独自の小売り帝国を築き続けるAmazonが、バイオレットグレイ(Violet Grey)との提携を検討中だと報じられている。取り扱うビューティー製品を拡充することと、エディトリアルの視点を発展させること、その両方を狙っての取り組みだ。
独自の小売り帝国を築き続けるAmazonが、化粧品のラグジュアリーECサイトバイオレットグレイ(Violet Grey)との提携を検討中だと報じられている。取り扱うビューティー製品を拡充することと、エディトリアルの視点を発展させること、その両方を狙っての取り組みだ。
バイオレットグレイは、ビューティー製品を幅広く扱うeコマースサイトとして機能する一方で、何よりも「エディトリアルへの取り組みを優先」すると断言している。バイオレットグレイは最初から、エディターによる製品レビューや、美容に関する日課やトレンドの特集記事を発行しており、最近では、モデルのロージー・ハンティントン・ホワイトリーや女優のジャニュアリー・ジョーンズに関する記事も出している。こうした記事で取り上げられた製品には、サイト全体で「バイオレットコード(Violet Code)」というマークが付けられる。これは、アリューア(Allure)が記事内で編集者がテストした製品を保証し、その購入方法を一緒に紹介するやり方と似ている。
Amazonのパラダイムシフト
提携に向けての交渉が実際に進んでいるのかどうか、Amazonに確認できてはいないが、現在のAmazonに決定的に欠けている、エディトリアルという視点を養う、より大きな取り組みを示す行為としてはありうると語るのは、コンシュマーインサイトに関するコンサルティング企業スパーク(Spark)の創設者で最高経営責任者(CEO)を務めるメリンダ・サンナ氏だ。
Advertisement
今回の報道があったのは、Amazonが画像から直接製品購入ができるプライム会員向けのSNS的サービスAmazon Sparkを発表した直後のことでもあった。これは、製品発見用にデザインされた、インスタグラムの製品タグに類似したものだ。
「Amazonがパラダイムをシフトさせて単なる配送会社以上になるためには、自分の声をあげる場を持たなければならない。これはAmazonがいままでやって来なかったことだ」と、サンナ氏は語る。「Amazon Fashionの広告はありきたりな感じさえする。キュレーターの視点を持てるようにならない限り、彼らは配送会社を超える存在にはなれないだろう。ただ、そうした専門家としてのユニークな視点を(Amazonが)獲得する価値については、私にはよくわからない」。
この提携で狙っているもの
しかしAmazonは、バイオレットグレイのサイトに出ているような、拡充された製品セレクションの恩恵を受けることになるだろうと、サンナ氏は話す。消費者は、Amazonに行ってトム・フォード(Tom Ford)のアイシャドウパレットや、ラ・メール(La Mer)のフェイスクリームを探すことはないかもしれない。しかし、ほかの場所でそれを最初に見つけたことがあれば、2回目以降の購入をする際にAmazonを選ぶかもしれない。
サンナ氏はこう語る。「Amazonは倉庫を持つ配送会社で、その点は軽視できない。この分野で彼らはほかのどこよりも上手くやっている。製品を使い切って補充が必要になった顧客は、すぐにでも欲しいと思うものだし、そうできることには大きな価値がある。Amazonは配送を得意としているので、販売は放っておいても増えるだろうが、世間の人は、Amazonが商品発見の手段だとは思わないし、キュレーターだとも思わない」。
提携が実現してもAmazonの名が美容のオーソリティとしてあげられることはなさそうだが、バイオレットグレイのように消費者の信頼を得ているサイトと提携することで、Amazonの信頼性も高まるだろうと語るのは、eコマース管理会社クォンティファイド(Kwontified)の創設者、エレイン・クォン氏だ。同氏は、Amazon Fashionのラグジュアリー部門でベンダーマネージャーを務めた経験もある。
「バイオレットグレイは、社会で力を得た女性のための美の追求やセレクションで有名だ。そこと提携するという可能性は、業界での信頼性という要素や、キュレーションにおけるコラボレーションの可能性を最前線にもたらす」と、クォン氏は語る。「この点においてAmazonは、非常に人気のあるエディトリアルコンテンツを追求するだけではなく、美容やファッション関連の製品を多様なブランドやジャンル、スタイル、価格帯で購入できる場としての信頼を確立しようともしていると想定できる」。
強力な意思決定サイクル
クォン氏は、これはAmazonにとって、新しいカテゴリーで実験を行い、リーチを拡大するもうひとつの方法だと述べる。Amazonでは先日のAmazon Sparkの発表以外に、購入前に試着できる衣料品通販サービス「プライム・ワードローブ(Prime Wardrobe)」を6月に発表している。
「顧客が探究し、エンゲージし、最終的にはAmazonのビューティー製品をより多く購入できるようにする、健全で強力な意思決定のサイクルだ」と、クォン氏は語った。
Bethany Biron(原文 / 訳:ガリレオ)
Image courtesy of Violet Grey