料理の盛り付けセンスを磨く方法とは?素人の料理をプロのフードスタイリストが盛り付けたら超美味しそうになった

料理の盛り付けセンスは磨くことができます。ある程度自炊をしていると、彩りや盛り付けで悩むようになってきませんか?自分が食べるぶんには多少色味が悪くても、盛り付けが不恰好でも構わないとも思いますが、もっと美味しそうに見せるコツがあるなら覚えておいて損はありませんよね。そこで今回は、素人の自炊料理をプロのフードスタイリストさんにアレンジしていただきました。作る料理はチャーハン、サラダ、筑前煮。盛り付けの工夫、お皿や添え物の選び方など、今日からマネできそうなテクニックばかりです。(中華のグルメガイド

料理の盛り付けセンスを磨く方法とは?素人の料理をプロのフードスタイリストが盛り付けたら超美味しそうになった

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ライターの小野洋平です。

 

このところ、節約と健康のため夜はなるべく自炊をしている。手軽な料理レシピがネットに溢れるこのご時世、献立にはさほど苦労しない。味もそれなりに満足できる。しかし、僕の料理にはひとつ、致命的な欠点がある。

見た目がイマイチで、食欲をそそられないのだ。基本、肉をただ炒めただけみたいな料理(といえるのかも怪しいですが)が多いため、色味も悪く「茶色くなりがち」という問題を抱えている。

 

料理の見た目って、どうすればよくなるんだろうか? 持って生まれたセンス? それともコツみたいなものがあるの?

たとえば僕が作ったしょぼい見た目の料理でも、プロにアレンジしてもらえば、美しく、おいしそうになったりするんだろうか?

 

そこで今回は、テレビや雑誌などで活躍するフードスタイリストの河合真由子さんに、本当に僭越ながら僕の手料理をアレンジしてもらい、自宅で簡単にマネできる範囲のスタイリングを教えてもらった。

 

大好物3品の見た目をよくしたい

河合さんはテレビや雑誌以外にも書籍や広告、イベントまで、さまざまな場でフードスタイリングを手掛けている。そんなプロフェッショナルに僕の料理をどうこうしてもらおうなんて、よく考えたら失礼な話だ。M-1チャンピオンに僕が書いたネタで漫才をしろと言っているようなものかもしれない。

 

しかし河合さん、そんな不躾なお願いにも関わらず快諾していただいた。遠慮なく、いつも通り等身大のメシを作っていこうと思う。

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ちなみに本日作るのは、チャーハン、サラダ、筑前煮だ。ジャンルがバラバラで脈絡のない献立だが、どれも僕の大好物である。

この先、一生涯にわたって作り続けるからこそ、少しでもおいしそうに見せるテクニックを習得しておきたい。

 

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こちら、今回の料理を盛り付ける器だ。実家の食器棚から引っ張り出してきたのだが、ほぼ花柄だった。この企画のおかげで、うちの母は無類の花柄好きらしいということがわかった。

この「ザ・実家」な食器に、まずは僕がいつも通りに料理を盛り付けていこう。

 

チャーハンのポイントは「立体感」

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まずはチャーハン。具はネギ、チャーシュー、卵のみのシンプルなチャーハンである。

 

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とはいえ、家庭のチャーハンってこんなものではないだろうか? これ以上、何ができるというのか? 僕のレベルでは、せいぜいグリンピースをのっけて彩りを足すくらいしか思いつかないが……。

 

しかし、河合さんの手にかかると……

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あら、素敵だね~

河合さんにアレンジしてもらったところ、ちょっとこじゃれたアジアン居酒屋のメニューみたいになった。

 

とはいえ、ベースになっているのは紛れもなく僕が作ったチャーハンだ。変わったのは皿と盛り方と、ほんの少しトッピングを足したくらい。それだけで、こんなに「ちゃんとする」んだなあ……。

 

河合さん「まず、ポイントは『高さ』を出すことです。チャーハン自体もしっかり形を整え、さらに白髪ねぎなどを使って立体的に盛ると、料理がかっこよくみえるんですよ。小野さんのように、ただ器に“のっぺり”と盛り付けるよりも、食欲が掻き立てられませんか?」

 

確かにかっこいい。スタイリング後のそれは「イケメンが作ったチャーハン」という感じがする。

 

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河合さん「それと、パクチーを加えることで全体が引き締まるんです」

 

確かに、パクチーの存在によって、さらにシュっとしたチャーハンになっている。パセリとかでもいいんだろうか?

