ネット通販でも大手 ウォルマートがAIでアマゾン対抗
知恵と適切な手段があれば、年老いても新しいことができる――。米アマゾン・ドット・コムなどの大手ネット通販よりも約1世代前の1962年に創業した米ウォルマート・ストアーズは、世界28カ国に1万1700店舗を展開し、週単位で1億4000万人の顧客を抱える。実はネット通販の大手でもある。
機械学習で宅配経路を効率化
このため、ウォルマートはネット通販事業と世界に張り巡らされた店舗網との間に橋をかけられる唯一の立場にある。つまり、長年築き上げてきた強みを生かす形で機械学習を展開すれば、ネット上の体験と実店舗での買い物を融合した「デジタル関係」を築けるというわけだ。
ウォルマートラボの顧客体験工学部門バイスプレジデント、ローラン・ドセギュール氏はベンチャービート主催の「モバイルビート2017」で講演し、デジタル関係を築く上で重要なのは、安値を提示すること、リスク管理、顧客が探している商品を見つけやすくするだけでなく、このプロセスをできる限り便利にできることだと語った。
ドセギュール氏は「要するに、当社は機械学習により買い物体験を強化できる場所に橋を築いている」と説明。「これこそが『デジタル関係』だ。顧客のネット上での行動と実店舗での行動をシームレスにしたい」と述べた。
買い物客は現在、いくつかの購入方法を選べる。従来のように店舗で購入もできるし、ウォルマートの従業員が帰宅途中に配達してくれるサービスを使って自宅で受け取ることもできる。このサービスは機械学習を使い、宅配経路を効率化している。または、ネットで注文して店頭で受け取れば、レジ待ちの行列を避けられる。
機械学習を使えば顧客のデータから嗜好を引き出し、顧客が欲しがりそうな商品を予測しておススメするカスタマイズ化を改善できる。レジでの行列を解消し、支払いのスピードを速めることも可能だ。ドセギュール氏は「レジ待ち問題がうまくいっていないことは、ロケット科学者でなくても分かる」と断言。「現在開発中の機械学習によるテクノロジーを使えば、未来の店舗をつくり出すことができる」と期待を示した。
ウォルマートの2017年2~4月期のネット販売売上高は前年同期比63%増えた。既存事業の運営改善に加え、アマゾンのライバルであるネット通販のジェット・ドット・コムを昨年夏に買収したのが奏功し、ネット販売が大きく伸びた。くしくもアマゾンが米高級スーパーのホールフーズ・マーケットに買収を提示した日に、ウォルマートは男性向け衣料品ネット販売のボノボスを3億1000万ドルで買収した。ジェット・ドット・コムとボノボスの買収は、ウォルマートがネット事業の拡大に向け、着々と布石を打っていることを示している。
By Kevin Kelleher
(最新テクノロジーを扱う米国のオンラインメディア「ベンチャービート」から転載)