算などをブランドがプログラムで管理できるヘッドライン検索広告もカバーしている。スポンサー広告のAPIを説明しているAmazonのページには、「さらに、詳細なレポート機能によって、パフォーマンスのデータを入手し、販売と投資を分析できる」と書かれている。
ある持株会社の傘下にあるメディアバイイングのエージェンシーで幹部を務める人物によると、2017年のはじめからAMSのAPIを利用しているという。ただ、このエージェンシーが使っていたのはデータ集約とレポート機能が中心で、最適化ではなかった。Amazonは2週間前に、APIをヘッドライン検索広告に拡大した。この幹部によると、Amazonが商品ディスプレイ広告をプログラマティックに移行させているのは、「パフォーマンス駆動が進んでいない」からだ。「Amazonには要望リストがある」とこの幹部は述べる。「データを増やし、販売パフォーマンスの情報を充実させてほしい。そして、複数のキャンペーンを実施する際に統合できるようにしてほしい」。
今回の動きは、Amazonがプログラマティック広告事業を拡大させている兆しのひとつだ。提供されるものが、年間を通じて、ゆっくりとだが確実に進化している。8月下旬には、AMGのセルフサービスを進化させて公開した。AMGは、従来型の広告購入により近いAmazon内のグループで、Kindleの動画、スポンサー契約、ディスプレイ広告、さらには配送トラックの家庭外広告などを扱っている。また6月にはAdvertiser Audiencesをローンチした。これはブランドがAmazonのデータをもとにオーディエンスのセグメントを構築できるセルフサービスのオーディエンスマッチングプラットフォームで、GoogleやFacebookが提供するサービスに似ている。
ライバルとの立ち位置
APIが広告プラットフォームの規模拡大に不可欠であることは証明されている。APIによってプラットフォームは、GoogleやFacebookのようなより成熟したプラットフォームに対抗できるようになる。たとえばPinterest(ピンタレスト)は、APIの提供までに長い時間がかかり(2015年までやらなかった)、これが打撃となった。Snapchatは、2016年にAPIを公開し、ブランドやエージェンシーがようやく広告購入を大規模に行えるようになった。
AmazonのAPIはまだ広く公開されてはいない。あるバイヤーによると、Amazonは2018年の早い時期に、業界のすべてに対して開放するという。これはAmazonの広告事業にとってかなり重要な一歩になる。Amazonは巨大企業として、広告業界におけるGoogleとFacebookの複占状態を打ち破る構えだ。AMGとAMSによって、AmazonはFacebookとGoogleの両社と同じものを提供する。
問題は、Amazonのサービスはまだバックエンド側の洗練が欠けているところだ。エージェンシー幹部のあいだで、Googleがランボルギーニだとすると、Amazonは古いオートマ車だと言われているのは有名な話だ。AMGのセルフサービスやAdvertiser Audiencesのような取り組みなどの改善が進むなか、ペイドサーチのAPIが実現すれば、Amazonは一気にGoogleに引けを取らない立場になり、Googleから市場シェアを奪う好位置につくことになる。
戦略的に重要な施策
AMSはAmazonにとって戦略的に重要で、ヘッドライン検索広告しか使えないサードパーティの出品者ではなく、ファーストパーティのベンダーに開かれている。AMSでは現在、12月31日までに新たにAMSアカウントにサインアップしたブランドに、2018年1月が期限のプロモーションクレジットを提供している。
Amazonが2週間前に行った発表によると、同社は第3四半期、広告販売が大半を占める「その他」の売上(クレジットカード事業はかなり小さい)が、前年比58%増の11億2000万ドル(約1269億円)だった。
Shareen Pathak (原文 / 訳:ガリレオ)