コロナ影響 世界の物流担うコンテナ船運賃高騰 物価上昇も懸念

世界の物流を支えるコンテナ船の運賃高騰が続いています。新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、コンテナ不足が起きているためで、専門家は長期化した場合モノの価格の上昇につながるおそれもあると指摘しています。

世界の物流を支えるコンテナ船の運賃は去年の夏以降、上昇傾向が続いていて、香港の情報会社「フレイトス」によりますと、中国からアメリカ西海岸に向かう主要な航路では、今月中旬、40フィートのコンテナ1個当たり4260ドルまで値上がりしました。

去年の同じ時期と比べると2.7倍の水準で、この会社が情報をまとめ始めた2017年以降で最も高くなっています。

背景には新型コロナウイルスの感染拡大で、去年の春ごろには大幅に減っていた輸送量が、アメリカでの巣ごもり需要の増加などで、一転して急増したことがあります。

さらに、アメリカ西海岸などの港で作業員やドライバーが足りずに荷さばきに時間がかかり、世界的にコンテナ不足が起きていることも影響しているということです。

運賃の上昇はヨーロッパや東南アジアなど、ほかの地域の航路にも及んでいます。

世界の貿易への影響が懸念されていて、物流コストの上昇が長期化した場合、企業が価格転嫁することで、さまざまなモノの価格の上昇につながるおそれもあると専門家は指摘しています。

ロスの港は入港の順番待ち

アメリカの西海岸、ロサンゼルスの港では、異変が起きています。

ロサンゼルス港は日本や中国など、アジアとアメリカを結ぶ海の玄関口にあたり、隣接するロングビーチ港と合わせてコンテナの取り扱い量で、全米のおよそ4割を占める物流の一大拠点になっています。

今月下旬、港の沖合には入港の順番待ちをするコンテナ船がずらりと停泊し、その数はおよそ30隻に上っていました。

ロサンゼルス市港湾局の担当者は「ふだんは到着した船がスムーズに接岸できるように調整しているので順番待ちはない」としていて、港が極端に混雑していることを示しています。

混雑の背景には、いわゆる巣ごもり需要の増加で大量の製品が押し寄せていることに加え、作業員やドライバーの不足で荷物をさばききれなくなっていることがあります。

担当者によりますと、順番待ちが終わって船が入港できるまでに数日かかるということで、当面、こうした状態は続くと見られるとしています。

タイ米輸出業者にも影響

運賃の高騰とコンテナ不足によって、東南アジアの輸出業者に影響が出始めています。

タイの首都、バンコク近郊に本社があるタイ米の輸出業者では、オーストラリアやニュージーランド、それにアメリカなどへ年間およそ8万トンを輸出しています。

会社は港を通してコンテナを手配していますが、去年の秋ごろからコンテナを確保しにくくなり、計画どおりの輸出ができない状態が続いているということです。

これまでに当初の計画よりもコンテナおよそ200個分、日本円にしておよそ4億円分の、タイ米の輸出機会を逃しているということです。

さらに、コンテナを確保できても、運賃の高騰によって利益が押し下げられているということです。

タイ米の輸出業者のタンヤワンCEOは「コンテナは輸出に必要な量の3分の1しかない。こんな事態になるとはとても予測できなかった」と話しています。

物流コスト上昇で物価上昇のおそれも

世界の海運を調査している、日本海事センターの後藤洋政研究員は「中国をはじめアジアからの輸出が急速に回復して、北米やヨーロッパの港湾で空のコンテナが滞留したことや、港湾の混雑が起きたことでコンテナの回転率が下がり、コンテナ不足が発生している」と話しています。

そのうえで、日本を含めた今後の影響について「問題が解決するのは早くてもことし3月以降と予想していて、場合によっては長期化する可能性もある。企業の中にはコンテナ不足が要因で、生産や収益が減るところが出てくる可能性があるし、運賃の上昇で物流コストが上がり、それが製品に転嫁されると消費者が購入するさまざまなモノの値段が上がることも考えられる」と指摘しています。