東京でライターをしている榎並紀行と申します。
みなさんにとって「おふくろの味」といえば何だろうか? ちなみに、僕のそれは「じゃがいもを細く切って炒めたやつ」だ。こういうのである。
▲ちょっと芯が残るくらいの炒め加減が好み
おふくろの味、というにはシンプルすぎるかもしれない。母の名誉のために言っておくと、もっと手の込んだ料理もたくさん作ってくれた(「ビーフストロガノフ」とか)。なので、母的にはそれを代表料理みたいに吹聴されるのは不服だろう。
しかし、僕はなぜか幼少期からこれにドハマりし、度々「じゃがいもを細く切って炒めたやつ作ってー」と母にせがんでいた。なお、こいつには正式な料理名がついていなかった。「じゃがいもを細く切って炒めたやつ」としか表現のしようがないからだ。
▲ブルドックの中濃ソースを、どばーっとかけて食べます
そんな「じゃがいもを~」によってすくすく成長。社会人となり、いつしか一人暮らしを始めた僕だが、外食中心の生活になって「あること」に気づいた。
それは、「じゃがいもを細く切って炒めたやつ」を置いている飲食店が意外に少ないこと。
僕のなかでは「ハンバーグ」や「豚の生姜焼き」などと並ぶくらいスタンダードかつ心躍るメニューなのだが、生姜焼き定食はあっても「じゃがいもを細く切って炒めたやつ定食」をやっている店はほとんどない。突如訪れた「じゃがロス」に、社会の厳しさを痛感したものである。
ここから本題です
ところが、つい1年前、とある中華料理屋でようやく出会えたのだ。最高の「じゃがいもを細く切って炒めたやつ」に。
▲これです! これぞ「じゃがいもを細く切って炒めたやつ」
それは、「天鴻餃子房(てんこうぎょうざぼう)水道橋店」のジャガイモと豚肉炒め(720円)だ。
前置きが長くなったが、今回はこの「天鴻餃子房 水道橋店のジャガイモと豚肉炒め」が最高すぎる! という話をしたいと思う。
▲ご飯セットをつけて定食にするのもいいし
▲レモンサワー(400円)を合わせるのもいい
ねっとり濃厚なのです
「天鴻餃子房 水道橋店」のジャガイモと豚肉炒めは、実家のそれよりもだいぶ手間がかかっている。当たり前だが。
ポイントは3つある。まず、じゃがいもを炒める前に油で揚げてあること。
▲フライドポテトのような食感でおいしいのです
次に、じゃがいもがねっとりと舌にからみつくのだ。聞けばじゃがいもは処理後しばらく放置するとでんぷんが失われてしまうため、ここでは注文を受けてから皮をむくという。これが2つめのポイント。そんな少しの手順の違いが、このねっとりまったりした味わいを生み出している。料理って奥が深いネー。
そして、3つめのポイントはタレ。ご飯との相性を考え、麻婆豆腐のタレを使用している。ゆえに濃厚だ。ご飯はもちろん、酒も進む進む。
▲そらうまいはずですわ
そのうまさを、後輩ライターの小野くんに顔で表現してもらった。
▲・・・うまー
▲ふだんは何を食わせてもこんな顔しかしないので、上の写真の感動っぷりが分かってもらえると思う
「特製辛子にんにく味噌」で味変しよう
さて、そんなこんなで半分くらい食べ進めたら、味変アイテム「特製辛子にんにく味噌」を投入しよう。
▲「特製辛子にんにく味噌」。醤油や酢などと一緒に卓上に置いてあり、タダで使い放題
「天鴻餃子房 水道橋店」はラー油も自家製なのだが、こちらはラー油を作るときに出る唐辛子などの沈殿物をにんにくで炒め、味噌を和えたもの。こいつがまた絶品なのだ。店主いわく「あまりにも減りが早いのでスプーンを小さくした」とのこと。何にでも合うので、みんなつい使い過ぎてしまうのだろう。かくいう僕こそ、毎回ひと瓶丸ごと消費してしまう使い過ぎの張本人なのだが。
▲なんせ、じゃがいもはもちろん
▲餃子にのせても抜群なのです
「食べるラー油ブームの前に世に出していれば、金持ちになれたはず」と店主が悔やむのも頷ける。食べラーブームに乗ることはなかった筆者だが、これがスーパーに売ってたら間違いなく買い占めることだろう。
▲最後はオンザライスでシメましょう
ちなみに、ここはジャガイモと豚肉炒め以外のメニューもうまい。なかでも、個人的には豆腐を一丁丸ごと豪快に使用した肉みそ豆腐(540円)を推したい。
▲ジャージャー麺のあんがたっぷりかかっているのだ。「合わせ」のセンスがいいですよね
もちろん餃子もうまい、そして楽しい
あとは、「天鴻餃子房」というだけあって、もちろん看板の餃子もオススメ。スタンダードな野菜餃子、黒豚餃子以外に「おろしそ餃子(大根おろしとしそ)」「ぱりぱり餃子」「海老にら餃子」「ねぎ味噌餃子」「スープ水餃子」「えび揚げ餃子」と、餃子のバリエーション自体も豊富で楽しいのだが、それに加えてメニューには「たれのアレンジ」についての指南もあって、餃子のさまざまな可能性をぐいぐいと提示してくる。「これもおいしいよ」、「こんなのはどうだい?」と。
▲なんというか「楽しませてやろう感」がスゴイ!
▲こちらがおすすめのタレ3種。スタンダードな「醤油+お酢+ラー油」(写真奥)のほか、「お酢+辛子にんにく味噌」(手前左)、「お酢+黒コショウ(たっぷり)」(手前右)
▲店長さんみずから調合してくださいました
▲そりゃ小野もアヒル口になるわ、といううまさ
そんな「天鴻餃子房(てんこうぎょうざぼう)」はここ水道橋店をはじめ、都内に12の系列店があるとのこと。お父さんから看板を受け継いだ三兄弟がそれぞれの店舗を持ち、さらにその弟子たちにどしどし暖簾を分けていったそうだ。
なお、餃子のタネや全ての料理のベースとなるたれなどは、ここ水道橋店を預かる次男が作っているのだとか。つまり、「天鴻餃子房」の屋台骨だ。同じ次男として、とても誇らしい。
▲次男の弘樹さん
店舗によってメニューは微妙に違うらしいが、ジャガイモと豚肉は人気メニューなので「どの店にもあると思います、たぶん」とのこと。同じ看板を掲げているが、フランチャイズというわけではないので、そのへんはあやふやなようだ。というわけで、お近くの「天鴻餃子房」にも(たぶん)あるはずなので、ぜひ食べてみてほしい(なくても怒らないでほしい)。
▲この看板が目印
紹介したお店
店名:天鴻餃子房 水道橋店
住所:03-3263-0149
TEL:東京都千代田区三崎町2-4-6 千代田第一ビル2F
プロフィール
榎並紀行(やじろべえ)
1980年生まれ埼玉育ち。東京の「やじろべえ」という会社で編集者、ライターをしています。ニューヨーク出身という冗談みたいな経歴の持ち主ですが、英語は全く話せません。
> ツイッター: Twitter (@noriyukienami)
>ホームページ:やじろべえ