両面バッキバキの焼きそばを求めて行列が!創業30年の専門店「あぺたいと」はもはやひとつのジャンルだ【東京・板橋】

焼きそば専門店で焼きそばを食べたことはありますか? 大分県日田市の「想夫恋」という専門店で修業をし、東京でさらに進化した両面焼きそばを提供する「あぺたいと」。高島平本店で、あぺたいとの焼きそばの魅力を、社長の飯野雅司氏と焼きそば界のオーソリティ塩崎省吾氏に語っていただきました。

エリアその他東京都(東京)

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焼きそばに専門店があるのをご存じだろうか? 昨今、第四次焼きそばブームと言われ、食材などにこだわりをもった一部のお店で行列も出来るようになった。しかしまだ、多くの人は焼きそばというと、縁日の屋台や観光地の売店で数百円で食べられるオヤツ程度に思ってはいないだろうか。

 

実はご当地B級グルメがブームとなる以前から、大分県日田市には「想夫恋(そうふれん)」という焼きそば専門店が存在し、今や50店舗も展開する一大勢力となっている。

その「想夫恋」で修行し、東京でさらに進化した両面焼きそばを提供するお店が「あぺたいと」だ。

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創業は1988年。都内・板橋区の新高島平に本店を置き、そこから巣立った店が都内中心に数店舗広がりを見せている。

 

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これまで、『メシ通』において筆者はさまざまな町中華を取り上げてきたが、町中華の数あるメニューの1つとしての焼きそばとは、一味も二味も違うのがこの「あぺたいと」である。混む日は行列ができるほど名店として知られるこちらのお店、看板商品はなんといっても自家製麺をバキッと焦げ目がつくまで両面焼いた専門店ならではの焼きそば。

今回はその真髄を多くの方に知ってもらいたく、その焼きそばメニューはもちろん、社長の飯野雅司氏にも直撃した。さらに、途中からは焼きそば界のオーソリティ、塩崎省吾氏に参加いただき、その魅力を大いに語っていただいた。すでに焼きそばのとりこになっているフリークはもちろん、屋台の焼きそばしか思い浮かばないような人にもぜひ読んで欲しい。

 

バキバキ麺&コクのあるソース

まず、なにはなくともこちらのお店の焼きそばから話を始めよう。飯野社長にお願いすると、自ら両面焼きそばを作る工程を披露してくれた。

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▲豚肉を焼いている間に、自家製の麺をゆでる

 

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▲豚肉の上にゆで上がった麺を乗せ、ドーナツ状に豚肉の周りに円を描くよう焼く

 

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▲しばらくすると、裏面が焦げてバキッとした麺になってくる

 

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▲裏面が焼けたところで、一気にひっくり返す! 社長の技の見せどころだ

 

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▲キレイにキツネ色に焦げ目のついた面があらわになる

 

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▲次にいったん麺を端に寄せ、モヤシやネギといった野菜を炒め始める

 

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▲炒めた野菜の上に麺を乗せ、そこに塩コショウで味を調える

 

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▲最後に味の決め手となるオリジナルソースを回しがけ

 

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▲両面がしっかり炒められたところで、豪快に麺と具を混ぜる! 混ぜる!!

 

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▲そして出来上がった焼きそばを、小や中といったサイズに分け、完成

 

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▲皿に盛られたところに生玉子を落とせば、焼きそば(中)880円+生玉子乗せ50円の出来上がり

 

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▲いただいてみると、両面焼かれたバキバキの食感の麺に、あっさりとした口当たりながらコクのあるソースと絡んで、独特のうま味が口中に広がる。もはや1ジャンルといってもいいほど個性的な味わいである

 

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▲さらに玉子の黄身を崩して混ぜて食べると、さらにコクとマイルドさが増す。社長が選りすぐった素材だからこそ生み出された味だ。30年かけて培われた専門店ならではの傑作といってもいい

 

大分「想夫恋」で衝撃を受ける

ここで飯野社長に自身の焼きそばのルーツをうかがってみた。

 

── 飯野社長は東京都足立のご出身とうかがっていますが、子どもの頃に足立区で焼きそばを食べて育ったとか、幼少体験というものが元になっているのでしょうか?

