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「誰かの背中を追わない」という戦略。

のり塩やカラムーチョなど、スナックに関して私はもともと湖池屋至上主義者なんだけど、数年前からいち消費者にも明らかに分かる方向転換というか新しいコンセプトをはっきり打ち出してきたな…と思っていた。新ロゴやパッケージデザインもすごく良いし、何より商品(PRIDE POTATEなど)がハイレベルだなと。ほんと美味いもん。揚げ方のせいかお芋のせいか、ポテトチップなのに油っこくないしもたれない。

その理由が前々回の「カンブリア宮殿」で判明した。新社長就任で戦略が変わったのであった。しかも元キリンビバレッジの名マーケターでヒットメーカー。

「とは言え社長ひとりで変わるかなあ…」なんて斜に構えて観てたら、この社長さん、社員プレゼンを聞きながらすべてをメモっている。会議終了後もそこから自分が思いついたアイデアなどをがんがんメモ。全部ノートに手書き。この時点で勝手&安易ながら「この人すき…」となった。メモをとる人のことは信用できる。特に手書きで書く人はものをよく考える人に決まってる、という偏見(?)を持っている。

社長の前で若手社員が楽しそうに、時に走り過ぎたアイデア出してる光景もとてもよかった。鳴り物入りで入社したトップだけどいきなり俺流を押しつけることなく、現場の社員の話をよく聞いてる感じがした。

業界1位のカルビーの背中を必死に追う前体制から、カルビーを追わず、もともと持っていた独自の個性とこだわりを活かしたやり方への転換。カルビーが繰り出す多彩な「味替え(さまざまなフレーバーを展開する)」戦略に追いつこうとして「いかに斬新なフレーバーを出すか」に四苦八苦し、挙句の果てに「もも味」「みかん味」のポテトチップスを発売して酷評されたりしてた湖池屋。それをやめて「大人向けのお高め上質なもの」「じゃがいも本来の味が感じられるもの」に力を入れるのは、かなり勇気が要ったことと思う。

「すでにあるものからアイデアは生まれない」「すでにあるものを見て何かやろうとするとどうしても似てしまう」と佐藤社長は言う。

番組ラストにナビゲーターである村上龍氏のまとめがあった。

 値段でも新しさでもなく、魅力的かどうかを競う。
 魅力の構成要素はほぼ無限だ。
 その要素の組み合わせを限界まで考えることで、
 はじめてオリジナリティが生まれる。

これって、人に関しても言えるのではないかなと思った。
「あの人のようになりたい」「ああならないと好かれない、売れない」だけで進むと、もともともってる自分の良さみたいなものを抑制したり殺したりする方向にも行きかねない。自分の魅力とは何か。いくつかあるそれをいかに組み合わせて磨いていくか。そっちに頭を使った方が、多分ずっと楽しくて建設的だ。

どうしてああいう顔やスタイルに生まれなかったんだろう。
どうしてこういう才能や実力や環境が私にはないんだろう。
若い頃に(いや今だって時々)うじうじしていたそういう思いには、少し視線をずらしさえすればものすごい抜け道と希望の光があるんだよな。

もちろん「その要素の組み合わせを限界まで考える」工程はとても大変なんだけどさ。

サポート頂けたお気持ちは、あたらしいものを書いたり描いたりする時の糧と勇気にいたします。よろしくおねがいします。