コラム:ソフトバンク、携帯子会社の上場は「賢明な選択」
Quentin Webb
[香港 15日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ソフトバンクグループ<9984.T>が通信子会社のソフトバンクを上場させるのは、賢明な選択かもしれない。
国内携帯電話を扱う子会社を、親会社とは別に上場させることで、グループの孫正義社長は新たな資金を手にすることができる。子会社に業績改善を促し、多角経営企業が相対的に低く評価されるコングロマリット・ディスカウントの影響を低減することも可能かもしれない。
日本経済新聞は15日、孫社長が今年中に子会社ソフトバンクを東京証券取引所第1部のほか、ロンドン証券取引所にも上場させ、2兆円程度を調達する方針を固めたと報じた。
ソフトバンクグループは上場報道について、「ソフトバンクの株式上場も選択肢の一つだが、正式に進めることを決定した事実はない」とのコメントを発表した。
上場が実現すれば、向かうところ敵なしの孫社長は、さらなるテクノロジー投資を行うための資金を手中に収める。テクノロジー分野に投資する「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」で前例のない980億ドル(約10兆9000億円)の資金を集めた同社長は、すでに続編の構想を練っている。
S&Pグローバルやムーディーズがソフトバンクグループの格付けを「投資非適格」とするなか、子会社上場により孫社長は、バランス・シートにさらに負荷をかける事態を回避できるだろう。
調達資金が巧みに使われるかどうかは、また別の話だ。
孫氏の資金により、すでに他のベンチャーキャピタリストから高い評価と十分な資金を得ている大型新興企業のバリュエーションが、さらに膨らんでいるとみられる。
NTTドコモ<9437.T>、KDDI(au)<9433.T>に次いで国内携帯電話3位の地位を占めるソフトバンクは、上場によってより厳しく吟味されるだろう。孫氏肝いりの未来戦略よりも、明快でリターンの大きい携帯電話子会社に魅力を感じる投資家もいるはずだ。
実際のところ、ソフトバンクが世界最大のベンチャーキャピタルへと変貌するにつれ、同社株は電話通信分野に投資する多くの投資家のポートフォリオの中でも異色の存在となっていた。親会社の株を売って、子会社の株を買う人も出るだろう。
子会社上場により、株式のディスカウントという、ソフトバンクが長年抱える頭痛のタネも緩和されるかもしれない。ソフトバンク株価が現在より6%程度高かった昨年10月の時点で、バーンスタインのアナリストは、ビジョン・ファンドを除く事業の合計から計算される理論上の株価よりも、実際の株価が4割も割安だと推計していた。
携帯子会社の上場で、子会社単独でのバリュエーションが生まれ、子会社株に新たな需要が生まれるかもしれない。一方で、親会社は一層テクノロジーに集中できる。
だがソフトバンクは、依然としてカリスマ創業者の孫氏に大きく依存し、投資先として、ヤフー・ジャパン<4689.T>や英半導体設計ARM、日米の携帯電話会社、中国商取引大手アリババ・グループ 、ビジョン・ファンドなどを含む複雑な企業体であり続ける。
携帯子会社上場は、便利な手段ではあるが、完全な解決策とはならないだろう。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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