 

f:id:Meshi2_IB:20180312121113p:plain飯野社長:そういうのはないね。オレは八百屋の息子として生まれて、野菜の配達先の飲食店だったりを、小さい頃から出入りしてて見てたんだよね。本当は八百屋を継ぐつもりだったんだけど、家業っていうのは大変なところが見えちゃってるんで、嫌だなぁみたいな。

 

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▲自慢の両面焼きそばを手にすすめる飯野社長

 

── いやが応でも大変さが見えてきちゃう部分ありますからね。

 

f:id:Meshi2_IB:20180312121113p:plain飯野社長:だから興味ある飲食店に高校終わった頃に入ろうと思ってたんだけど、たまたま卒業前に九州に行ってたことがあって、そこで九州とんこつの白い白湯(ぱいたん)スープに出合ったわけ。それで東京に帰って来ると、こっちは醤油ラーメンがほとんどなわけでしょ。これはとんこつラーメンを東京でやる可能性あるぞと思って、20歳くらいの時に九州ラーメンのお店に修行に入った。

── その九州ラーメンの修行先というのは、「想夫恋」のある大分県だったんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20180312121113p:plain飯野社長:大分の玖珠(くす)ってところの義龍軒っていって、代替わりして名前を変えちゃったけど、今でも残ってる。その隣町が日田市でね、たまたまそこが「想夫恋」の本店だったの。友だちが、焼きそばを食いに行くっていうんでついていったら、カウンター越しに焼く工程が見えるわけだよね。この両面焼きの焼き方、随分変わった感じだなぁみたいに思いながら食べたら驚いたね。こんな歯応えのある食感になって、おいしくなるんだなぁと。で、ラーメン修行から焼きそば修行に切り替えたの。

 

博多ラーメンの硬さがヒントに

ところで、このお店の代名詞でもあるバキバキの食感はいかにして生まれるのだろうか。どうやら麺にも秘密がありそうだ。

 

── こちらでお使いの麺は加水率(麺の生地を作る時に入れる水分の量のこと。多ければモチっとした麺に、少ないとボソッと粉っぽい食感になるが、その分だけ粉そのものの風味が楽しめる)が低くて、最初の食感こそバキバキですが、食べるとムチッとしています。焼き方プラス麺自体の硬さというWの効果でボキッとしていますよね。

 

f:id:Meshi2_IB:20180312121113p:plain飯野社長:「想夫恋」が俺にとってインパクトあったのは、博多ラーメンのボキボキした硬麺みたいな食感の部分だから。

 

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▲厨房にセットされる、博多ラーメンをほうふつとさせるボキボキの生麺

 

── 自分(筆者)は元々九州ラーメンの麺が好きなせいか、一瞬でこちらのお店の味にハマりましたが、東京で受け入れられるという感覚はありましたか?

 

f:id:Meshi2_IB:20180312121113p:plain飯野社長:「想夫恋」の味を出せれば売れるみたいな、どこか簡単に考えていたってのがあった。でもまぁなかなか難しい道のりだったね。だってオープンしたての頃はラーメンもやってたもの。

 

── 二本立てでのスタートだったわけですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20180312121113p:plain飯野社長:当時はラーメンも九州の白いスープだったし、まだ東京の人にとってなじみがなかった時代で、何でラーメン白いんだ? 両面焼きそばってなんだ? ってよく言われてたね(笑)。

 

── そういえば、お店で「なんでんかんでん」のラーメンを出されていますよね。当連載で、「なんでんかんでん」の立ち上げ時からいらっしゃった料理人のお店を取り上げているんですよ。

 

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f:id:Meshi2_IB:20180312121113p:plain飯野社長:「なんでんかんでん」の経営者だった川原さんとは知人を介して知り合ったんだけど、こっちも九州をルーツに持つ焼きそばで、加水の低い麺だっていうのもあるし、向こうも今実店舗は閉めちゃってる状態なんで、コラボという形で、やってもいいんじゃないのって話になったってわけ。

 

── 他に「なんでんかんでん」のラーメンを出している店舗はあるんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20180312121113p:plain飯野社長:ないんじゃない。いや、ウチをキッカケに出店という計画はあるようだけど、なかなかこぎ着くところまではいけてないみたい。

 

幻の「なんでんかんでん」の味が!