 

河合さん「チャーハンは中華料理なので関連性のある食材を乗せるべきですね。もし、和食だったら、三つ葉や万能ネギがいいでしょう。オシャレだから乗せるのではなく、料理の添え物として適した食材を合わせてあげることが大事です。そうすれば、見た目も味も美味しくいただけますしね」

 

【チャーハンの簡単見た目アレンジ3か条】

・白髪ネギなどを駆使し「立体的」に盛る
・さらにパクチーを添えることで全体が引き締まる
・添え物はあくまで、その料理に合うものをチョイスする

 

生野菜サラダのポイントは「彩りとアクセント」

続いてはサラダ。シンプルな生野菜サラダである。

シンプルゆえにこれほど「やりようがない」料理もないと思うのだが、いちおう真ん中にキュウリを集めてトマトを散らすなど、僕なりに見栄えを意識してみた。

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ただ、これをインスタに上げたところでおそらくゼロいいねだろう。

 

そんな、「無」のサラダを、河合さんはどうスタイリングするというのか?

 

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出ました、100いいね!

 

というわけで、店によっては1,200円くらいしそうな意識高いサラダが爆誕した。とはいえ、河合さんのそれも野菜自体は特殊なものは一つも使っていないし、難しい技術が駆使されているわけでもなさそう。それでもこの違いか……。

 

どのへんがポイントなのだろうか?

 

河合さん「小野さんのは、ただ野菜を切って盛り付けただけですよね。もう少し、彩りを意識してみましょう。野菜は色の種類が豊富なので、いかようにも組み合わせられますよ」

 

—— 彩り……ですか?

 

河合さん「例えば、緑色が多いサラダに赤色を加える場合、トマト以外にもトレビスや紫玉ねぎがあります。そういった食材のデータベースを増やしておくことが大事ですね」

 

—— クルクルしてるのは、なんですか?

 

河合さん「これは人参やきゅうりをピーラーで薄く切り、巻いただけですよ。簡単にできますし、見た目のアクセントになります」

 

どうやら僕の場合、そもそも切り方や野菜のチョイスから間違っていたようだ……。

 

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河合さん「オリーブもアクセントの一つですね。あえて黒を入れると目線がいき、全体が引き締まって見えるんですよ。もちろん、食感や味にも大きな役割を果たしています。サラダってドレッシングの味に飽きちゃうじゃないですか? だから、オリーブのような少し酸味があって、味のアクセントになる食材を加えるといいと思います。他にはローストナッツなんかもオススメですよ」

 

また、葉物の野菜はシャキッと「葉を立たせる」ことが重要とのこと。

そのため、見栄えを良くしたいなら、

・野菜を冷水に20分ほどつける
・しっかり水切りをした後にボウルに入れる
・湿らせたキッチンペーパーをボウルに被せ、ラップして冷蔵庫に保存しておく

このひと手間を加えると良いそうだ。

 

【サラダの簡単見た目アレンジ3か条】

・さまざまな色の野菜をバランスよく使う
・切り方や色で、ちょっとしたアクセントをつける
・葉物野菜はひと手間加えてシャキっとさせる

 

筑前煮のポイントは「器の選び方」

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ラストは和食の定番、筑前煮。今回はにんじんの赤も加えて多少の「彩り」を意識してみた。

一般的にみんながイメージする筑前煮の見た目レベルには達していると思う。器にもマッチしているし、これはなかなかいいのでは?

