「Flash終了」までの20年とはなんだったのか? ネット文化からアニメへ至るFlashの歴史を振り返る(1/3 ページ)

「おもしろフラッシュ倉庫」とかいろいろあったなぁ(遠い目)。

» 2017年08月01日 11時00分 公開
[真狩祐志ねとらぼ]

 7月26日、米Adobe Systemsが「Flashの開発と提供を2020年で終了する」というアナウンスをしました。1996年に誕生して以来、デジタルコンテンツの世界で強い存在感を示してきたFlashが終了するというニュースは、各方面で大きな話題となりました。

Adobeブログ「Flash とインタラクティブコンテンツの未来」より。Flashのサポート終了についてアナウンスしている

 ただし、一口に「Flash」と言っても、その意味するものはさまざまです。例えばアプリ開発ソフトとしてのFlash、画像や音声を使ったWebコンテンツとしてのFlash、そしてアニメ制作現場で用いられるFlashなど。それぞれの世界にそれぞれのFlashがあり、かつそれらが複合的に絡み合って発展してきたために、これまでその歴史が横断的に語られることはありませんでした。

 この記事では、主に「ネット文化」「アニメ制作」の観点を中心に、Flash誕生からの20年余りを振り返ってみたいと思います。

ブロードバンド前夜の「Flash黄金時代」はswfが大人気

 まずは「ネット文化におけるFlash」から。Flashに一番活気があった時期は2000年代前半です。ブロードバンドが普及する前だったので、比較的小さなデータ量で、豊かな表現ができる「swf」(Flashのコンテンツ形式の1つ)が重宝されていました。このswfは動画としてだけでなく、ゲームやサイトなどのインタラクティブ要素にも活用できます。

 2000年代前半は、ネット文化の観点では「Flash黄金時代」と呼ばれていた時期ですが、このFlash黄金時代におけるFlashも、実質上swfを意味することになります。もちろん、閲覧するにはFlash Playerが必要です。

 特に大規模掲示板「2ちゃんねる」では時事ネタやパロディー、MADや二次創作に該当する作品が多く制作されました。2002年に設立された「FLASH・動画板」では、「紅白FLASH合戦」「FLASH★BOMB」といったイベントなどでも大きな盛り上がりを見せました。

 それらに伴い、作品を紹介するサイトも人気を集めました。当時は「イイ・アクセス」「かーずSP」「ホタテプロダクツ」が“御三家”とされていましたが、多くの人の印象に残っているのは、類似の名称で複数存在した「おもしろフラッシュ倉庫」でしょう。

 おもしろフラッシュ倉庫の人気ぶりは、「Yahoo! JAPAN」の検索ワードランキングにも反映されていました。その年の検索ワードを積算し、上位50位を掲載したランキングに、2004年から2007年までランクインしていたのです。

Yahoo! JAPAN 検索ワードランキング(2004年)」より。フラッシュ倉庫が13位、おもしろフラッシュが40位に初登場。2006年からは両者合算となった

 現在でもその名残はWeb上の各所に見られ、今回のアナウンスを受けて登場したTwitterのハッシュタグ「#まだ生きてる歴史的Flashページを紹介する」でも、swfのアニメやサイトなどをたどれます。

 その一方で、例えば2016年にメジャーデビューした3ピースバンド「ヤバイTシャツ屋さん」のMV紹介ページには「おもしろフラッシュ倉庫」の名前があります。メンバーのこやまたくや氏は、岡崎体育氏のMV制作を担当する「寿司くん」としても知られ、当時のネット文化からの影響を感じさせます。

ヤバイTシャツ屋さん」より。このMV紹介ページ名は当時ハマっていたことの証

2ちゃんねるにおける混乱とYouTubeの台頭

 しかし、記事冒頭で述べたように、Flashの意味するものはさまざまで、swfコンテンツである「おもしろフラッシュ」と、「Web制作におけるFlash」では大きく性質が異なります。同じ2ちゃんねるの中でも、「web制作管理板」でFlashの話をしようとすると、“板違い”とされて「FLASH・動画板」で議論をするように誘導されるなど、「異なるFlashにまつわる混乱」が既に見て取れます。

web制作管理板」より。「Flash制作」が“板違い”といわれても……

 さらに「FLASH・動画板」では、swf以外の動画形式が“板違い”の状況になりました。2ちゃんねる開設者であるひろゆき(西村博之)氏は、動画スレッドが各板に散らばっていることから、2006年に「動画閲覧版」の新設を提案し、結局は先に存在していた「ストリーミング板」の名称が「YouTube板」に変更されるという形に落ち着きました。「YouTube」は2008年から先述の検索ワードランキングの1位を独走しますので、その需要は言わずもがなです。

 ブロードバンド化が進む中、2005年にYouTubeが誕生して以降、「ニコニコ動画」などの動画サイトが続々登場。一時の熱狂的なFlash黄金時代は終わりましたが、それらの動画サイトでも、閲覧にFlash Playerを必要とする「閲覧環境としてのFlash」が圧倒的に支持されたため、やはりFlashの時代が続くように見えました。しかし、2007年にAppleが「iPhone」を発売したことで、早くも時代は次へと移っていきます。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/25/news016.jpg 「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
  2. /nl/articles/2404/23/news090.jpg 誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
  3. /nl/articles/2404/21/news011.jpg 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  4. /nl/articles/2404/25/news043.jpg 娘の給食の献立表を見たら…… 正体不明の“謎の料理名”が「これはわからんw」と話題に その意外な正体に納得!
  5. /nl/articles/2404/25/news129.jpg プロ野球チップスでまた“不良品”流出 伊藤大海「176m」表記に続き…… カルビー謝罪「深くお詫び」
  6. /nl/articles/2404/24/news018.jpg 1年半ケージに引きこもっていたシャーシャー猫が、ある夜布団に入ってきて…… 感涙の行動に「まるで別猫」「こんな日が来るなんて」
  7. /nl/articles/2404/24/news017.jpg メルカリで300円の紙モノセットを買ってみたら…… 出品者のあたたかな心遣いに「利益は考えていないんでしょうね」「見ててわくわくします」
  8. /nl/articles/2404/23/news185.jpg 子どもに高級キーボードのパーツを捨てられた → 公式の“先読みしすぎた対応”が話題「そういうこともあろうかと」
  9. /nl/articles/2401/18/news015.jpg 巨大深海魚のぶっとい毒針に刺され5時間後、体がとんでもないことに…… 衝撃の経過報告に「死なないで」
  10. /nl/articles/2404/22/news124.jpg ダイソー「マルチ万能ほうき」が家事ラクの救世主 名前負け知らずの便利さに「これやばっ!!」「220円に驚き」の声
先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「妹が入学式に着るワンピース作ってみた!」 こだわり満載のクラシカルな一着に「すごすぎて意味わからない」「涙が出ました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」