パスタ作りにおけるチート技「乳化」を最近知ったのでシェアします。
これで、カルボナーラ論争の的になりがちなテーゼ「牛乳か、生クリームか」が無効化され、世界が平和になります。
オイルをオイルのまま使わない
そもそも「パスタにオリーブオイルを絡める」という考え方が実は半端だったのです。
オリーブオイルは乳化させるとパスタソースに変化するのです。
乳化とは「分離しているふたつの液体をエマルションにすること」とのこと。
エマルションとは、たとえば乳液。
コスメなどでおなじみです。
水と油は混ざらないけど、ドレッシングみたいなのはわりかし混ざってくれます。
そういうことです。
混ざらないはずの水と油をいい感じで混合するときに作用している物質が「乳化剤」と呼ばれる成分。
パスタの茹で汁には小麦のたんぱく質が溶け出ていて、これが乳化を進めるっちゅーわけです。
【実験】乳化とは
左が水、右がパスタの茹で汁です。
各々にオリーブオイルを浮かべております。
シェイクしてみましょう。
水と油だけの方は、まさに水と油の関係。
シェイク直後は油が散らばっていますが、時間経過とともに再び分離してしまいます。
しかし、茹で汁と油の方は、シェイクすると油が分散して、とろっとした状態のままになります。
これが乳化です。
茹で汁と油がエマルションになるのです。
調理過程でオリーブオイルや肉の脂を乳化させ、パスタソースに変化させる。
これでパスタが劇的においしくなるという寸法です。
【調理】牛乳も生クリームも使わない乳化カルボナーラ
材料(1人前)
- パスタ 1束
- 塩 大さじ1.5(ていうか2%の塩水で茹でる)
- 粉チーズ 50g
- 卵 1個
- パンチェッタ(ベーコンでも可) 適量
- オリーブオイル お気持ち程度
- 黒胡椒 少々
まずパスタを茹でるお湯を沸かし始めてスタートです。
塩は入れておきます。
2%の塩水が目安です。
そしたら次に、溶いた卵と粉チーズをガバーと混ぜ合わせます。
こだわる方はパルミジャーノ・レッジャーノやペコリーノ・ロマーノを使ってもいいのですが、今回は簡単にお安く自作することを考えて、いわゆる粉チーズでいきます。
ワシワシと混ぜます。
まだ粒やダマがありますね。
これ覚えといてください。
パスタを茹でるお湯を利用して湯煎しながらかき回すことで、卵と粉チーズがとろっと混ざり、ダマが消えてカスタード状になります。
ここ大事。
湯煎することを考えて、ボウルはステンレスのものをおすすめします。
パスタを茹で始めます。
余談ですが、麺ものを茹でる際に、私は底面積の広い炒め鍋を愛用
パスタを茹でている間に、パンチェッタを炒めます。
油を出すのが目的なので火力弱めでいきます。
燻製の風味が気にならない人はベーコンを使ってもかまいません。
塩漬けした豚肉がパンチェッタ。
パンチェッタを燻製にしたものがベーコンです。
さらにこだわる方はグアンチャーレを使ってもよいでしょう。
って、どこに売ってんすかね。
パンチェッタの油が出てきました。
オリーブオイルを足してもかまいません。
パスタの茹で汁をこんくらい持ってきて。
シャカシャカかき混ぜると油と茹で汁が乳化します。
ちょっとしたスープのようになりました。
これがパスタソースとして働くのです。
茹で汁とパンチェッタの塩味で味付けするので、これ以上の調味料はいらんのです。
茹で上がったパスタは、ザルで水を切ったりせずに引き上げてその
このとき火は止めてください。
水を切らない理由は、ほれ、おいしさが濃縮されたエマルションを作るためです。
パスタとパンチェッタを混ぜる過程で、茹で汁と油が自動的に乳化されてるのです。
そしたらカスタード状にしておいた卵と粉チーズのソースを追加してよく絡めまして。
黒胡椒を思いっきりガリガリして完成です。
こーれーがー、うまい!
こだわるポイントを見誤っていた可能性がある
油の乳化と粉チーズたっぷりメソッドでこしらえたカルボナーラは、いままで牛乳を使って作っていたカルボナーラとは格が違います。
はっきりいって、牛乳を使う理由がわからないです。
乳製品のコクがすごいのは、牛乳や生クリームなどの水っぽいミルキー素材を使ってないからだと思います。
乳化されたパスタソースにはパンチェッタのダシが効いており、卵と粉チーズがカスタード状になった濃厚チーズソースがミチっと絡んで、完璧な仕上がりです。
マズくなることをひとつもしていないので、必ずおいしい。
これに比べたら、私がいままで卵と牛乳で作ってたカルボナーラなんか「釜玉スパゲティ」です。
こだわるポイントを完全に見誤っていたのです。
レシピ誤訳による「イタリアン魔改造」が起こった可能性
この作り方は「ローマ風カルボナーラ」と呼ばれたりもしています。
牛乳や生クリームに頼っていたら、こんなにおいしいカルボナーラは作れません。
……思うに。
トマトソースではなくケチャップを使った結果、ナポリタンができあがったように、カルボナーラでも「レシピ誤訳によるイタリアン魔改造」が起こったのではないでしょうか。
「ビーフシチューを作ろうとして肉じゃがが生まれた」的な珍ローカライズがあったのではないでしょうか。
「風味の付いたオイルをパスタに絡める」のではなく「オイルを乳化させてドレッシングのようなパスタソースに物性変化させる」はずだったのではないでしょうか。
「卵黄と生クリームでクリーミーなソースを作る」のではなく「卵と粉チーズを温めながら混ぜてカスタード状にする」はずだったのではないでしょうか。
このように、あまりのうま味ショックによって歴史的な発見をしたかのようなイカれた興奮も味わえます。
ぜひ乳化カルボナーラをお試しください。