使われることのなかった幻の物質。
第2次世界大戦中は鋼が不足していたため、代わりになる物質を作るほかありませんでした。一つの策として提案されたのが氷とおがくずを混ぜたパイクリートというもの。通常の氷と比べると溶けるスピードは格段に遅く、活用されるかと思ったものの、戦後は忘れられ使用されることはありませんでした…つい、最近までは。パイクリートに着目したオランダの建築家とエンジニアグループが、活用しようと動き始めたのです。
パイクリートは、イギリス人の発明家であるGeoffrey Pykeによって作られました。水とおがくずで作られたパイクリートは、凍るとすぐには溶けない上、驚くほど強く、割れない物質として鋼の代わりに使えるとパイクは思ったのです。
パイクリート製の船のレンダリングimage: panggilanpertiwi.forumotion.net/
英政府はパイクリートを飛行機空母の物質として使えないか検討していました。終戦後、パイクの発明は活かされることはありませんでしたが、忘れ去られたわけでもなかったのです。
オランダのアイントホーフェン工科大学では、生徒や教授がパイクリートを使って世界一大きいアイスドームを建てました(動画はこちら)。
image: Joep Rutgers.膨張式のドームの上からパイクリートを吹きかけることで、直径98フィート(約30m)もの独立したアイスドームを作ることに成功したのです。
image: Bart van Overbeeke/PykreteDome(top), Joep Rutgers(bottom)次のステップとして、バルセロナにあるサグラダ・ファミリアの1:4スケールの模型をパイクリートで制作するとか。Arno Pronk教授によると、単純にもっと大きいドームを作ることもできたが、有名で難易度が高いサグラダ・ファミリアに挑戦しようと思ったそうです。
今年の冬には、50人規模のチームが北フィンランドで膨張式のサグラダ・ファミリアの型作りにとりかかり始めます。まずは雪で覆い、その上から水とおがくずを吹きかければ、凍ってパイクリートとなり、氷の3倍もの強度になるんですって。
9月にはヨーロッパで一番寒い、フィンランドのユーカでプロジェクトは幕開けとなります。ですが、去年の冬にユーカが記録的な暖かさを記録したため、少し先行きが不安らしいです。寒い冬になって、サグラダ・ファミリアが見れることを期待しましょう。
lead image: Bart van Overbeeke / PykreteDome
source: GizMag
Kelsey Campbell-Dollaghan - GIZMODO US[原文]
(るな)