 

しかし、そんな自信を秒で打ち砕く河合さん。

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僕のもっさりした筑前煮が一気に洗練されてしまった……。この企画、己のセンスのなさを改めて痛感させられるなあ……。

 

河合さん「いえいえ、小野さん(筆者)のだって決してダメではありませんよ。ただ煮物って色が地味じゃないですか? だから、今時っぽいオシャレな感じに仕上げるのであれば、明るい色の器を使用した方がいいと思います。華やかに見えますよ。あるいは、先ほどのチャーハンで使用した黒い器を使うと、高級感が演出できます」

 

—— なるほど。器の色1つで印象もガラリと変わるんですね。

 

河合さん「はい。他にも、料理の大きさにあった器を選ぶことも大事。特に意識すべきは器の余白です。例えば、余白がありすぎると寂しい印象になりますし、また余白がなさすぎると料理全体がチープな印象になってしまいます。まずは、料理にあった適切な大きさ・色・形の器を選ぶことがスタイリングの基本ですね」

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また、食材の切り方もスタイリングには大きく関わってくるそうだ。

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河合さん「今回のように食材を大きく切るのは良いと思います。大きい方が食べ応えもありますし、見た目も崩れにくいので美味しそうに見えます。でも、ひとつアドバイスするなら、レンコンやゴボウを加えるとなお良いですね。というのも、いろんな形をした食材があると盛り付けにも、食べた時の食感にも変化が生まれて見ているだけで美味しく感じられるんです」

 

—— 河合さんのをよく見ると、形の異なる具材をブロックのように組み合わせていますね。これって、考えながら盛り付けしているんですか?

 

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河合さん「いえ。料理を作る際は、はじめから完成形をイメージしています

 

—— たとえば、どんなイメージを?

 

河合さん「結局、どういう風に見せたいかによってスタイリングも全然変わってきます。今回の筑前煮であれば、煮物の『ツヤ感』や『照り』を表現したいのか? シチュエーションとしては、たとえば『ご飯やお茶碗のある家庭の食卓』を表現したいとか、そういうことを考慮して完成形をイメージしますね」

 

そのイメージがないと、盛り付けの際にアレコレ付け加えても粗雑な仕上がりになってしまうそうだ。勉強になるなあ……。

 

さらに、「盛り付け」の際に気をつけるべきポイントも教えていただいた。

 

河合さん「盛り付けは、お鍋の中の状態を忠実に表現することも大事です。汁気がない料理ならば、わざわざ汁をかける必要もないのですが、もし少しでも汁が残っているのであればかけてあげましょう。その方がシズル感も出ますしね」

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なるほど、確かに鍋やフライパンの中にある状態が一番「おいしい状態」なわけだから、それを器にできる限り再現することで見た目的にもおいしそうになるってことか。

 

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汁もかかっていてシズル感もばっちり。しっかり鍋の中が再現されている。う、うまそう……。

いや、スタイリングってめちゃくちゃ大事なんだなあ。

 

【筑前煮の簡単見た目アレンジ3か条】

・料理にあった適切な大きさ・色・形の器を選ぶ
・最初に料理の完成形をイメージし、組み立てる(途中でアレコレこねくりまわさない)
・「お鍋の中の状態」を表現することを意識

 

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ちなみに、河合さんのフードスタイリングは「今までに自分が見たもの、食べたもの」が軸となっているそうだ。そのため日々、様々なお店に行っては、味や見た目を学んでいるとのこと。

 

僕もこれからはただ漫然と外食するのではなく、そういうことを意識して経験値を積んだら少しは腕が上がるかもしれない。

 

【取材協力】

フードスタイリスト 河合真由子さん

http://recipeoflife.jp/

 

【プロフィール】

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小野洋平(やじろべえ)

1991年生まれ。編集プロダクション「やじろべえ」所属。服飾大学を出るも服が作れず、ライター・編集者を志す。自身のサイト、小野便利屋も運営。

http://yajirobe.me/
https://onobenriya.com/

                             
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