話にも出たように、現在「あぺたいと」では、高島平の本店限定で「なんでんかんでん」のラーメンが食べられるようになっている。

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▲高島平店限定 なんでんかんでんあぺたいとラーメン(780円)

 

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▲麺は博多麺らしく極細

 

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▲スープは白濁で、粘度があるものになっている

 

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▲一時期店頭に出ていた顔ハメ看板

 

話題は「現代焼きそば論」に……

社長の話をうかがいながら両面焼きそばを堪能していると、そこに塩崎省吾さん登場。焼きそば研究においては第一人者的な存在だ。

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【塩崎省吾】焼きそばに特化したブログ「焼きそば名店探訪録」が話題となり、焼きそば専門家として、WEBメディアへの執筆の他、ラジオやテレビに出演し、マルチに活躍。日々焼きそばの普及に努めている。

yakitan.info

たちまち3人で焼きそば談義となった。アルコールが入りだすと口がなめらかになり、徐々に現代焼きそば論へと話が及んでいった。

 

── 九州ラーメンには、いわゆる博多長浜のバリカタと呼ばれる低加水のカタ麺文化がありますが、九州どこいっても硬いわけではないですよね。焼きそばも「想夫恋」のように、地域ごとに特色ある焼きそば専門店が根付いてるんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20180312133442p:plain塩崎:いいえ、「みかさ」熊本から東京の神保町に進出し、行列の出来る焼きそば専門店として話題となった)さんくらいで、専門店がどの地域にもあるほど盛んではないですね。面白いのは、「想夫恋」が熊本に進出してもなかなか根付かなかったんです。熊本の飲み屋さんで「『想夫恋』さんどうですか?」って聞いたら「あすこのは麺が硬すぎるばい」って(笑)。

 

f:id:Meshi2_IB:20180312121113p:plain飯野社長:「みかさ」は多加水の麺だよね?

 

f:id:Meshi2_IB:20180312133442p:plain塩崎:自家製平打ちの多加水麺ですね。

 

── 東京では専門店というより、中華料理店の他に、居酒屋さんのようなお酒を出すお店でいろんなメニューの一つというところが多い気がします。

 

f:id:Meshi2_IB:20180312121113p:plain飯野社長:ウチもね、居酒屋メニューを取りそろえているのは、売上の面や場所柄というのがあるんだけど、基本は専門店でやってる。「みかさ」が出てきたおかげで注目されて、ウチみたいな焼きそば専門店というのがあるというのも広がったかもしれない。

 

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▲「あぺたいと」店内はカウンター席が基本ながら、テーブル席もある

 

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▲さらに外には、かなりハードな様子のテラス席が。奥には屋根のある半屋台のようなテーブル席も

 

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▲外席にもメニューがあり、アルコールも充実。外で注文の際は呼び出しボタンを押す

 

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▲「あぺたいと」おつまみメニューは定番のオニオンスライスから、うなぎの肝焼きまでそろう

 

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▲シュウマイの皮素揚げ(250円)なるメニューが気になったので頼んだのがコチラ。本当に皮を揚げて塩ふっただけのもの。これがパリパリでメチャウマ!

 

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▲社長イチオシということで、築地直送の本マグロの刺し身盛り合わせ(1,140円)。赤みのうま味が存分に堪能できる一皿だ

 

知られざるソースの秘密

── ラーメンの歴史でいえば、関東ならあっさりした醤油ラーメンというのがまずあって、そこへ他地域から味噌や豚骨が進出することで盛り上がりを見せた部分ってあると思うんですよ。焼きそばにおいての、味噌や豚骨のようなニューフェイスになり得るものって出てくると思われますか?

 

f:id:Meshi2_IB:20180312121113p:plain飯野社長:塩はあるかと思う。一時やってみたこともあるけどね。

 

f:id:Meshi2_IB:20180312133442p:plain塩崎:「あぺたいと」さんの焼きそばって、塩ダレで食べてみたいってのありますよ(笑)。でもやっぱり、焼きそば=ソースって固定観念は根強いですね。

 

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▲社長の弁に、的確に呼応する塩崎氏

 

f:id:Meshi2_IB:20180312121113p:plain飯野社長:ただ、ソースの茶色い物体ってのは……。

 

f:id:Meshi2_IB:20180312133442p:plain塩崎:カラメル色素ですから。

 

── へぇ!! あれは元の色じゃないんですか。

 

f:id:Meshi2_IB:20180312121113p:plain飯野社長:赤にしようが緑にしようが、味は変わらないの。ウチなんかは出来上がった野菜のスープに、茶色いカラメル色素を入れて、ソースにしてる。ソースというとああいう色じゃん?

