特集 2017年8月23日

歴史路線図を作る

歴史を路線図に落とし込むことはできるのか?
歴史を路線図に落とし込むことはできるのか?
路線図は、列車の動きを図解したものだ。

ものの動きや流れを図案化するのであれば、けっこういろんなものが路線図化できるのではないか?
鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。(動画インタビュー)

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徳川幕府歴代将軍路線図

というわけで、徳川幕府歴代将軍路線図を作ってみた。
徳川歴代将軍路線図
徳川歴代将軍路線図
真ん中の緑色がなにかは言わずもがなだと思う。

なお、徳川歴代将軍線がえんじ色の線。将軍に関係した家系と人物のみを入れたので、御三家のうち尾張家は入れてない。

路線図好きならピンとくると思うが、都営地下鉄路線図のオマージュである。
これですね
これですね
一見「わかりやすい」ような気がするが、よく理解して見ないと間違った解釈をしてしまうので注意が必要だ。

えんじ色の将軍線は、将軍になった順番を優先して表記しているので、隣駅の将軍は必ずしも親子というわけではない、家綱、綱吉は兄弟である。

吉宗以降の御三卿線は、一つにまとめるというかなり乱暴なことをやってしまった。本当は、田安家、清水家、一橋家で分けると正確ではあるけれど、そのへんを図に落とし込むにはだれかに3万円ぐらいもらわないとやってられない。

歴史好きなので、うっかりあれもこれもと盛り込んで、知識マウンティングしてしまいがちだが、そこはがまんである。あくまで路線図の図としてのおもしろさを優先したい。

しかし、これを見てみると、吉宗の中興の祖っぷりがよくわかる。目安箱を設置し、米価の安定に腐心して、白馬に乗って海岸を駆けているだけのひとではないのだ。ちゃんと後の徳川家に続く血を残しているのがわかる。

足利将軍家はどうだ?

さて、幕府と言えば徳川幕府だけではない。室町幕府も忘れてはならない。
というわけで、室町幕府の路線図もつくってみた。
東急路線図オマージュ
東急路線図オマージュ
この路線図も、路線図好きにはピンとくると思う、東急の路線図オマージュである。
なぜか南北逆の東急路線図。数年前のものです
なぜか南北逆の東急路線図。数年前のものです
足利家は徳川家以上のややこしさがある。足利義材は、安倍首相みたいに、2回将軍になっている。しかも、2回目は名前が義稙に変わっているのでややこしさに拍車がかかる。で、路線図にするとややこしいので、2回目は省いた。

で、目立つのが、くじ引きで将軍になったことでおなじみの足利義教だ。義教の子孫が何度も将軍職についている。
デザイン上の制約がどうしてもあり、路線が交わってるのに乗換駅じゃないみたいな箇所があるが、これはどうしようもないので、こういうもんだと思ってみてほしい。
傍系から将軍職を継いだ人がいると、どうしてもこうなせざるを得ない。

鎌倉公方、古河公方あたりは、本当はなくてもよかったけれど、本線だけだと寂しいので、付け加えた。

江戸、室町ときたら……

江戸幕府、室町幕府がきたら、やはりどうしてもこれを出さない訳にはいかない。

鎌倉幕府である。
鎌倉幕府というか、北条氏路線図ですね
鎌倉幕府というか、北条氏路線図ですね
源頼朝、頼家、実朝と、頼朝直系の将軍は3代で終わり、その後は北条氏の執権政治に移るようすがよくわかる。(教科書っぽい文体)

ちなみにモチーフはモスクワ地下鉄路線図である。ぼくにとって、あこがれのモスクワ地下鉄。路線図を見にモスクワ行きたい。
ロシアの地下鉄はこちらの記事をどうぞ
ロシアの地下鉄はこちらの記事をどうぞ
反省点としては、藤原頼経以降の将軍の間隔を実際の在任期間に合わせて間を開けたらよかったかな? という気もするが、路線図は本来、実際の距離を無視して描かれるものなので、これでもいいかというきもする。

歴史全体の流れは難しい

路線図は、歴代◯◯とか、家系図みたいに、線で繋がった物事を表すのはわりと簡単だけれど、流れ全体を表そうと思うとかなりややこしいことになる。

しかし、うまくいけば全体の概要がつかめるのではないか? と、そんな思いで作ったのが、源平合戦の路線図だ。
右から見てほしい。
右から見てほしい。
人物を路線に置きかえ、事件や合戦などに参加した人、しないひとを分けて描くとこんな感じなるのではないだろうか?

源平合戦は、義経や頼朝、木曽義仲なんかはみんな知ってるけれど、壇ノ浦で滅ぼされた平氏の武将が誰なのかいえる人はなかなかいないのではないか?

おばあちゃん(二位の尼)に「波の下にも都がこざいます」と騙されて一緒に心中してしまった安徳天皇の方の印象が強く、平知盛(上の路線図でいうと赤い路線のひと)はいまひとつである。

ぼくは、数年前、どうしても壇ノ浦がみたくて、行ったことがある。

関門海峡の下関側には、碇を持ち上げる平知盛の銅像が飾ってあった。
逆光で顔が真っ黒で申し訳ないが、平知盛である
逆光で顔が真っ黒で申し訳ないが、平知盛である
碇を持ち上げるのは、たぶん歌舞伎のイメージだ。つまり、特定の分野やゆかりの地では銅像になるほど有名だけど、一般には無名という、そういう人ですね。
今だったら、ユーチューバーとかウェブライターみたいな話だとおもう。

壇ノ浦といえば、赤間神宮にあった看板がすごかった。
エンジョイ! 下関!
エンジョイ! 下関!
入水して死んだと思しき安徳天皇と二位の尼が「Enjoy! Simonoseki!!」である。怨霊も、時代に合わせて英語で案内してくれるようになる。

この話、たぶん当サイトでは既出だと思うけど、面白いのでぼくも書かせてもらった。

閑話休題

路線図の話に戻りたい。

歴史全体の流れは、人物を路線に見立てれば、めっちゃ作るのが大変だけど、なんとかそれっぽくなるということがわかってきた。

ということは、映画やドラマのストーリーも路線図になるのではないか?

そんな気がしたので「スターウォーズ」を路線図にしてみた。
デススター駅のでかさ
デススター駅のでかさ
これ、スターウォーズだからといって、うっかり背景を星空にしてしまったせいでちょっと見づらくなってしまったので、クリックすると大きい画像が見られるようにした。

路線図的にいうと、地方のバス路線図に近いかもしれない。

デス・スターというバスターミナルを一回出てまた来て更に別の場所に向かうというちょっと変則的な運行形態のバスというわけだ。福岡あたりにそんなバスないだろうか?

よく見ると、R2-D2がデス・スターと共に壊れちゃったみたいな感じになってるのが気になる。これは今後、修正しなければいけない。

なんでも路線図になる、ただし考えるの超たいへん

歴史という全体像がつかみづらいものを路線図にすると、概要を把握するのには便利かもしれない。

ただ、正確さや情報量を優先させようとすると、路線図っぽくなくなったり、破綻してしまう。

そもそも路線図とは、実際の線路の形や、距離などの情報をスパッと捨ててデザインし直したものだからだ。

捨ててこその路線図。

なんだか禅みたいな話になってきた。
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