今週のトピックはアリババグループが東南アジアECのラザダ・グループに10億ドル(約1120億円)を追加投資し、保有株比率を83%に引き上げると発表したことだ。アリババはほかのほとんどの株主の保有株を買い取ると説明。アリババ以外の株主は経営陣とシンガポール国営企業テマセクになる。
今週のトピックはアリババグループが東南アジアECのラザダ・グループに10億ドル(約1120億円)を追加投資し、保有株比率を83%に引き上げると発表したことだ。アリババはほかのほとんどの株主の保有株を買い取ると説明。アリババ以外の株主は経営陣とシンガポール国営企業テマセクになる。
Amazonは中東、インドでアリババに大きく先行している。3月には中東EC大手ソーク(Souq)を6億5000万ドル(約720億円)で買収。インドでもグロースに重きを置くAmazon定番の戦略を敷いて、現地2強に対して優勢を築いた。資金繰りが悪化した2強は孫正義氏らの仲介で合併せざるを得ない事態に陥った。アリババはペイティエム(Paytm)への出資でインドのモバイル決済で存在感を示すが、eコマースは立ち遅れた。
そのAmazonが米国内でホールフーズ買収に137億ドル(約1兆5000億円)のキャッシュを使い切る見通し。アリババとしてはアジアの最後のピースである東南アジアだけはAmazonに渡したいくないと考え、10億ドル積み増したふうに見える。
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昨年頃からAmazonがシンガポールベースで東南アジアに進出すると噂されていた。ラザダは先月、Netflix、Uberと提携し月額28シンガポールドル(約2200円)で3者のサービスを使えるパッケージを提供開始。アリババはAmazon Prime会員を模したサービスで先行者利益を作りにかかっている。
アリババ、テンセント、ソフトバンクのトライアングル
東南アジアには明快な統計が少なく、EC市場の状況を正確に理解するのは難しい。ただし、ラザダには2社強力なライバルがいることは確かだ。背後にはテンセント、孫正義氏などがいてアリババを含めた東南アジアのネットビジネスの有力者が絡み合っている状況だ。
ひとつが東南アジア最大のゲーム企業ガレナが運営する「ショッピー」。モバイルへの最適化が一番進んでいると言われる。総流通額(GMV)は30億ドル(約3600億円)でラザダの昨年の13億ドル(約1400億円)をしのいでいるようだ。アリババのライバルであるテンセントと孫泰蔵氏のファンドなどが出資者。
もう1社がソフトバンクが出資する「トコペディア」だ。トコペディアもテンセントと出資交渉を進めていると言われ、今回のアリババの10億ドル積み増しはかなり影響しそうだ。
- 東南アジアの人々は金融機関を経験せず、モバイル決済・モバイルバンキングを開始する傾向があり、デジタルコマースにフィットしやすい
- 東南アジアのインターネット経済は2025年に2000億ドルに達する。そのうち900億ドルがEC(Google・テマセクレポート)
2015年から2025年で6.5倍になる東南アジアのインターネット経済。特にECは年平均成長率32%と急激に伸びる via Google&Temasek
- 地域別ではインドネシアが52%のシェアになる。EC事業者の主戦場は島の数が1万3000、物流インフラが発展途上のインドネシアになる
- 独ロケットインターネットが開拓した土壌にアリババ、テンセント、ソフトバンクが多額投資しており、Amazonの参入機会は縮小している
以下、今週のその他のトピック。
▼Facebook、米国で来季欧州CLをライブ配信へ
フォックス・スポーツが製作する画像およびコンテンツを使用。米大リーグ(MLB)とレギュラーシーズン20試合をストリーミングするなどスポーツコンテンツを拡充している。
▼NBCが英プレミアリーグをストリーミングへ
ライブとオンデマンドの両方で視聴可能。130試合。同社提供のインターネットテレビ加入者向け。
▼FacebookのMAU、20億超え
マーク・ザッカーバーグ氏がFacebook投稿で明らかにした。新興国での伸びが著しい。
▼WPPがAmazonをプッシュ
WPP系エージェンシー2社がAmazonのマーケティングソリューションを顧客に推奨。WPP CEOマーティン・ソレル氏からもAmazonがデュオポリーを崩すデジタル広告の第三極だとするコメントが頻出している。
▼Amazonの広告費増大
ほかの小売業者が出し渋るなか、広告費を膨張させるAmazon。昨年は米国内で26億ドル(約3000億円)。
▼日本マクドナルド、「UberEATS」を導入。
6月29日より東京都内33店舗で導入を開始。
▼AIレースはGoogle、マイクロソフト、IBM
MITテックレビューの論文数などの調査によると、3社がトップランナー。国別では米中が圧倒的。日本は三番手集団に残っている。
Written by 吉田拓史
Photo by UNclimatechange(CreativeCommons)