ヤマト、中国に低温物流網 ネット通販大手・京東と提携
【北京=多部田俊輔】ヤマトホールディングス(HD)と中国インターネット通販大手の京東集団(JDドットコム)は11日、提携拡大で基本合意したと発表した。生鮮食品を冷やしたまま運ぶヤマトのノウハウと京東の物流網を組み合わせ、中国で初めて全国をカバーする低温物流網を構築する。中国をはじめアジアで拡大するネット通販の需要を共同で取り込む。
北京の京東本社で基本意向書を締結した。両社は昨年5月に中国向けの越境EC(電子商取引)事業を共同で開始。順調なことから、包括的な提携に踏み切る。
具体的な提携内容は9月までに固める。まず、ヤマトHDが低温物流のノウハウを京東に提供することを検討する。具体的には京東の物流センターや配送車両などで冷蔵や冷凍の温度を一定に保つ方法を伝授する。導入コストと効果を検証しながら、18年に一部都市で物流網の構築を目指す。
中国では刺し身や低農薬野菜などの人気が高まっている。ヤマトの国際保冷輸送は上海や香港といった一部都市に限られていた。京東との提携で中国向けの輸送量を飛躍的に増やせるとみる。
低温輸送以外でも共同事業を目指す。京東の利用者が海外とモノを送ったり受け取ったりする際にヤマトHDの海外物流網を活用する。将来は日中間の宅配便も視野に入れるとみられる。京東が海外進出した場合はヤマトの物流網を使って中国国外の利用者に届けることも想定される。
京東の劉強東・最高経営責任者(CEO)は同日、日本経済新聞の取材に応じ「ヤマトとの提携拡大で海外事業の強化を加速できる」と話した。
ヤマトHDは日本の宅配便市場でシェア約5割を占める最大手だが、連結売上高に占める海外比率は約2%と出遅れが目立つ。人手不足に伴うコスト増で国内の宅配便事業の収支が悪化するなか、海外企業のM&A(合併・買収)などで海外に活路を探っている。
アジアではネット通販の拡大が見込まれるが、配送インフラが未整備で荷物の遅配や紛失などの問題も起きている。ヤマトが日本で提供する配達の時間帯指定や保冷輸送といったサービスは海外では珍しい。日本で培ったノウハウを海外に移管し事業基盤を固める。
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