 

── 確かに茶色か黒というイメージしかないですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20180312121113p:plain飯野社長:そう、あくまでイメージなの。カラメル色素で色つけてウスターソースを作って、それ煮詰めると中濃になって、どんどん煮込むととんかつソースになっていくっていう。だからまず基本的なウスターソースのレシピがあって、そこにいろんな野菜、トマトを入れたりして独自のブレンドにしてたりするわけ。

 

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▲調理中、真剣にオリジナルのソースを混ぜ、しっかり計量する飯野社長

 

f:id:Meshi2_IB:20180312133442p:plain塩崎:昔からやってるお店は、ソースが変わると大変なんですよ。以前と味を合わせなきゃならないから。

 

f:id:Meshi2_IB:20180312121113p:plain飯野社長:コスト面も大変だよ。ソースを作ったり麺自家製にしたりって、ウチなんかコスト考えると、500円じゃ売れないとなってきてる、実際には。

 

f:id:Meshi2_IB:20180312133442p:plain塩崎:でしょうね。ただテレビで紹介されたりすると、コメンテーターとかが「焼きそばなんてそんな高いもんじゃ……」みたいなこというんですよ。

 

f:id:Meshi2_IB:20180312121113p:plain飯野社長:今じゃ、お祭りの屋台だって500円くらいはするのにね。

 

── イメージとして昔の屋台の300円のオヤツ感覚が頭に固着してしまっているんでしょうね。でも専門店となると500円だってとても成り立たないわけですね。

 

ご当地焼きそばブームはどう映る?

── ところで、お二人には昨今の焼きそばブームはどう映っているんでしょう。 たとえば各地でやっているB級グルメの大会は焼きそば業界にとってはデカいですよね。

 

f:id:Meshi2_IB:20180312121113p:plain飯野社長:静岡富士宮なんかはまずそういう大会で取り上げられて、あと群馬の太田と、秋田の横手を加えて、3大ご当地焼きそばとなってるね。それから震災があって、福島の浪江焼きそばが注目されて。

 

f:id:Meshi2_IB:20180312133442p:plain塩崎:あと、宮城の石巻ですね。ただ、それ以降は次々と新しいご当地焼きそばが現れて、なかなか全部は追いきれないんですよね。どうしても古くからの味を優先してしまいます。

 

── ブームに乗っかったみたいな、後付け的に名物を作って増えた側面を感じるんですよ。町おこしが基本にあるので、地方の状況考えると仕方ない部分あると思いますが、富士宮や横手がたまたま上手くいったからって、みんながそうなれるわけじゃないと。

 

f:id:Meshi2_IB:20180312133442p:plain塩崎:その土地に元からあった焼きそばが、残念ながらそういうご当地モノの犠牲になることもあります。ある地域のB級グルメで古くからやっていたお店は、ある日地元の商工会議所か役所の人が来て「あなたのお店のは、観光として売り出そうとしている定義から外れているので、こうしていただけませんか?」って言われたそうなんです。

 

── それぞれ事情もあるでしょうけど、本末転倒ですよね。

 

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▲全国の焼きそばを食べてきた塩崎さんならではのトークがさえ渡る!

 

もっと世界に知られるべき

── 決して一過性のブームではなく、「あぺたいと」のような焼きそば専門店が長年定着し、焼きそばというジャンルが盛り上がっていくためには何をしてどうなっていくのがいいと思います?

