見事に真っ白。
EUの著作権法改正で記事の抜粋転載にもお金を払わなきゃだめになる流れを受け、Google(グーグル)がこんな風になるけどいいの!?とばかりに、Search Engine Landを通して白抜きのニュースサイトをリーク。空砲で威嚇射撃してますよ。
悩ましいEU著作権指令第11条と第13条
新EU著作権指令は欧州議会が昨年9月に可決したもので、最終的な文言は今週あたり発表になると言われています。揉めているのは、報道・音楽業界からの突き上げで生まれた第11条と第13条。いわゆるリンク税(正確には抜粋転載使用料です)とかコンテンツフィルターとか呼ばれてるやつですね。
第11条(抜粋使用料):Google、Bingなどのニュース収集サイトは記事の抜粋についても、免責不能な使用料を支払うものとする。
第13条(フィルター義務):Google、YouTube、Facebook、Twitterなどのプラットフォームは、利用者からアップロードされるコンテンツを監視し、著作権違反摘発に努めなければならず、怠った場合は法的責任を負う。
アクセス激減で大新聞がGoogleにひれ伏したドイツの場合
記事抜粋(スニペット)については、昔から各国でバトルが繰り広げられていますが、大体は次のような流れでうやむやのままに終わっています。
1)新聞協会や新聞社が「抜粋にも使用料払え」とGoogleを訴える
2)Googleが「だったら載せない」と表示をやめる
3)トラフィック激減で新聞社が悲鳴
4)Googleと手打ち
たとえばドイツでは2014年にこれが起こりました。このときは国内最大のニュースコングロマリット「アクセル・シュプリンガー」が傘下を代表するメディア(welt.de、computerbild.de、sportbild.de、autobild.de)の素材の使用を禁じたところ、検索流入が40%、Googleニュースからの流入が80%減り、試運転は2週間ともたずに白旗を挙げた、という経緯があります(Reutersより)。
違法にしたらGoogleニュースが閉鎖されたスペインの場合
一方、抜粋が禁じられたスペインでは、Googleが「Googleニュース」そのものを2014年12月に閉鎖してしまいました。今もこんな警告が表示されるだけみたい…。
This is how Google News looks like from Spain. Spain has had a news link tax law in place for a few years. from r/europe
こうなればなったで、知名度の高い大手メディアはともかく…
・中小ニュースサイトは流入が回るチャンスがほぼ消える
・読者も記事を探す時間と手間が増える
…という影響もあることが、2015年の調査(Googleがスペインのニュースサイトを閉鎖したときの損害試算報告書。中小新聞社発行人協会がまとめたという点が興味深い)ではわかっています。
主張は平行線
「著作権侵害のユーザー生成型コンテンツにただ乗りしてアクセス稼いでボロ儲けしている」という著作権者側の主張は事実その通りなので、「表現の自由」を盾にその主張の正当性を無きものにしたり、真っ白なスニペット見せて脅すのはなんだか大人げないような気もしますけどね…ま、「コンテンツの数が膨大になり過ぎて取捨選別する余裕はとてもじゃないけどない」というサイト側の主張も事実その通りだと思うので、実際真っ白になったり、下手するとサイトそのものが消えちまったり、いろいろ思わぬ方向に波紋が広がって最後は、いよっ、Google、あんたが大将!ってなるんでしょう…。
EU全体が束になった法改正。数の利で交渉が有利に進むことをパブリッシャーやクリエイターは期待しています。本当に思惑通りになるのか、怖いもの見たさでウォッチングしてまいりましょ~。
Sources: Search Engine Land, Reuters, 新聞紙学的