Webマーケティングは感情主導型であるべき

Alan Smith

Alan Smith氏は、ITの領域において幅広い経験をもつ、テクノロジーに関する熱心なブロガーです。彼は現在、ロサンゼルスに拠点を置くSPINX Digital Agencyと連携して仕事をしています。

この記事はUsabilityGeekからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

The Future Of Web Marketing Is Emotion-Driven

人間は感情的な生き物です。脅威への恐れ、ちょっとした怒り、孤独な人々への愛や思いやりなど、私たちを取り巻く世界に対するもっとも重要で感情的な反応は生存本能に基づいていると、多くの科学者が同意しています。結局、こういった感情の多くは私たち自身を守ること、または人類の未来に向けられています。『Harvard Business Review』誌はこれを「理屈よりも感情」(emotions before reason)と呼んでいます。

この行動は一見非論理的に見えます。つまり、ほとんどの両親が子どもの安全を自分たちよりも優先する、ということを考えるまでは、あなたは自身がいま生きていることによって証明されるその論理を事実上侮っているのです。

あるいはもっとも基本的で、存在する中でもっとも悪名高い「愛」という感情の名のもとに、どれほどの人が人類の過程の中で本当に愚かで恐ろしいことをしてきたかを考えてみてください。

すなわち、感情はときに論理を無視します。おそらく世界でもっとも論理に基づいた分野であるビジネスが日々人間の感情の多くを無視しがちである一方で、マーケティングが及ぼす感情的な影響にも常に注目したがっているから興味深いのです。

論理としてのビジネス

ビジネスにおいて非常にたくさんの焦点が論理に向けられます。

たとえば、マネージャーは人を雇ったり解雇したりするときには感情を離して考えるように指導されています。「家族は家族、ビジネスはビジネス」といったように、利益に影響する賢い選択をする能力に害を与えるかもしれない感情的な関係は避けるように指導されるのです。

マーケティングにおいて私たちが下す決断のほとんども同様です。ターゲットマーケット市場を決めるために行うデータ駆動型調査を考えてみましょう。そして、収益にもっとも重要な影響を持つ人々にどこで・いつ・どのようにマーケティング予算を向けるかについての非常に重要な決断をしてみてください。

データには感情的な要素は含まれないことがほとんどです。しかし、誰をターゲットにしてマーケティングをおこなうか、彼らにたどり着くためにどの方針をとるか、そしていつ彼らが前向きに反応するか、これらについて素晴らしい選択をしたとしても、マーケティングの感情的な側面を無視すれば、彼らの興味を維持できる可能性はほとんどありません。

マーケティングは感情的なものである

仮にあなたが35歳以上の人をターゲットにした製品を最近作り始めたとしましょう。このグループは、主に動画を含んだソーシャルメディアマーケティングへ良い反応を示す傾向にあると判断しました。そこで、ターゲット市場で使われているソーシャルメディアチャンネル全てに動画を公開するために、あなたの製品をアピールする動画を製作すると決めます。

ところが、あなたはメッセージの感情的な側面に取り組むことをおろそかにし、ユーザーがもっと気楽にあなたの新製品を手に取れるようにしようと軽いジョークを取り入れます。残念ながら、動画を見たターゲットは彼らが直面している問題がそのジョークによって軽視されたように感じてしまうのです。

このように、マーケティングの感情的な面を軽視することは最終利益に危険をおよぼす恐れがあります。

Sarah McLachlan氏の米国動物愛護協会(ASPCA)のCMについて考えてみましょう。

捨てられたり虐待された動物たちの里親や、彼らの世話をするための寄付を呼びかけるモンタージュ動画にMcLachlan氏のあの悲しい曲(Angel)がBGMで流れています。McLachlan氏でさえ、最後のカットをほとんど見ることができないと言います。しかし、そのCMは効果的で、放送期間中に組織には3千万ドル以上の寄付が集まりました。

バドワイザー(ビール)の馬のCMや、ジープの兵士帰還のCM、そしてSarah McLachlan氏自身を見れば、感情に訴えるマーケティングを効果的に使うことは、現代の状況において価値のあるツールであることは明らかです。

感情的なマーケティングは根底から始まる

製品を使ったり購入したりすることを含めて、人はほとんど全ての行動において感情を経験します。特定の広告キャンペーンに対する私たちの反応の仕方で、感情はどこで大きな役割を果たすのかを見ることは簡単ですが、本当の感情的なマーケティングは人があるブランドに初めて出会ったその瞬間に始まるのです。

それがテレビ上であるときもありますが、企業のWebサイトデザインが感情に訴える重要なマーケティングツールになりつつあるため、ネット上で初めてブランドに出会うケースが増えています。

