やじうまの杜

「Office」からいきなり「数式エディター」が消えて阿鼻叫喚? どうしてこうなった

内蔵の新しい数式機能か試用版「MathType」で代替できる

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公式ブログ“Office Support Team Blog JAPAN”

 「Microsoft Office」の「数式エディター」がいつのまにかなくなって数式の編集ができない……週末、“Twitter”で話題になったこの問題に対し、昨日15日、日本マイクロソフトの「Office」サポートチームが“数式エディター 3.0 の機能削除について”という記事を公式ブログに公開しました。

 それによると、「Microsoft Office」に搭載されていた「数式エディター 3.0」はサードパーティ製のツール(「MathType」という製品の旧バージョンの機能制限版)で、「Office 2007」より古いバージョンで作成されたドキュメントを編集しなければならない場合のために搭載されていたのだそうです(サポートサイトの情報も参照のこと)。

 しかし、昨年末には「数式エディター」の脆弱性を突いたマルウェアが蔓延(参考記事)。月例のセキュリティアップデートによる対策も行われたようですが、「数式エディター」はサードパーティ製コンポーネントであるためMicrosoftによる修正が難しく、また「Microsoft Office」のセキュリティ機能による保護の範囲外でもあります。「EMET」や「Windows Defender Exploit Guard」といった脆弱性の緩和策ツールでも守ることができないそうで、これから先、似たような脆弱性の存在が明らかになったとき、Microsoft側での対処が難しいのが実情でした。そこへ別の脆弱性の存在が明らかになった(CVE-2018-0798 )ことから、とうとう削除されることになった――ということのようです。

 そもそも、この機能は古い「Microsoft Office」との互換性維持のために残されていた機能で、最近の「Microsoft Office」には代わりとなる数式編集機能が搭載されています。十分な移行期間も取られており、「数式エディター」を削除しても大きな影響はないと判断されたのでしょう。告知が不十分だった印象は否めませんが、個人的には妥当な措置かなと感じます。

 今回の措置は、互換性のためだけに残された古い機能を使い続けることのリスクを浮き彫りにしました。慣れた方法を使い続けたいという気持ちはわからないではないですが、新しい方法が生まれるのはそれなりの理由があってのこと。古い機能に固執せず、新しい機能を使いこなす気概も忘れないようにしたいものです。一方で、自分が今利用している機能が古い、非推奨の機能であることが十分に知らされていない点は問題ではないかと感じました。非推奨機能にはそれを示すマークを施すといった対応が必要なのではないでしょうか。

今年1月の月例セキュリティアップデートを適用すると、「Office」で「数式エディター」が使えなくなる

 なお、「数式エディター」が削除されるのは2018年1月9日(米国時間)配布のセキュリティ更新プログラムを適用した環境で、「Office 2007」「Office 2010」「Office 2013」「Office 2016」が対象となります。「数式エディター」が削除されてしまった環境でも、「MathType」の試用版をインストールすれば古い数式の編集ができるそうです。

「Office 2016」(最新版)の数式ツールでは「LaTeX」風の書式が利用可能

 また、「Office 2016」の数式機能には「LaTeX」風の書式で数式を編集する機能も追加されています。今回の措置で「LaTeX」への移行を訴える声も多く聞かれましたが、いきなり「LaTeX」に切り替えるのは正直なところ非現実的だと思いますので、まずはこの機能から始めてみてはいかがでしょうか。

お詫びと訂正: 記事初出時、“LaTeX”の表記に誤りがございました。お詫びして訂正いたします。