名店のあのメニューを食べに来ました
久しぶりに中野大勝軒にやってきました。看板には「つけそば」とありますね。
券売機で「つけそば」をポチッといたします。
▲つけそば(590円)
ほどなく着丼。いやぁ、これこれ。これですよ。
ああ、変わらぬおいしさですねぇ。
こちらの中野大勝軒は日本のつけ麺の歴史を語る上でも重要なお店なのです。
ちなみにこちらのお店のメニュー名は「つけそば」ですが、つけ麺というほうがわかりやすいのですね。つけ麺という名称は1973年(昭和48年)ごろ、「つけ麺大王」が使い始めたことから一般的になりました
つけ麺の源流・中野大勝軒
写真提供:中野大勝軒
中野大勝軒は、1951年(昭和26年)に中野区橋場町(現在の中野区中央5丁目)で創業しています。創業したのは坂口正安さん。
今や日本全国にのれんが広がっている「大勝軒」の最初の店なんですね。
写真提供:中野大勝軒
上の写真、右側が坂口正安さんで左側が山岸一雄さんです。
坂口さんは親戚の山岸さんを長野から呼び寄せ、阿佐ヶ谷の「栄楽」(※現在は閉店)でいっしょに働きます。そして、2人で中野大勝軒を開業。
1954年(昭和29年)に坂口さんは、代々木上原に大勝軒を開き、そちらを本店とし、中野大勝軒は山岸さんにまかせます。山岸さんはそれまでお店でまかないとして食べられていた「つけそば」をメニュー化し、これが人気になります。
その後、1961年(昭和36年)に山岸氏は独立し、東池袋大勝軒本店を開きます。
ほどなく同店は行列のできる人気店になるのです。その後、多くのお弟子さんたちを育てて、のれん分けをしたので、各地に大勝軒がどんどん増えていくことに。
そして中野大勝軒さんが現在の場所(中野区中野3丁目)に移転したのは、1974年(昭和49年)。
このころから中野大勝軒は「つけそば専門店」を名乗るようになったのです。
というわけで、もともとまかないメシから「つけそば」が生まれた中野大勝軒に、今現在お店で食べられているまかないメシを見せてもらうべく、開店前にお邪魔しました。
中野大勝軒のまかないメシ「とろっとろ角煮」
右が店長の坂口大輔さん。坂口正安さんのお孫さんです。左は中国人スタッフの鐘兆成(ショウ チョウセイ)さん。
──店長、一般の人でもつくれるような簡単なまかないメシがあったら、教えてください。
坂口店長:それでは、炊飯ジャーでつくる「とろっとろ角煮」はいかがでしょう?
──おお、いいじゃないですか。簡単そうですね。
坂口店長:ええ、実はこれ、鐘さんのレシピなんですよ。ウチは厨房が狭く、コンロ数も少ないので、炊飯ジャーで角煮をつくることにしたのです。
材料
- 豚バラ 塊肉 600g(醤油で40分煮たもの)
- 生姜 スライスで5~6枚
- 長ネギ 1本
- スープ 500cc(水500ccに市販の中華スープの素を規定量)
- 醤油 60cc(炊飯器用に)
- 酒 少々
- みりん 少々
- ブラックペッパーかコショウ 少々
- 五香粉 少々(あれば)
坂口店長:材料はとてもシンプルです。まずは、豚バラ肉の塊を鍋に入れ、ひたひたの醤油に浸けて40分ほど煮ておきます。
──これ、お店で使うチャーシューなんですよね。
坂口店長:そうですね。事前に豚バラの塊肉を醤油で煮込まず、そのまま炊飯器で煮込んで角煮にしてしまってもいいのですが、いったん醤油で煮ておいたほうがおいしい角煮になるんです。
──煮る時の醤油の量は、ひたひたに豚バラ肉にかぶるくらいでいいのですね。
坂口店長:そうですね。醤油で40分ほどコトコト煮込めば、チャーシューになります。今回はそれを角煮にしますので、この煮込んだ豚バラ肉を食べる分だけ切って、使ってください。
──これで、2人分くらいですかね。
坂口店長:そうですね。で、これを炊飯ジャーに入れてください。次に、生姜をスライスしていきます。
坂口店長:5、6枚ほどスライスします。
坂口店長:この生姜のスライスを炊飯ジャーへ入れます。
坂口店長:さらに、ネギの白い部分を切って入れます。切り方としてはこのくらい。もちろん、お好きなサイズでいいですよ。
坂口店長:炊飯器に中華スープを500ccほど入れます。
──おっと、一般の家にはスープって常備してないですよね。水500ccに、中華スープの素などの調味料を溶いて入れてもいいんでしょうか?
坂口店長:もちろん、それで大丈夫です。
坂口店長:醤油60cc、酒少々、みりん少々、コショウ少々、五香粉少々を入れてください。まかないなので、分量などあまり気にしなくていいですよ。五香粉がなければブラックペッパーかコショウでも大丈夫ですよ。
坂口店長:あとはこれを炊飯ジャーに入れて、スイッチを入れるだけです。
坂口店長:もし炊飯器でメニューが選べる機種であれば、“おかゆモード”で炊くことをおすすめします。あとは待つだけです。
1時間10分ほどで出来上がりました。
坂口店長:できましたよ。ウチのまかないめし、「とろっとろ角煮」、さっそく食べてみます?
──ぜひぜひ!
噛みしめると、ジュワーッと味がしみ出てくる
どれどれ、いただいてみましょうか。
──うわっ、とろっとろですごく柔らかい。だけど、ちゃんと噛み応えもあって、ジュワーッと味がしみ出てきますね。うん、これはおいしいな。
坂口店長:これをおかずにご飯を食べるのがウチのまかないメシのスタイルなんですが、そういえば今日はまだご飯を炊いていませんでしたね(笑)。
──あー、炊飯ジャーを使ってましたからね。これからご飯を炊くわけですね。店長、今日の角煮のお味はいかがでしょうか?
坂口店長:うん、いつもどおりにおいしくできていますね。もちろんビールのおつまみにも最高ですよ。
──すごく簡単なので、さっそくウチでもやってみます!
それにしても久しぶりに中野大勝軒にうかがいました。いっとき通った時期もありましたが、やはりおいしいですね、つけそば。この原稿を書いていたらまた通いたくなりました。そういえば、昔はやっていなかった冷やし中華が気になりました!
またうかがいたいです。そうそう、あと、16:00~18:00に行くと味玉1個が無料だそうです。この時間帯を狙うのもアリですね。
お店情報
中野大勝軒
住所:東京都中野区中野3-33-13
電話番号:03-3384-9234
営業時間:10:30~20:30
休日:水曜日
書いた人:下関マグロ
1958年生まれ。山口県出身。出版社、編集プロダクションを経てフリーライターへ。『東京アンダーグラウンドパーティー』(二見書房)、『歩考力』(ナショナル出版)、『まな板の上のマグロ』(幻冬舎)、に『ぶらナポ 究極のナポリタンを求めて』(駒草出版)など著書多数。