もしあなたがWebデザイナーを職業としていないのであれば(ほとんどの人はそうではないのですが)、Webサイトの感情的な影響の調査はどこから始めるべきかかわからないかもしれません。新しい見込み顧客がするように、一歩下がって新鮮な目でWebサイトにアプローチし、全体的な印象を考えてみましょう。

「ポジティブ」「ネガティブ」「新鮮」「専門的」「まじめ」「中立的」「わくわくする」など…

これらの形容詞はあなたが獲得しようとしている印象かもしれないし、そうでないかもしれません。しかし、何人かの見込み顧客があなたの製品を知ろうとするかわりにサイトを離脱してしまうのはなぜか理解するとなると、あなたのサイトがそれを見る人々にどのような印象を与えるかを考えることは価値のあることなのです。Webサイトのもっとも重要な役割である、ユーザーにクリックさせ製品を購入してもらうということに対して、そのWebサイトがどのくらい効果的であるかを判断するためにマーケターが見る重要な要素のひとつが離脱率です。

第一印象がWebサイトデザインを分析することのもっとも基本的なレベルです。もしWebサイトが直感的にネガティブな反応を引き起こす場合、そのメッセージがどんなに優れたものであっても、あるいはそのブランドがどれだけ有名なものであったとしても関係なくなってしまいます。ユーザーに最初の反応をクリアして実際に商品へ興味を持ってほしいのなら、ブランディングと感情は並んで効果を発揮しなければいけません。

Webサイトを初めて見るときには、さまざまなことが感情に影響を与えます。特定の色や有名人、共同スポンサーに対する感情的な反応、さらにはレイアウトや画像のクオリティでさえも共に働いて最初の反応を引き起こします。

見込み顧客の興味を引く

Webサイトを初めて見たユーザーが、不快に感じず良い印象を持ったとしても、見込み顧客と良い関係を結ぶために次のステージへ連れて行くにはさらに感情に訴える作業が必要です。ここでは、ユーザーをWebサイトに留め、あなたが提供する製品やサービスは何かを知ってもらうために十分対策を練らなくてはいけません。

何があなたのWebサイトを魅力的で興味をそそるものにするのでしょうか? ユーザーに望む感情的な反応を引き起こさせるために写真を使いますか? 動画はどうでしょう? 人間は映像を文字よりも何倍も早く処理します。数字についてはよく論争されますが、60,000倍早いと言われています。

身体的にアクティブなユーザー向けで、彼らの活動的なライフスタイルのためにその製品に何ができるのか知ってもらえるようアピールする、あるブランドのWebサイトを考えてみましょう。まじめで静的なWebサイトはターゲットの興味をそそるために必要な感情を引き起こすことはほとんどありません。しかし、製品が使用されている適切な動画や、エネルギッシュな色使いからは、まったく逆の効果を得られるかもしれません。

もしあなたのWebサイトが文字で埋め尽くされていたり、空白のスペースが広がっていたとしたら、ユーザーと感情的な関係を結ぶことなく、ブランドと交流させる重大なチャンスを逃しているのです。

顧客が行動してくれるように巻き込む

顧客に対する最終ステップの感情的なアピールは、あなたのサイトに巻き込み、そして製品に関わりをもってもらうことです。2019年、ビジネスがこのステップを達成するためにとっているもっとも興味深い方法のひとつは拡張現実(AR)の使用と共にあります。

ARマーケティングはユーザーの環境を取り込み、製品をその中に配置します。そうすることで、見込み顧客が購入するかどうかを思案している間、製品を直接体験させることができます。ARを取り入れて大きな効果を上げている会社に、IKEAや人気化粧ブランドのCovergirlやSephoraがあります。

IKEAを少し見てみましょう。見込み顧客に新しい家具が家に与える影響を体験させるよりも、彼らの感情にアピールする良い方法はなんでしょうか。これはまさにIKEAが新しいカタログをデザインしたときに計画したもので、ユーザーが購入前でも家具を取り入れることができるという感情的な効果を体験することを目指していました。この効果を完全にするためにユーザーがしなければならなかったことは、クリックして注文ページにたどり着くことでした。

一種のインタラクティブのような方法で、「当社の製品はお客様の家でこう見えますよ」とほとんど全ての製品を店頭で紹介していることを考えると、IKEAにとって没入型の体験は新しいものではありません。しかし、これをオンラインで企てたのは初めてであり、感情的なアピールは申し分のないものでした。

まとめ

一般に考えられているものよりずっと、感情はマーケティングにおいてとても重要な役割を果たしています。ビジネスにとって重要な決定をするとき、感情を考慮することは必要不可欠なことです。もしWebサイトや他のマーケティング戦略がターケットに対して感情的にアピールできていなかったとしたら、達成できる可能性を最大限に活かしていないということになるのです。


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