 

f:id:Meshi2_IB:20180312121113p:plain飯野社長:「想夫恋」にしか出せない味が何なのか、ちょっとわかった気がするの。30年間いろいろ試行錯誤して、どうしても足らないのは、麺の食感だったわけ。だけど去年、麺の配合をマイナーチェンジして、これなのかなぁというものが見つかった。

 

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▲焼き立てバッキバキの麺をひとかけらいただいた。この1本には30年の歳月が詰まっているのだ

 

── ある程度、完成形になってきたと。

 

f:id:Meshi2_IB:20180312121113p:plain飯野社長:最近ね、「想夫恋」で食べてきた人が言うんだよ。「想夫恋」でもうまいと思ったけど、オタクのも同じくらいうまいねぇ~って。そう思えるのは進歩してるからなんだよね。おいしいっていうことは、これまでと同じかそれ以上ってことだから。

 

── 2度食べてまたおいしいって思えるってそうそうないですよね。1度目の感動がハードルになりますから。

 

 f:id:Meshi2_IB:20180312133442p:plain塩崎:専門店の進歩や努力がなかったら、やっぱり昔のイメージのまんまですしね。

 

f:id:Meshi2_IB:20180312121113p:plain飯野社長:焼きそばって家庭でも作れるけど、ウチみたいな専門店は家庭では出せない味を出すっていうのがキモになってくる。ラーメンってさ、家庭じゃ出来ないじゃない。でも、焼きそばはできるんだよ。そこのハードルをどーすんだっていうね。結局、専門店はそこに食い込んでいくしかないわけ。そのためには、一回食ったら忘れられないインパクトのある焼きそばを作るしかない。

 

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▲家庭では出せない「あぺたいと」の焼きそばを、ウマイ! と連呼して頬張る塩崎さん

 

── 焼きそば専門の個人店が、ラーメン店のようにもっと出てきてほしいですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20180312121113p:plain飯野社長:2020年には東京五輪もあることだし、ラーメンがここまで世界の文化にまで発展したように、焼きそば専門店もどんどん出てきていいと思うよ。日本のおいしい大衆食文化を外国の方にも知ってもらう機会だと思うし、プロはプロで記憶に残る焼きそばを作るべきだね。

 

── 最後に、この記事をきっかけに「あぺたいと」の焼きそばを食べてみたいと思った読者にメッセージをお願いします。

 

f:id:Meshi2_IB:20180312133442p:plain塩崎:東京という土地で、焼きそばをメインにしたお店として30年のれんを守ってきたっていうのは他にないんですよね。焼きそば文化の火をずっと守り続けてきたっていうのは、ボク的にはすごく意義のあることなんですよ。焼きそば好きなら一度は来てほしいなぁと。

 

f:id:Meshi2_IB:20180312121113p:plain飯野社長:ある意味素人から始まった商売だけど、30年焼きそばだけで思いを込めてやってきてますからね。家庭の焼きそばも母親の味としておいしいけど、それとは違った専門店のプロの作るウチ独自の両面焼きそばを一度でいいから体感してほしいな。

 

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▲焼きそばの発展を心から願う二人による、友情パワーあふれる固い絆が感じられる一時だった

 

── 焼きそばの味の核心に迫る部分から専門店の未来まで、深くお話しいただき誠にありがとうございました。

 

現状、特に東京に関しては、焼きそばの専門店が出てきたものの、まだまだ多くの人に定着したとは言えない過渡期にあるようだ。

しかしその一方、さまざまな業態や地域で試行錯誤された焼きそばも登場し、進化を見せているものもある。変わり種からシンプルに突き詰めた本格派まで、今がいろいろな焼きそばを楽しむには絶好の時期なのかもしれない。

その中で東京の専門店としてトップを走り続ける「あぺたいと」、その本気をぜひ味わってほしい。

 

お店情報

あぺたいと 本店高島平店

住所:東京都板橋区高島平7-12-8
電話番号:03-3938-6302
営業時間:月曜日~金曜日11:00~15:00、17:30~ 24:00 、土曜日11:00〜24:00、日曜日・祝日11:00~22:00
定休日:12月31日〜1月3日

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書いた人:刈部山本

刈部山本

スペシャルティ珈琲&自家製ケーキ店を営む傍ら、ラーメン・酒場・町中華・喫茶で大衆食を貪りつつ、産業遺産・近代建築・郊外を彷徨い、路地裏系B級グルメのブログ デウスエクスマキな食卓 やミニコミ誌 背脂番付 セアブラキング、ザ・閉店 などにまとめる。メディアには、オークラ出版ムック『酒場人』コラム「ギャンブルイーターが行く!」執筆、『マツコの知らない世界』(TBS系列)「板橋チャーハンの世界」出演など。2018年5月には初の単著となる『東京「裏町メシ屋」探訪記』(光文社)を出版。

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